2022年11月26日

月の満ち欠け

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監督:廣木隆一
原作:佐藤正午
脚本:橋本裕志
撮影:水口智之
出演:大泉洋(小山内堅)、有村架純(正木瑠璃)、目黒蓮〈Snow Man〉(三角哲彦)、伊藤沙莉(緑坂ゆい)、田中圭(正木竜之介)、柴咲コウ(小山内梢)、菊池日菜子(小山内瑠璃)

小山内堅は仕事も家庭も順調だった。学生の頃に出会って結ばれた最愛の妻・梢(こずえ)と一人娘の瑠璃(るり)を失うなど思ってもみなかった。事故で一度に二人を失い、深い悲しみに沈んでいるとき三角哲彦という若い男性が訪れて奇妙なことを告げる。事故の日、瑠璃が面識のない自分に会いに来ようとしていたこと、さらに瑠璃はかつて自分が愛した“瑠璃”という女性の生まれ変わりではないか、と。あまりのことに激高した小山内は三角を追い返すが、梢の親友のゆいからも連絡がある。

小山内の生きる現在、三角の語る過去は27年も前のことです。共通するのは“瑠璃も玻璃も磨けば光る”からとられた“瑠璃”という名前のみ。生まれ変わりがあるのかないのか決めつけず、ひとまずあると信じて物語を観てください。
TBSの金曜ドラマ「妻、小学生になる。」を思い出します。そちらでは亡くなった妻が他の人の体を一時期借りて現れ、どちらの家族もかき回されますが、ラストは納得して妻は消えていきます。こちらは以前の記憶を持っての生まれ変わりなので、今の生活との時間差があるうえ気持ちの持っていき場が難しいです。「それでも逢いたい」人があなたにはいますか?
有村架純さん演じる瑠璃と目黒蓮さんの哲彦の許されない恋、「もう一度逢いたい」という想いの強さ、切なさに胸がきゅーっとなります。原作は2017年に直木賞を受賞した佐藤正午氏の同名小説。原作では正木瑠璃の夫・竜之介のその後が詳しく書かれていました。佐藤氏原作の映画化作品はこれで6本目。2021年に『鳩の撃退法』が公開されています。
メガホンをとる廣木隆一監督も2003年の『ヴァイブレータ』が印象的で、ずっとコンスタントに作品を送り出されています。今月だけでも『あちらにいる鬼』『母性』と公開作が続きます。女子高生の初恋も大人の色恋も、美味しい作品にしあげてくれる廣木監督をこれからも追っかけ。(白)


2022年/日本/カラー/シネスコ/128分
配給:松竹
(C)2022「月の満ち欠け」製作委員会
https://movies.shochiku.co.jp/tsuki-michikake/
★2022年12月2日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 13:47| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年11月24日

人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界

2022年11月25日(金)より角川シネマ有楽町ほか全国公開 劇場情報

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©TBSテレビ

今年3月、ヒューマントラストシネマ渋谷にて開催された「TBSドキュメンタリー映画祭2022」で、クローズド作品として上映され注目を浴びた『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界』が、絶賛の声を受け、さらに9分の新規カットを追加した《完全版》となって、11月25日(金)より劇場公開されます。

出演:山野井泰史、山野井妙子、他
監督:武石浩明
語り:岡田准一 
撮影:沓澤安明 小嶌基史 土肥治朗  編集:金野雅也  
MA:深澤慎也  音楽:津崎栄作
企画・エグゼクティブプロデューサー:大久保竜  
チーフプロデューサー:松原由昌 プロデューサー:津村有紀
TBS DOCS事務局:富岡裕一  
協力プロデューサー:石山成人 塩沢葉子

彼は何故、生きて還り続けられたのか?

「誰も成し遂げていないクライミングを成功させて、生きて還る」世界の巨壁に単独で挑み続けてきたクライマー・山野井泰史。2021年には、登山界最高の栄誉であるピオレドール生涯功労賞を受賞した。しかし、山野井の挑戦は終わらない。伊豆半島にある未踏の岩壁に新たなルートを引き、挑戦。そして再びヒマラヤにも…。
“垂直の世界”に魅せられた男の激しい生き様とは?
貴重な未公開ソロ登攀映像とともに振り返り、山野井のパートナーである、やはり日本有数の登山家である、妻・妙子(旧姓長尾)との日々の生活と登攀訓練の日々が描かれる。

山野井泰史:1965年生まれ。中学3年の時に日本登攀クラブに入り、高校卒業後'84〜'87年にかけてヨセミテに通い、その後、高難度のフリークライミングから海外のビッグ・ウォールまで、常に先鋭的な登攀を続け、その卓越したソロクライミング技術は、国内外から世界屈指のクライマーと評価を受けている。

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©TBSテレビ


世界の巨壁に「単独・無酸素・未踏ルート」にこだわり、挑み続けた登山家・山野井泰史。伝説のクライマーの足跡を貴重な未公開ソロ登攀映像とともに振り返る。1996年、ヒマラヤ・マカルー西壁。山野井泰史は、かつて世界最難関の巨壁に、たった一人で挑んだ。敗退し、その後もずっと、この「マカルー西壁」を登攀することを目標に登攀を続けていた。この「マカルー西壁」は、誰も直登できてはいない。永遠の課題かもしれない。TBS取材の始まりは、この1996年、ヒマラヤ最後の課題「マカルー西壁」に単独で挑む山野井泰史の《究極の挑戦》への密着取材から始まった。

その後、山野井は、2002年チベット・ギャチュンカン登頂後に凍傷で手足の指10本を失い、リハビリののち登攀を再開する。2008年には奥多摩山中で熊に襲われ重傷を負う。それでもなお“垂直の世界”に魅せられ、挑戦し続ける登山家の姿を追う。過酷な挑戦を続ける山野井泰史の日々。山野井が生きて還り続けられたのは、事前の準備のち密さと日々の訓練ともいえる。家の中にもたくさんのボルダリングの手がかりが設置されている。極限まで自らを追い込み、自らに妥協しない姿。同じく著名な登山家である妻の妙子との二人三脚が描かれる。
ナレーションは、”語り手”としてドキュメンタリー映画に初めて参加する岡田准一。岡田自身山好きで、クライマーは憧れの存在と語る。
監督は自らもヒマラヤ登山経験のあるジャーナリスト・武石浩明。公私ともに山野井と交流しながら追い続けた26年、長期に渡る取材を通して「極限の人」の実像に迫る

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©TBSテレビ


山野井泰史さんの絶え間ない挑戦は、妻、妙子さんとの二人三脚あってのものというのがよくわかりました。たとえ単独登攀だとしても、その前後の家族の協力と理解がなければできないわけで、妙子さんとは最強コンビですね。毎日が登攀の為の訓練。家の中のボルダリングの訓練場所だけでなく、奥多摩に暮らしていた時は回りの奥多摩の山々が毎日の訓練の場だったでしょう。奥多摩に暮らしているものだとばかり思っていたのですが、いつのまにか伊豆に引っ越していたのですね。伊豆高原の城ケ崎海岸の岩場。叔母の家が伊豆高原にあり、何度かこの場所を訪れたことがあるけど、ロッククライマーたちの訓練場所として有名だとは知りませんでした。伊豆に引っ越したら今度は、これら伊豆の海岸沿いの岩壁が訓練の場になっているのでしょう。また富士山へ自転車で行ける距離にあるのも、大きな利点なのだなと思いました。富士山での高所訓練は、海外の高い山へ登るときの訓練場所として最大のメリットがあります。
私も中国四川省の四姑娘(スークーニャン)山(4000m級)にトレッキングに行こうと計画した時、約2か月前の1989年6月4日に富士山に高所訓練のために初めて登りました。スキーを担いでの登頂。そして山頂からスキーで滑り降りたのですが、今でも山頂の縁から滑りだした時の急斜面の恐怖感は忘れられません。でも50mも滑り降りたら斜度が緩くなり、それからの滑降は快適でした。富士山山頂に登り、山頂から6合目くらいまでスキー滑降ができたという素晴らしい経験ができました。そして、山から下り、夕方電車に乗った時に、天安門事件が起こっていたのを知りました。私たちが富士山に登っていた時に天安門事件は起こっていたのです。せっかく高所訓練はしたけど、行っている場合ではないと、結局、中国へは行くのはあきらめました。富士山に登ったのは、その1回だけ。やはり他の山と違って、山頂近くは酸素が薄く、呼吸がけっこう苦しかったのを覚えています。
山野井さんは、8000m級の山へ一人で登るというスタイルですが、酸素マスク無しで登っているとのこと。3776mの富士山でさえ、呼吸が苦しくなったのに、8000m級の山へ酸素マスク無しで登っているのかと驚きです。
これまでたくさんの日本人クライマーが山へ挑戦し亡くなっていますが、山野井泰史さんは、その中で生き延びて来ました。挑戦する心と安全のことを考え抑制心のバランスを持っているからこそのことだと思いました。山では引き返す勇気も必要です(暁)。

公式HP https://jinsei-climber.jp/
製作:TBSテレビ 配給:KADOKAWA 宣伝:KICCORIT
2022年/日本/109分/5.1ch/16:9  
posted by akemi at 02:06| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年11月20日

Vin Japonais(ヴァン・ジャポネ)〜the story of NIHON WINE

2022 年11月25日(金)〜12月1日(木)まで
エビスガーデンシネマにて毎日10:30上映

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(C)2022 CruX co.ltd.


日本ワインを世界へ発信する

ナビゲーター
Frederic Cayuera (フレデリック・カユエラ)
Florent Dabadie(フローラン・ダバディ)
出演:日本各地のワイナリーオーナー、ワイン醸造家、葡萄育成者、ソムリエ、レストランの方など
監督、プロデューサー:NORIZO
スペシャルアドバイザー:西浦昌文
音楽制作:ryu-ya

みなさんは日本ワインを飲んだことがありますか?
日本国内のワイナリーを訪問したことがありますか?
日本ワインを主題とした初のドキュメンタリー映画


世界的なワインスクールのアカデミー・デュ・ヴァンで講師を務める在日3年のフランス人のワイン・プロフェッショナル、フレデリック・カユエラ氏がメインナビゲーターとなり、日本ワインの歴史、現状、未来を紐解いていきます。
また、スペシャルナビゲーターとしてフランス人ジャーナリストのフローラン・ダバディ氏が参加し、グローバルな視点から日本ワインの魅力を語っています。在日22年。1998年から2002年まで、サッカー・フィリップ・トルシエ監督のパーソナル・アシスタント(監督の意思を選手たちに伝えていた)として知られる方です。
プロデューサー兼監督は、この映画の製作会社でもある日本ワイン専門商社の株式会社CruX(クリュックス)の運営する日本ワインのWebメディア「日本ワイン.jp」(https://nihonwine.jp/)の編集長NORIZO(ノリゾー)氏。
株式会社CruXは、日本ワインのメディア・教育・流通事業・Web メディア「日本ワイン.jp」の運営、「日本ワイン検定 日本ワインマスター・日本ワインアドバイザー呼称資格認定試験」の運営、プロ向け日本ワイン卸売サイト「CRAFT WINE SHOP」の運営など、日本ワインの成長・発展に資する事業と、地域創生に貢献する事業を展開している会社だそうです。

日本国内のワイナリーは近年増えていて、その数は約400ヵ所に迫る勢い。また、日本ワインのクオリティはどんどん向上して、世界のワインコンテストでも数々の金賞や銀賞などを受賞するまでになりました。しかし、大躍進する日本ワインが増える一方で、日本国内での認知度はまだまだ低く、海外においては「よく知らないし、よく分からない。そもそも日本でワインを造っているの?」という状態。
「この状況をなんとかしたい、変えたい!」という想いから、この素晴らしい "日本ワイン" と "日本の魂(ソウル)" を、世界に発信するプロジェクト"Vin Japonais(ヴァン・ジャポネ)" 映画制作プロジェクトが立ち上がり、日本ワインの魅力を世界に発信することを目的として制作されました。

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(C)2022 CruX co.ltd.


日本ワインの代表的な生産地である山梨、長野、北海道のワイナリーや葡萄生産者を訪ね、ワイン造りや葡萄栽培への想い、日本の自然や雨が多い風土に焦点を当て、日本独自のワイン用葡萄の開発なども語りつつ、欧米の品種を日本の風土で育てる工夫なども多く紹介され、世界に認められるワインを造る努力の数々が紹介される。
また、“日本ワインの父”とよばれる川上善兵衛ゆかりの新潟のワイナリー「岩の原葡萄園」を訪ね、1890年創業の話が語られる。地主の川上善兵衛は地元の農民が食べていける作物として葡萄栽培にたどりつき、ワイン造りを始めたという。勝海舟の薦めやサントリーの鳥井信治郎との出会いと山梨・サントリー登美の丘ワイナリーとの関係や、塩尻桔梗ケ原・五一ワイン創業者林五一との出会いと、葡萄苗の話など、興味深い話が続き、日本ワインの現在までの歩みと未来を描く。
またソムリエやレストランも出てきて、ワインと食べ物との関係、和食とワインのマリアージュなども語られる。

日本でのワイン醸造の歴史が語られ、シャトー・メルシャン勝沼にある「ワイン資料館」で見たことがある、日本人で初めてフランスにワイン造りを学びに行った高野正誠と土屋龍憲の写真が出てきた。
また山梨県勝沼周辺のワイナリーをたくさん訪ね、1000年近い歴史を持つ「甲州」というこの地域の葡萄品種を大事に育て、ワインを造っているワイナリーの方たちや葡萄生産者の「甲州」への想い、こだわりについて多く語っていたのが印象的だった。
冒頭、11月4日から公開されている『シグナチャー〜日本を世界の銘醸地に〜』(シャトー・メルシャンの醸造家・安蔵光弘さんの半生を描いている)の、安蔵光弘さん本人がナビゲーターの二人と語るシーンが出て来て、英語で会話していたので、思わずニヤリとしてしまった。日本のワイン業界を牽引したメルシャン顧問の浅井昭吾(麻井宇介)さんが『シグナチャー~』の中で、安蔵さんに「語学の勉強をしろよ」と言うシーンがあったから。このドキュメンタリーは、海外に日本ワインを紹介するというコンセプトなのでそうなのだろうけど、その後も英語やフランス語でナビゲーターの二人と会話をする人が多く、勝沼でワインに関わる人たちは、結構海外でワイン造りを勉強した人がいるのかもしれない。外国語を話せる人が多いと思った。
ヨーロッパの葡萄生産地と比べて雨の多い日本の気候。これを克服する術として、水はけがいい斜面に植えたり、葡萄に袋をかけたり傘を作るとか、それぞれの生産地で工夫して葡萄を栽培している様が紹介される。また、北海道や桔梗ケ原などの寒冷地では、温暖化の影響で葡萄を育てやすくなったという。葡萄の幹を斜めに植え、雪のシーズンは幹が折れないように地面に寝かす工夫をしたり、各地のいろいろな苦労やアイデアが出てきた。葡萄のいろいろな品種を試したり、適切な栽培方法をみつけることがいいワインを造るための肝であることが繰り返し語られていたのが印象に残った。
品種のことはよくわからないけど、浅井昭吾さんが桔梗ケ原で欧州品種メルローという葡萄品種を植えるよう働きかけた時の話も出てきて、それが後の「桔梗ヶ原メルロー」につながった話にはなるほどと思った。『シグナチャー~』の中でも浅井さんが農家の人の反対意見が多い中、このメルロー種の葡萄を広げた話が出てきたけど、そういう冒険があって、新たなワインが生まれるということなのだと思った。
また「日本のワインぶどうの父」と呼ばれる川上善兵衛が、親交のあった勝海舟の勧めで、葡萄栽培とワイン醸造を決めた話はとても興味深かった。そして、葡萄の品種改良に取り組み、虫害や多湿に強い日本初のワイン用品種であるマスカット・ベーリーA を開発したという話は、これも今につながるワイン物語だ。
ワインツーリズムというのも語っていたけど、そういうのが増えたらぜひ参加したいけど、私はいつもウィナリーに行く時は個人で行くことが多いので困っている。ワイナリーはだいたいバスの便などがない郊外や山の上にあるので、車で行かざるを得ない。ワインを飲みたいのに車で行くしかない状態で、近くに泊まるところか、そこで宿泊するとか、運転する人も飲めることができるような方法がないものかと思う。最近はシーズンになると、ワイナリー巡りのバスの便を仕立てるところも出てきたけど、道の駅とか経由のバスの便とか作ってくれたらとか、ワイナリーの駐車場で酔いがさめるまで休むことができるとか、そういうのがあったら、もっといろいろな場所へ行けるのにと思っている。
ここに出てきたワイナリーでは、シャトー・メルシャン勝沼、五一ワイン、ヴィラデストワイナリーなどに行ったことがある。ヴィラデストワイナリーのレストランでは、まさにこの撮影が行われたテーブルで食事をした(笑)。ここから日が暮れる時の周りの景色が素晴らしかった。
今回、30ヵ所以上のワイナリーが出てきたけど、いつか機会があったら行ってみたいと思ったのは、「サントリー登美の丘ワイナリー」と、ベトナムに5年いたことがある方がやっているという小諸の「ジオヒルズワイナリー(風吹く丘のワイナリー)」。ワイナリーでベトナム料理が食べられるなんて面白そう。今年5月にこのワイナリーのそばを通ったので、その時に知っていたら行ったのにと残念。たくさんのワイナリーや葡萄生育者が出てきたけど、女性の醸造家やワイナリー経営者は二人くらいだった気がする。女性の従事者は少ないのでしょうけど、もう少し登場させてほしかったです(暁)。

【本作品のホームページ】 https://vinjaponais.jp/
2022年/日本
製作会社(制作:CruX)

*五一ワイン・エコノミーの話とウルグアイのワイナリーに行った時の話が下記スタッフ日記にあります。
一升瓶に入ったワイン「五一ワイン エコノミー」を買ってみました(暁)
http://cinemajournal.seesaa.net/article/472972369.html
posted by akemi at 20:40| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

はだかのゆめ

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監督・脚本・編集:甫木元空(ほきもとそら)
プロデューサー:仙頭武則 飯塚香織
撮影:米倉伸
音響:菊池信之
出演:青木柚、唯野未歩子、前野健太、甫木元尊英

余命宣告を受けた母は、ふるさと四万十川のほとりの実家で暮らす選択をした。祖父が一人住んでいる家にやってきた二人。何事にものろまな息子のノロは、母に近づく死を受け入れられず一人徘徊するばかり。祖父は淡々と畑を耕し、闘病中の母はできる家事をゆっくりとこなし、散歩をし、日記を書く。

甫木元監督の体験を半ば投影した映像詩のような静かで美しい映画。四万十川の風景の中を歩き回り、寝転び、たたずむノロが本当はもうこの世にいない人にも見えてしまいます。少ないセリフは選び抜かれた歌詞のようで、甫木元監督が映像作家であり、バンド「Bialystocks」のヴォーカリストでもあると知って納得。
2016 年『14 の夜』(足立紳監督)で映画デビューした青木柚(あおきゆず)さんが、母を遠くから見守るノロ、息子を思う母を唯野未歩子さん、何事もあるがまま受け入れる祖父を監督の実の祖父である甫木元尊英さん。シンガーソングライターの前野健太さんが、あちこちに出没してあの世とこの世を結ぶ役割をはたしているようにも見えます。
命は限りあるとわかってはいても、自分の大事な人だけはどこへも行かない気がしてしまうものです。たくさんの人を見送る年頃になると、その境界はとてもあいまいでちょっと越えて行っただけ、近くで見守ってくれているかもしれないと思うようになりました。(白)


2022年/日本/カラー/アメリカンビスタ/59分
配給:boid/VOICE OF GHOST
©PONY CANYON
https://hadakanoyume.com/
★2022年11月25日(金)全国順次公開
posted by shiraishi at 19:38| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年11月13日

愛国の告白ー沈黙を破る Part2ー

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監督/撮影/編集/製作:⼟井敏邦
編集協⼒:尾尻弘⼀、渡辺真帆、⼩林桐美
整⾳:藤⼝諒太
デザイン:野⽥雅也

パレスチナ人住民とユダヤ人入植者が隣接して暮らすヘブロン市で兵役に就いた元イスラエル軍兵士、ユダ・シャウールらによって2004年に創設されたグループ、「沈黙を破る」。
⼟井敏邦監督は、2005年から3年間にわたって彼らを取材。2009年に劇場公開された『沈黙を破る』で、“占領軍”の兵士としてパレスチナの人々に権力を行使した経験を持つ若いイスラエル兵たちの苦悩する姿と証言、そして占領地のすさまじい実態を描いている。
あれから、13年、占領と武力攻撃はさらに強化され、一層右傾化しているイスラエル。そんな状況の中で活動を続ける「沈黙を破る」には、政府や右派勢力からの攻撃も急速に強まっている。
本作では、それでも屈せず活動を続ける「沈黙を破る」の姿を追っている。
「沈黙を破る」の活動を続ける元将兵たちが、「裏切り者」「敵のスパイ」という非難・攻撃のなかで、どのように自分自身を支え、信念を貫いているのか・・・ 
「自国の加害と真摯に向き合い、それを告発し、是正しようとする」こと、自国と国民がモラルを崩壊させてしまうことへの危機感から声を上げ行動を起こす行為は「祖国への裏切り」なのか。むしろそれこそ真の“愛国”ではないのかと、監督は問いかける・・・

1985年以来、34年間一貫してパレスチナ・イスラエル現地を取材、これまでガザ地区、ヨルダン川西岸、東エルサレムなどパレスチナ人地区とイスラエルについての多数のドキュメンタリー映像や著書を発表してきた映像ジャーナリストの土井敏邦監督が、キャリアの集大成として制作したドキュメンタリー映画。

国家権力を握った者の、人や土地に対する支配欲によって、自分の意志ではなく加害者にならざるをえない立場に置かれるという非情。古今東西繰り返されてきた歴史で、それが今も世界の各地で続いています。誰しも戦争になど加担したくないはず。国家という枠組みの中で、逆らえない悲しさ。国民が平穏に暮らせることこそ考えるべきなのに、攻撃的な国家権力者を持ってしまった不幸・・・ それは、いつまた私たちにも降りかかってくるかもしれません。 そんなことを思い起こさせられました。
それにしても、ネタニヤフ元首相の復権で、ますますひどくなりそうなイスラエルのパレスチナへの仕打ち。パレスチナの人たちが気の毒なのはもちろんですが、加害者という被害者を増やしてしまうことが悲しい。(咲)



公開記念アフタートークイベント
新宿 K's Cinema 2022年11月19日(土)〜12月9日(金) 連日開催
*すべて上映後に開催
11月19日(土)初日 土井敏邦監督+アブネル・グバルヤフ氏(「沈黙を破る」代表)によるスペシャルビデオメッセージ
20日(日)ジャン・ユンカーマンさん(映画監督)+土井敏邦監督
21日(月)川上泰徳さん(中東ジャーナリスト)+土井敏邦監督
22日(火)錦田愛子さん(慶応大学准教授/中東現代政治)+土井敏邦監督
23日(水・祝)根岸季衣さん(女優)+土井敏邦監督
24日(木)伊勢真一さん(映画監督)+土井敏邦監督
25日(金)永田浩三さん(武蔵大学教授/ジャーナリスト)+土井敏邦監督
26日(土)伊勢真一さん(映画監督)+土井敏邦監督
27日(日)川上泰徳さん(中東ジャーナリスト)
28日(月)土井敏邦監督
29日(火)土井敏邦監督
30日(水)土井敏邦監督

12月1日(木)ダニー・ネフタイさん(在日イスラエル人)+土井敏邦監督
2日(金)新田義貴さん(映像ジャーナリスト)+土井敏邦監督
3日(土)金平茂紀さん(ジャーナリスト)+土井敏邦監督
4日(日)渡辺えりさん(女優・劇作家)+土井敏邦監督
5日(月)ダニー・ネフタイさん(在日イスラエル人)+土井敏邦監督
6日(火)ハディ・ハニーさん(在日パレスチナ人)+土井敏邦監督
7日(水)山本薫さん(慶応大学専任講師)+土井敏邦監督
8日(木)鈴木啓之さん(東京大学特任准教授/パレスチナ現代史)+土井敏邦監督
9日(金)最終日 土井敏邦監督
(登壇者は、こちらのサイトでご確認ください)

2022年/⽇本/170分(第⼀部100分・第⼆部70分)
配給:きろくびと
公式サイト http://doi-toshikuni.net/j/aikoku
★2022年11月19日(土)より新宿K's cinemaにてロードショー 全国順次公開


posted by sakiko at 17:35| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする