2020年04月04日

ワンダーウォール 劇場版

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監督:前田悠希
脚本:渡辺あや
出演:須藤蓮(キューピー)、三村和敬(マサラ)、岡山天音(志村)、中崎敏(三船)、若葉竜也(ドレッド)、成海璃子(三船香)

京都の片隅に100年以上の歴史を持つちょっと変わった学生寮“近衛寮”がある。学生たちによる自治会で運営され、無秩序のようでいて長年蓄積された秩序が厳然と存在している。「変人」または「個性あふれる」寮生たちのユートピアが“近衛寮”だ。大学側から老朽化による「建て替え」の計画が提示された。寮生たちは補修しながら現在の建物を残したい。議論は平行線のまま、ある日、学生課に両者の間を隔てる”壁”が出現した。

“京都発地域ドラマ”として2018年に放送されたNHKドラマ「ワンダーウォール」の劇場版。SNSなどで大きな反響を呼び、写真集が作られて展示したり、トークショーが開かれたりしたそうです。モデルは明確にはなっていませんが、長く同じ建て替え&存続議論を続けてきた京都大学の吉田寮、と京都の方はすぐ思い浮かべるでしょう。知人の息子さんがこの寮生だったことがあり、建て替え問題もちょっと気にしていたのでした。劇場版はテレビの未公開カットを加えたディレクターズカット版となります。
渡辺あやさんは綿密に取材のうえ脚本を書き上げたようです。そして美術さんが作り上げた寮は、秘密基地か梁山泊もかくやというような、濃密なワンダーランドです。学生さんたちがたくさん参加していて、その再現度に驚いたそうですよ。
冒頭にアメリカ大統領が”壁”を作る!というスピーチ映像が流れます。ベルリンの壁を壊す映像もあり、のちに学内にも”壁”ができます。なんの隔たりもないのが、この近衛寮(敬語禁止、トイレはジェンダーフリー、自治会の決定は全員一致など)。住みやすさはそこから来ているのでしょう。登場する寮生ひとりひとりがまるで漫画キャラのように個性的、しかもこの近衛寮を大切に思う気持ちが切なくて、青春ただ中の人も遠く離れた人も胸キュンです。成海璃子さん凛として素敵、その台詞に頷けました。若葉竜也さん…絶句。
高校生の時、学校の近所に下宿していた男子が一人いて、あっというまにオアシス化してしまいました。きっと同じような場所だったのでしょう。クラス会のたびに思い出話で盛り上がります。(白)


2019年/日本/カラー/68分
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
(C)NHK
https://wonderwall-movie.com/
★2020年4月10日(金)より、シネクイント他全国順次公開
posted by shiraishi at 23:40| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年04月02日

ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ

シネスイッチ銀座近日ロードショー ほか、全国順次公開
劇場情報
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© 2020「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」製作委員会

監督:田部井一真  
企画・プロデュース:濱潤  
プロデューサー:大島新 堀治樹
撮影:中島大樹  
編集:大山幸樹  
音楽:石﨑野乃
ナレーション:安藤サクラ 
主題歌:三浦透子「uzu」(作曲・編曲:森山直太朗)
出演
ホセ・ムヒカ、ルシア・トポランスキー

ウルグアイ大統領ムヒカと日本との知られざる秘話を描く

世界でいちばん貧しい大統領と言われたホセ・ムヒカ
その生き方に誰もが心打たれた
世界でいちばん心豊かな大統領が日本に残した贈り物とは?

質素な暮らしぶりで「世界で最も貧しい大統領」とも言われた第40代ウルグアイ大統領ホセ・ムヒカ。2010年より2015まで大統領を務めたが、任期中、給料の大部分を貧しい人々に寄付し、公邸には住まず、自身の農場にある質素な家に暮らし、職務の合間には農業に親しんでいる。
そんなムヒカさんが世界中から注目されたのが、2012年にブラジルのリオデジャネイロで開かれた国連会議でのスピーチ。先進国が生み出した大量消費社会を厳しく批判し、強く、静かな口調で語り掛ける彼の言葉に世界は衝撃を受け、「人間の幸せこそが最も大切なもの」と締めくくるムヒカの言葉には愛が詰まっていた。そのスピーチ映像は世界中に広まり、日本でも大きな話題を呼んだ。このスピーチをもとに日本で発売された絵本「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」は、絵本として異例の50万部を超える大ヒットを記録した。
当時、ディレクターを務めていたテレビ番組でムヒカ大統領を取材したフジテレビディレクター田部井一真は、ムヒカ大統領が日本の歴史や文化にとても詳しく、尊敬していることに驚かされ、なぜ日本と日本人について詳しいのか興味をもち、多くの日本人に彼の言葉を聞いて欲しいと大統領退任後も取材を重ねた。ムヒカさんも訪日を熱望し、2016年に初来日が実現した。
ムヒカ大統領に心酔した田部井さんは、取材中に生まれた息子に「ほせ」という名前をつけたほど。3年あまり5回にわたるウルグアイ取材で浮き彫りになったのは、ムヒカさんの生き方と日本との関係。貧しい家に生まれたムヒカさんだが、生まれた家の近くに日本からの移住者がいて、花の栽培など一緒に働いていたことがあり、日本と日本人に対して詳しいし、日本人の勤勉さに敬服していた。そして菊の花が大好き。
やさしい瞳のムヒカさんだが、そういう貧しい生活の中で、左翼ゲリラ闘争に身を投じ、権力と戦い、13年もの投獄生活を送り、愛するパートナー、ルシア・トポランスキーさんとも離ればなれの苛烈な拘留生活を経て大統領に就任した。そんなムヒカさんなので、日本には来たことはないけど、日本について多くの知識と友人がいて、日本に興味を持っていた。そして、呼びかけに応じてムヒカさんは日本にやってきた。日本人に大切なメッセージを伝えるために。彼が一番訪れたかった場所は広島・原爆ドームだった。また、日本の大学で講演を行い、集まった若者たちに静かに語り掛けた「自分にとって一番大切なものを考えてほしいのです」ムヒカが願う人生への希望や生き方の哲学は、日本の若者たちへも伝わっただろう。

ムヒカさんは大統領を退いたあとも、自宅で農作業をしながら自給自足のつましい生活を送っている。実は去年、ピースボートの旅に出てウルグアイの首都モンテビデオに着いた時、ムヒカさんと妻のルシアさんが来船する予定だった。でも前日、雨の中で農作業をして、風邪をひいてしまい、ムヒカさんは来船できず、ルシアさんだけが来船した。ルシアさん自身は議員をやっていて現役。ルシアさんも闘士で、やはり投獄されていた経験もある。二人は、そういう苦労を重ねながら生きてきた。ムヒカさんとともに闘った日々の話、農業の話なども話され、二人はいつも一緒に生きてきたのだなあと思った。苦労はあったけど、とても素晴らしい人生だなと思った。ムヒカさんの家に菊の花があったのが印象的(暁)。

公式HP

製作:フジテレビ、ネツゲン、関西テレビ  
協力:「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」(汐文社) 
宣伝:アンプラグド
2020年/日本/98分/カラー/ステレオ
配給:KADOKAWA
posted by akemi at 22:10| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月22日

タゴール・ソングス

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監督:佐々木美佳
撮影:林健二
録音・編集:辻井潔
整音:渡辺丈彦
構成・プロデューサー:大澤一生
ベンガル語翻訳:スディップ・シンハ、佐々木美佳
タゴール・ソング翻訳: 奥田由香
英語翻訳:細谷由依子
出演:オミテーシュ・ショルカール、ブリタ・チャタルジー、オノンナ・ボッタチャルジー、ナィーム・イスラム・ノヨン、ハルン・アル・ラシッド、レズワナ・チョウドリ・ボンナ、クナル・ビッシャシュ、シュボスリシュ・ロエ、ニザーム・ラビ、ラカン・ダース・バウル、スシル・クマール・チャタルジー、リアズ・フセイン、鈴木タリタ

ラビンドラナート・タゴール(1861-1941)
非ヨーロッパ語圏で初めてノーベル文学賞を受賞したインド、ベンガルの詩人。
だが、「インドの神秘詩人」というのは、タゴールの一側面でしかない。
タゴールは、小説家、劇作家、音楽家、画家として業績を残し、さらに教育者や社会活動家としても実践をして来た人物だ。
本作では、多岐にわたるタゴールの業績の中から、自身が書いた詩に自ら曲をつけた二千曲以上にものぼる「タゴール・ソング」と総称される歌に焦点を当て、今なおベンガルの人たちに愛されているタゴール・ソングの魅力をたどる旅に誘う。

本作を作った佐々木美佳さんは、26歳。東京外国語大学ヒンディー語科卒。在学中にベンガル語も学び、タゴールの歌に魅せられ、この魅力を研究論文ではなく、音と映像で伝えたいと映画を作ることを決意。映画作りの難しさも知らないままに飛び込んでしまったと語っていましたが、逆に型にはまらない自由な発想で作られた映画には、100年経っても色あせないタゴール・ソングの魅力が溢れています。
私自身、タゴールのことは、やはりノーベル文学賞を受賞したベンガルの詩人という認識でした。かつて軽井沢の丘の上の公園で、タゴールが訪れたことがあるとの石碑を見て、日本とも関係の深い人だったのだと思ったのですが、何をしに日本を訪れたのかも映画で判明しました。
なにより驚いたのは、インドの国歌もバングラデシュの国歌もタゴールの作詞作曲したものということでした。無知でお恥ずかしい・・・ そんな私の為のように、レクチャー付の先行上映が行われます。ぜひお出かけください♪(咲)


★下記のレクチャー付先行上映は、残念ながら中止になりました。
◆『タゴール・ソングス』レクチャー付先行上映
 3月28日(土)~4月3日(金) 連日20:50~
 劇場:ポレポレ東中野

*上映後ゲスト*

3/28(土)「タゴールとタゴール・ソングの魅力を語る」/佐々木美佳 (監督)
3/29(日)「タゴールの詩の世界 - 詩を翻訳するということ」/工藤順 (ロシア語翻訳労働者) × 佐々木美佳 (監督)
3/30(月)「日本におけるタゴール受容の歴史」/新田杏奈 (タゴール研究者) × 佐々木美佳 (監督)
3/31(火)「映画としてのタゴール・ソングス」/新谷和輝 (映画評論) × 佐々木美佳 (監督)
4/1(水)「タゴール・ソングとインドポピュラー音楽」/軽刈田凡平 (インド音楽ブロガー) × 佐々木美佳 (監督)
4/2(木)「ベンガル料理の現在位置」/田嶋章博(東洋経済オンライン『カレー経済圏』ライター) × 佐々木美佳 (監督)
4/3(金)「タゴールを日本語に翻訳した人々」/新田杏奈 (タゴール研究者) × 佐々木美佳 (監督)

2019年/日本/105分/ベンガル語、英語/カラー/DCP/ドキュメンタリー
助成 文化庁文化芸術振興費補助金
宣伝:contrail
製作・配給:ノンデライコ
公式サイト:http://tagore-songs.com/
★2020年4月18日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開




posted by sakiko at 19:57| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記 

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監督:平良いずみ
出演:坂本菜の花
語り:津嘉山正種

北国・能登半島で生まれ育った坂本菜の花さんはいじめに遭い、地元の高校ではなく、沖縄のフリースクール・珊瑚舎スコーレに通うことを選んだ。ここでは既存の教育の枠に捉われない個性的な教育が行われ、70年あまり前の戦争で学校に通えなかったお年寄りも共に学ぶ。菜の花さんはお年寄りとの交流を通して、沖縄ではいまなお戦争が続いていることを肌で感じとっていく。
次々に起こる基地から派生する事件や事故。それとは対照的に流れる学校での穏やかな時間。菜の花さんは自分の目で見て感じたことを大切にし、自分にできることは何かを考え続ける。こうした日々を、彼女は故郷の北陸中日新聞にコラム「菜の花の沖縄日記」として書き続けた。そこから沖縄の素顔が浮かび上がってくる。

タイトルの「ちむぐりさ」は誰かの心の痛みを自分の悲しみとして一緒に胸を痛めること。沖縄の言葉には自分自身が悲しいという言葉がないらしい。作品の中でも、民間の牧草地に米軍の大型輸送ヘリが落ちたときに、牧草地の所有者はヘリに乗っていたアメリカ兵を助け、彼の娘もヘリの乗員の命を心配する。なかなかできることではない。こうした沖縄の人たちの優しい心に触れ、少女は自分がすべきことを考え、行動するようになっていく。
少女の視点を通して、私たちが多くのことを沖縄の人に押し付けて安穏と暮らしていることを思い知らされる。知った以上、このままではいけない。本土にいても何ができるはず。考えることが必要なようだ。(堀)


この作品で「フリースクール・珊瑚舎スコーレ」というフリースクールが沖縄にあることを知った。若い層から、戦争で学べなかった世代まで、幅広い層の学生が通い、既存の教育の枠に捉われない個性的な教育をしている。学校そのものを「思索と表現と交流」の場として、いろいろな世代が交流をしながら学んでいる。そこに北陸から坂本菜の花さんはやってきた。そして沖縄を体験する。
同世代だけでなく、沖縄のおじいやおばあとも知り合い、文化、歴史に触れながら、沖縄と本土の違い、沖縄が置かれている状況にも遭遇する。沖縄の基地も訪れ、自分の目で見て、耳で聞いて、大切なことは何かを考える。そんな日々を綴ったのがこの作品。私もこういう学校に通ってみたかったなと思わせてくれた(暁)。


菜の花さん。なんて素敵な名前なのだろう。
石川県能登で生まれ育った菜の花さんは、いじめを受けて、地元から遠く離れた沖縄の学校に行くことを選んだ。15歳で親元を離れ、働きながら学ぶ菜の花さんは、感受性の強い女の子。沖縄で米軍基地がもたらす問題を目の当たりにした菜の花さんは、かつて故郷で起こった内灘闘争(1952~53年)のことを思い起こす。内灘砂丘を米軍の試射場とすることに住民が反対し阻止。その後、日本各地での基地反対運動のきっかけとなったとされ、その帰結として沖縄の負担が重くなったことに思いが至る。菜の花さんがヤマトンチュとして沖縄のために何が出来るかと模索する姿に、観ている私も、沖縄を他人事にしてはいけないと思った。(咲)



2020年/日本/DCP/カラー/106分
配給:太秦
(C) 沖縄テレビ放送
公式サイト:http://chimugurisa.net/
★沖縄・桜坂劇場にて先行上映中
2020年3月28日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開

posted by ほりきみき at 01:05| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月14日

もみの家 

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監督:坂本欣弘 
脚本:北川亜矢子 
音楽:未知瑠 
主題歌:羊毛とおはな 「明日は、」(LD&K) 
出演:南沙良、渡辺真起子、二階堂智、菅原大吉、佐々木すみ江、島丈明、上原一翔、二見悠、金澤美穂、中田青渚、中村蒼、田中美里、緒形直人

心に不安を抱えた若者を受け入れる〔もみの家〕に、16 歳の彩花(南沙良)がやってきた。不登校になって半年、心配する母親(渡辺真起子)に促され俯きながらやってきた彩花を、もみの家を主宰する泰利(緒形直人)は笑顔で招き入れる。慣れない環境に戸惑いながらも、周囲に暮らす人々と の出会いや豊かな自然、日々過ごす穏やかな時間が、彩花の心を少しずつ満してゆく。

「生きづらさ」を抱えた若者たちが集まるもみの家。「籾(もみ)」は硬い殻をかぶった米のこと。籾は脱穀機にかけられて殻が取れて玄米になり、精米して糠のとれた白米になります。町で暮らしていると白米しか見られません。不慣れな農作業に従事する彩花が少しずつ馴染んでいき、硬い殻が取れていくようすにほっとします。生きることはもっとシンプルなはず。みんな同じじゃなくていい、と思えたら心の荷物はぐんと減りそう。
中村蒼さん、もみの家の卒業生を爽やかに演じています。2011年の『ほしのふるまち』では、東京から富山に転校してきた高校生役。星空の美しい街で自分のやりたいことを見つけたんでした。佐々木すみ江さんが彩花を温かく包む近所のおばあちゃん役です。これが遺作となりました。富山の美しい四季の中で、1年間かけて撮影された丁寧な映画です。(白)


子どもの不登校が続いたら、どんな親でもうろたえるに違いない。自分をしっかり持った、強い女性を演じることの多い渡辺真起子が気に病む母親を演じることで、よほどのことだと伝わってくる。一方、娘を演じたのは南沙良。殻にこもってもがく彩花を繊細に見せた。『幼な子われらに生まれ』、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』、『無限ファンデーション』と心に葛藤を抱える役を演じてきたのは伊達じゃない。
本作で彩花が入ったもみの家は宿泊型の自立支援塾と呼ばれ、不登校やひきこもりなど、さまざまな問題を抱える人たちが共同生活を送りながら自立に向けて動き出すよう支援する施設。全国各地にあり、自立へのサポートは施設によってさまざま。もみの家が参考にしたのが、富山県富山市郊外の稲作が盛んな農村集落 大沢野の万願寺地区にある自立支援施設「Peaceful House はぐれ雲」。ここで共同生活を体験した若者は、27年間で400人を超えるという。
慣れない環境に戸惑いながらも、彩花はもみの家での生活に次第に慣れてゆく。こんな方法もあるのだとどこかで苦しむ誰かの支えになる作品かもしれない。
(堀)


2020年/日本/105分/5.1ch/シネスコサイズ/カラー/デジタル
配給:ビターズ・エンド
©「もみの家」製作委員会
公式サイト:http://mominoie.jp/
★3月20日(金・祝)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次ロードショー!富山県で先行公開中!

posted by ほりきみき at 18:20| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする