2025年01月21日

港に灯がともる(みなとにひがともる) 英題:The Harbor Lights

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©Minato Studio 2025
 
監督・脚本:安達もじり
脚本:川島天見
音楽:世武裕子
出演:富田望生、伊藤万理華、青木柚、山之内すず、中川わさ美、MC NAM、田村健太郎、土村芳、渡辺真起子、山中崇、麻生祐未、甲本雅裕

1995年の震災で多くの家屋が焼失し、一面焼け野原となった神戸・長田。かつてそこに暮らしていた在日コリアン家族の下に生まれた金子灯(富田望生)。在日の自覚は薄く、被災の記憶もない灯は、父(甲本雅裕)や母(麻生祐未)からこぼれる家族の歴史や震災当時の話が遠いものに感じられ、どこか孤独と苛立ちを募らせている。一方、父は家族との衝突が絶えず、家にはいつも冷たい空気が流れていた。ある日、親戚の集まりで起きた口論によって、気持ちが昂り「全部しんどい」と吐き出す灯。そして、姉・美悠(伊藤万理華)が持ち出した日本への帰化をめぐり、家族はさらに傾いていく──。なぜこの家族のもとに生まれてきたのか。家族とわたし、国籍とわたし。わたしはいったいどうしたいのだろう──。

始まりは、2015年1月。震災の年に生まれた人たちの成人式。灯(あかり)は、震災から20年といわれても実感がありません。お母さんからは、震災で家がなくなり避難生活の中で大変な思いをして育てたと聞かされてはいるのですが・・・。 
姉が結婚するのに、帰化手続きをしたいといいます。今のままでは国際結婚になるので、手続きが大変だという次第。日本で生まれた灯には、在日コリアンという意識もないのですが、父からは「お祖父さんがどうやって日本に来たか知ってるのか? お祖母さんがなんで字が書けへんのか知ってるのか?」と、帰化することに反対されます。
造船所で男性たちの中で働く灯ですが、いろいろなことがあって死にたいと思うほど落ち込みます。診療所に通い、心に傷を抱えた人たちと話す日々。その中には在日の男性もいて、「ずっと嘘ついて暮らしてる感じ」と言います。
私が「在日」の人たちの存在を知ったのは、たぶん10歳頃のことでした。神戸で生まれ15歳まで育ったのですが、「にあんちゃん 十歳の少女の日記」を書いた在日である安本末子さん(1943年生まれ)が、父が教鞭をとっていた県立兵庫高校の卒業生だったのです。 兵庫高校は、長田区にあって、まわりには在日の人が多く暮らしていて、生徒には在日の方も結構いたようです。優秀な在日の教え子に、将来、差別されない医師を目指せと進路指導したこともあると父が話していたのを思い出します。
1995年1月17日の阪神淡路大震災では、断層の走っているところが大きな被害を受けましたが、この映画の金子家がゴム工場を営んでいた長田区界隈は、広い範囲で火災が起こったところでした。
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©Minato Studio 2025
チマチョゴリ姿のお祖母さんが赤ちゃん(灯のお姉さんでしょうか)を抱いた姿の映った写真1枚だけを、お母さんが見つけたと語っています。
灯は、やっと前向きに生きる元気を取り戻し、設計事務所に就職します。「それぞれの暮らしに寄り添う」というコンセプトに共感したのが志望動機でした。空襲も震災も乗り越えた丸五市場再建の話に取り組むのですが、コロナ禍で挫折。そんな中で開く「丸五写真展」。 震災前のにぎやかだったころの写真もたくさん。紙焼きの写真って、やっぱりいいなぁ~と。
灯の20歳から9年間の成長を追った本作。震災から30年となる2025年1月17日に公開が始まりました。 今や震災を経験していない人が、人口の3割ほどになったと聞きます。 私も東京にいて、実際には経験していないのですが、あの日の朝、テレビをつけた時に生田神社がつぶれている姿が目に飛び込んできて、びっくりしたのを思い出します。同級生の中には、両親や兄弟、お子さんを亡くした人も多くて、10年目の時に、「10年の節目と言われてもなぁ」とつぶやいていた同級生の言葉に、肉親を亡くした人にとっては、いつも心に思いを抱えていて、何周年などということは関係ないと思ったのでした。 

灯を演じた富田望生さんは、福島県いわき市出身。東日本大震災の経験者です。灯の抱える思いを細やかに演じています。 生き辛さを感じている方たちにも、ぜひご覧いただきたい1作です。(咲)


2025年/119分/DCP/日本
製作:ミナトスタジオ 
配給:太秦
公式サイト:https://minatomo117.jp/
★2025年1月17日(金)より新宿ピカデリー、ユーロスペース他全国順次公開




posted by sakiko at 22:46| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月19日

ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件  原題:金手指 英題:The Goldfinger

2025年1月24日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開 上映館情報

©2023 Emperor Film Production Company Limited All Rights Reserved

アンディ・ラウとトニー・レオンが『インファナル・アフェア』シリーズ以来20年ぶりの共演を果たしたエンタメ超大作!

監督・脚本:莊文強(フェリックス・チョン)
製作:ロナルド・ウォン
製作総指揮:アルバート・ヤン ジェン・ジーハオ アレックス・ヤン
撮影:アンソニー・プン
美術:エリック・ラム
編集:ウィリアム・チャン カーレン・パン
音楽:デイ・タイ
字幕翻訳:神部明世

キャスト
梁朝偉(トニー・レオン) 程一言(チン・ヤッイン)役
劉徳華(アンディ・ラウ) 劉啓源(ラウ・カイユン)役
蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)
袁詠儀(アニタ・ユン)
任達華(サイモン・ヤム)
錢嘉樂(チン・ガーロッ)
姜皓文(キョン・ヒウマン)
陳家樂 (カルロス・チャン)
白只 (フィリップ・ユッグ)
岑珈其(カーキ・サム)
柯煒林(ウィル・オー)

総製作費70億円以上を投じて、香港黄金時代を豪華絢爛に再現

イギリスによる植民地支配の終焉(1997年)が近づく1980年代の香港。狂乱の香港バブル経済時代を舞台に、熾烈な陰謀うずまく巨額の金融詐欺事件を描く。無一文から100億香港ドルを稼ぎ出した<凄腕詐欺師>程一言(チン・ヤッイン)役をトニー・レオンが、それを追う<執念の捜査官>劉啓源(ラウ・カイユン)役をアンディ・ラウが務める。『インファナル・アフェア』とは立場が逆転した役どころ。監督と脚本は、『インファナル・アフェア』3部作の脚本を手掛けたフェリックス・チョン。
香港で興行ランキング5週連続1位となる大ヒット、第42回香港電影金像奨で12部門にノミネートされ、トニー・レオンが主演男優賞を受賞するなど6部門を受賞した。


海外でビジネスに失敗し、身ひとつで香港に入国した野心家の男チン・ヤッイン(トニー・レオン)は、悪質な違法取引を通じて徐々に香港に足場を築いていく。80年代株式市場ブームの波に乗り、資産100億ドルの嘉文世紀集団を立ち上げ、時代のレジェンドに。一方、汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユン(アンディ・ラウ)は、チンの違法取引に目を付け捜査を始めた。幾度となく捜査の網を逃れられながらも15年間にも及ぶ粘り強い捜査を続けた。嘉文集団が引き起こした巨額の詐欺、汚職、殺人事件など、人命さえも失いながら大金が動く。1980年代の狂乱の香港経済を作り出したチン・ヤッインを追い詰めるラウ・カイユン。チンとラウの駆け引きが描かれる。実話を元に作られた。

公式HPより

狂乱のバブル経済時代を完全再現
金塊、札束、酒にパーティ…香港黄金時代を再現した綿密なプロダクション・デザインは、第17回アジア・フィルム・アワードで美術賞を受賞。そしてトニー・レオンやシャーリーン・チョイらが鮮やかに着こなす80年代ファッションも高く評価され、同賞衣装賞が送られた。物語の舞台は60年代から90年代にわたり、その時代の変化を表現するために、VFXにも大きく力が注がれた。さらにロケ地にはザ・ペニンシュラ香港、尖沙咀の1881ヘリテージなど香港名所がずらりと並ぶ。

フェリックス・チョン 監督・脚本
1968年、香港生まれ。『失業皇帝』(99)で脚本家デビュー。トニー・レオン主演、ケリー・チャン、仲村トオル、阿部寛らが出演の『東京攻略』(00)脚本や、『インファナル・アフェア』3部作でアラン・マックと共同脚本を務める。その他『ジェネックス・コップ2』(00)、『頭文字D THE MOVIE』(05)、『傷だらけの男たち』(06)などの脚本を手掛けた後、ドニー・イェン主演の『三国志英傑伝 関羽』(11)でアラン・マックと共同という形で監督デビュー。
その他の監督作に、アラン・マックとタッグを組んだラウ・チンワン主演『盗聴犯』シリーズ(09、11、14)、トニー・レオン主演『サイレント・ウォー』(12)、チョウ・ユンファとアーロン・クォックがダブル主演を務めた『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』(18)など。



公式HP https://www.culture-pub.jp/goldfinger/
2023年/香港・中国/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:金手指/126分/G/
製作国:香港、中国
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
posted by akemi at 20:56| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Retake リテイク

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監督・脚本・編集:中野晃太
撮影:中野晃太、柳田修平
音楽:れんぴ (チョーキューメイ)
主題歌:チョーキューメイ「また、夏になる」
出演:麗(うらら)(水口遊)、武藤優汰(関野景)、タカノアレイナ(小川アリサ)、大原奈子(橋本海)、千葉龍青(相原二郎)

高校3年男子の関野景、写真撮影が好きだがいまいち「これ」というものが撮れずにいた。まぶしい存在だった同級生の遊から映画作りに誘われる。彼女は「絵描きの男の子と落ち着きのない女の子が、”時間の流れない世界”を旅する映画を撮りたい、と言う。キャスティングやロケハンも進んでいく。景は撮影を担当し、遊や新しい仲間と一緒に作品を作る時間が楽しくなる。

高校生活の最後の夏休み。こんな協同作業ができたなら、一生の思い出になるに違いありません。みんなでの侃々諤々のやりとりも、行き違いもみな作品として結晶します。
映画を作る過程には何度もやり直し=リテイクがあります。そのたびに流れを観直したり、脚本を変えたりしてより良いものを目指していきます。そのリテイクがそのまま作品に落とし込まれ、ああなるほどと思いました。この撮り方って今までなかった気がします。一緒にいる時間が長くなると変わっていく、人との関係もうまく入っています。
中野晃太監督は映像制作のワークショップで、高校生だった麗さんと出会ったそうです。講師と受講生だった二人が、今回監督と俳優として1本の映画を作りました。ほかのキャストも麗さんと映画製作をした経験があったり映画を学んでいたり。ちょっと控えめな主役・景役の武藤優汰さんだけは、唯一公募だったとか。行動的な遊への、景の淡い恋心はどうなるのかーにもご注目ください。(白)


受賞歴
第 45 回ぴあフィルムフェスティバル PFF アワード 2023 グランプリ受賞
第 17 回ニューヨーク ジャパンカッツ 大林賞受賞
第 24 回ハンブルク日本映画祭最優秀独立作品審査員賞受賞

2023年/年/日本/カラー/110分
配給:ミカタ・エンタテインメント
(C)湘南市民メディアネットワーク
https://retake-movie.com/
★2025年1月18日(土)より日(土)より新宿 K’s cinemaほか全国順次公開中

posted by shiraishi at 12:53| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月17日

室町無頼

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監督・脚本:入江 悠
原作:垣根涼介「室町無頼」(新潮文庫刊)
撮影:大塚亮
音楽:池頼広
アクション監督:川澄朋章
出演:大泉洋(蓮田兵衛)、長尾謙杜(才蔵)、松本若菜(芳王子)、遠藤雄弥(赤間誠四郎)、前野朋哉(七尾ノ源三)、阿見201(馬切衛門太郎)、般若(小吉)、武田梨奈(超煕)、水澤紳吾(伝助)、岩永丞威(斬ノ助)、吉本実憂(お千)、ドンペイ(孫八)、川床明日香(小萩)、稲荷卓央(彦次郎)、芹澤興人(蔵人)、中村 蒼(足利義政)、矢島健一(伊勢貞親)、三宅弘城(法妙坊暁信)、柄本明(唐崎の老人)、北村一輝(名和好臣)、堤真一(骨皮道賢)

1461年、応仁の乱前夜の京。大飢饉と疫病に襲われ、賀茂川ベリには8万を超える死体が積まれた。荒れにあれた世の中、権力者は無能でなすすべもない。自由人の蓮田兵衛は、各地を放浪しながらこの暗黒の時代の立て直しを画策していた。天涯孤独で絶望の淵にあった才蔵は骨皮道賢に拾われ、兵衛に引き取られた。厳しく鍛えられ、眠っていた武術の才能が花開く。才蔵は六尺棒を手にし、兵衛のもとで兵法者としての道を歩み始める。
兵衛は様々な能力に秀でた無頼たちを束ね、世直しのための一揆を企てる。無謀ともいえる彼らの前に洛中の警備にあたる骨皮道賢が“髑髏の刀”を手に立ちはだかった。

書ききれないほどの出演者です。兵衛は才蔵を筆頭に、抜刀術の達人、槍使い、金棒の怪力男、洋弓の朝鮮娘らを集めました。飄々と世の中を渡り歩く自由人の兵衛と、はみ出し者たちアウトローの軍団に失うものはありません。
企画から8年たって公開となったこのアクション大作、室町時代の最大のできごとであった「応仁の乱」が勃発する前夜を描いています。足利将軍家のお世継ぎ問題と幕府官僚の家督相続に端を発した戦乱は、民衆の苦境などほったらかしで11年も続きました。それが諸国の戦乱へと伝播し、戦国時代へと繋がっていきます。
本格的な殺陣を特訓した出演陣、棒術の達人となる長尾謙杜さんの成長ぶり、大泉洋さんと堤真一さんの一騎打ちを刮目して観よ!

東京・有楽町の丸の内TOEIは7月27日に閉館予定です。65年の歴史のある劇場で封切られる最後の時代劇となりました。試写もぜひこのスクリーンで観ていただきたいということで、大きな画面での戦国アクションを堪能してきました。
子どものころから時代劇といえば東映、特にオールスターで繰り広げられる華やかなお正月映画が大好きでした。波が岩にあたって砕け散るオープニングを幾度観たことでしょう。閉館に向け、これまでの東映の名作が次々と上映される予定です。『室町無頼』とともにお楽しみください。(白)


2024年/日本/カラー/135分
配給:東映
(C)2025「室町無頼」製作委員会
https://muromachi-outsiders.jp/
★2025年1月17日(金)丸の内東映ほか全国ロードショー中
posted by shiraishi at 18:11| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サンセット・サンライズ

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監督:岸善幸
脚本:宮藤官九郎
原作:楡周平「サンセット・サンライズ」(講談社文庫)
撮影:今村圭佑
音楽:網守将平
インスパイアソング:GRe4N BOYZ「シオン」
出演:菅田将暉(西尾晋作)、井上真央(関野百香)、中村雅俊(関野章男)、三宅健(高森武)、池脇千鶴(町田仁美)、竹原ピストル(倉部健介)、山本浩司(山城進一郎)、好井まさお(平畑耕作)、小日向文世(大津誠一郎)

2020年。新型コロナウイルスのパンデミックで世界中がロックダウンに追い込まれた。東京の大企業に勤める釣り好きの晋作は、リモートワークを機に地方への移住を画策する。釣り好きの晋作の条件は海が近いこと。
ちょうど三陸の町で空き家対策に頭を悩ませていた関野百花が、4LDKを家賃6万円でネットにアップした。まさかの神物件に一目惚れした晋作はアポも取らずに現地へ飛んでいく。契約が成立し、晋作は希望通りの海沿いの町で気楽な“お試し移住”、仕事の合間には釣り三昧の日々を過ごし始めた。

『あゝ、荒野』(17)の岸監督、7年ぶりのタッグとなった菅田将暉さんが主演。脚本はクドカンこと宮藤官九郎さん。コロナや東日本大震災のエピソードもそっと盛り込みながら、東京から来た〈よそ者〉の晋作と、町の人たちのドラマができました。面白くないわけがない!井上真央さん演じる百香をマドンナとあおぎ、見まもる会を結成したフラれ組の4人。〈よそ者〉の晋作に警戒感まる出し。このぎこちなくも濃密なやりとりに笑います。
百香の事情がわかるにつれ、しんみりしますが「それもあり、これもあり」とばかりに百香が食卓に並べる三陸の海の幸山の幸。美味しそうー。じゃんじゃんかかる魚に晋作の「半端ね~!」の歓喜の声が響きます。漁師姿が板についている中村雅俊さん、目つきの悪さに誰かわからなかった三宅健さん、キャスト・スタッフの誰もがこの東北の町での撮影を存分に存分に楽しんだらしい空気感も「半端ね~!」(白)


2024年/日本/カラー/139分
配給:ワーナー・ブラザース
(C)楡周平/講談社 (C)2024「サンセット・サンライズ」製作委員会
https://wwws.warnerbros.co.jp/sunsetsunrise/
★2025年1月17日(金)より絶賛上映中

posted by shiraishi at 18:01| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする