2021年09月19日

チョコリエッタ

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監督:風間詩織
原作:大島真寿美
脚本:風間志織、及川章太郎
撮影:石井勲
音楽:鈴木治行
出演:森川葵(宮永知世子)、菅田将暉(正岡正宗)、岡山天音 三浦透子 市川実和子 村上淳 中村敦夫

知世子が5歳のとき、母親が交通事故で亡くなった。それ以来、兄弟のように育った愛犬ジュリエッタを心の支えに生きてきたが16歳の時に死んでしまう。短く髪を切り、犬になろうとした知世子。進路調査に“犬になりたい”と書いて担任から呼び出された日、映画研究部の部室を訪れる。母が好きだったフェデリコ・フェリーニ監督の映画『道』を見れば、ジュリエッタに会えるような気がしたのだ。しかし、そのビデオテープは卒業した先輩・正岡正宗のもので既に部室にはなかった。訪ねていった家で映像を編集していた正宗は「俺の映画に出ないか」と誘う。まるで、『道』のザンパノとジェルソミーナのように、バイクに乗って2人の撮影旅行が始まる。街を走り、山を走り、海に出る。喧嘩、事故、初めてのホテル。旅は2人に何をもたらすのか……。

2014年制作ですが、映画の舞台は原発事故の10年後の2021年。その2021年の今年は風間詩織監督が十代でデビューして40年。リバイバル上映が決まりました。撮影当時十代だった森川葵、菅田将暉を始め、岡山天音、三浦透子ら今若手として映画界を牽引する俳優が登場しています。初々しいなぁ。

同時に『火星のカノン』(2001)『せかいのおわり』(2004)も上映。公開を前に風間詩織監督にお話を伺いました。ただ今絶賛まとめ中。しばらくお待ちくださいませ。(白)


2014年/日本/カラー/シネスコ/159分
配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
配給協力:ミカタ・エンタテインメント
(C)寿々福堂/アン・エンタテインメント
★2021年9月24日(金)よりアップリンク吉祥寺にて上映。名古屋シネマテーク、アップリンク京都他、全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 16:56| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月17日

空白

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監督・脚本:𠮷田恵輔
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
撮影:志田貴之
音楽:世武裕子
出演:古田新太(添田充)、松坂桃李(青柳直人)、田畑智子(松本翔子)、藤原季節(野木龍馬)、趣里(今井若菜)、伊東蒼(添田花音)、片岡礼子(中山緑)、寺島しのぶ(草加部麻子)

中学生の添田花音が車に轢かれて死んでしまった。スーパーで化粧品を万引きしようとしたところを店長の青柳直人に見つかり、追いかけられて逃げた挙句道路に飛び出してしまったのだ。妻と離婚後、いつも花音を放たらかしだった父親の充は、突然の娘の死が信じられない。いじめではないかと学校へ乗り込み、自分の娘が万引きなどするはずがないと主張し、店長の直人を激しく追及し続ける。先代の店長のころからスーパーで働いている麻子は、直人をかばって応援する。充の怒りは収まらず、テレビの取材ではコメントを切り取られ、直人の心は折れていく。

これまでの𠮷田監督の作品を観続けています。他人や友人、兄弟姉妹などの関係、その中での加害や被害、善や悪を描いてきました。『ヒメアノ~ル』での狂気の森田剛さんに震えましたが、この突然娘を亡くした父親役の古田新太さんも怖い。いくら謝っても許してもらえません。毎日のように追いかけまわされ、罵倒されたら病んで心が壊れてしまいます。スーパーを継いだごく普通の青年を松坂桃李。しばしばスターのオーラを消して市井の一人になる俳優さんですが、今回も添田に攻撃されっぱなしの直人を演じて違和感ありません。あまりに儚げなので、つい心が動いてしまう麻子の気持ちもわかろうというもの。
娘のことを知らないというのは、添田自身が一番よくわかっているので、自分に怒り、学校へ乗り込み、目の前にいる青柳直人に怒りを集中させてしまいます。そんな添田に元妻は前には飲み込んだことを言い、若い漁師・龍馬は八つ当たりされながらも憎むことはしません。藤原季節さんは柳に風のような役がよく似合います。
𠮷田監督の作品のどの人間にも光と影があり、どん底へ落ちようと、這い上がるとっかかりがあります。観るほうも追い詰められますが息をさせてもらえます。
10月28日から始まる第34回東京国際映画祭にて、Nippon Cinema Now部門「𠮷田恵輔監督」特集が決定しました。こちらです。この『空白』のほか、旧作が上映され監督も登壇する予定。ぜひお楽しみに。(白)


私は、(白)さんと違って、𠮷田恵輔監督作品を観たのは、今年4月9日に公開された『BLUE/ブルー』が初めてでした。
登場人物それぞれの心情を丁寧に描いていて、じんわりと心に染み込む映画でした。
この『空白』も、突然、娘を失った父親の行き場のない思い、万引きに悩まされていた店主にとっては、自分が追いかけたせいだという自責の念、そして言われなき周りからの罵倒・・・ それぞれの押しつぶされそうな気持ちが、ずっしり伝わってきました。
本作の企画・製作に当たった河村光庸氏は、英語タイトルを『Intolerance(不寛容)』としたけれど、果たして、今のこの時代を「不寛容」という言葉で言い表せるのでしょうか?とも自問されています。“生きづらさ”や“閉塞感”とも違う「空っぽ=空白」な時代を生きているのではないでしょうか?と。 生きていれば、必ずいつか、空白を埋めることができると信じて前を向いていきたいものです。(咲)



2021年/日本/カラー/ビスタ/107分
配給:スターサンズ/KADOKAWA
(C)2021「空白」製作委員会
https://kuhaku-movie.com/
★2021年9月23日(木・祝)全国公開

posted by shiraishi at 11:10| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

明日をへぐる

2021年9月11日 ポレポレ東中野を皮切りに全国ロードショー

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楮(こうぞ)をめぐる山里の人々の暮らし

監督・編集:今井友樹
企画・製作:山上 徹二郎 
企画協力:田岡重雄 
撮影:今井 友樹 / 伊東 尚輝
航空撮影:辻 智彦 
ドローン撮影:佐藤 千春 
録音:今井 友樹 / 川上 拓也
音楽:山村 誠一(スティールパン他)
音楽編集:山田やーそ裕(7 弦ギター)
ナレーション:原田 美枝子  
音声ガイドナレーション:笠井信輔 
ポスター画:田島征三
パラブラ第一回配給作品 

高知県いの町吾北地区周辺で、土佐和紙の原料・楮をめぐる山里の人びとの暮らしを四季を通して撮影。日本が誇る和紙の文化を通して私たちの日常を見直してみたいとの思いから製作したドキュメンタリー作品。

土佐和紙の原料となる楮(こうぞ)をめぐる山里の人々の暮らしを記録したドキュメンタリー。高知県のローカルな方言である「へぐる」は、特殊な包丁で土佐楮の皮から表皮部分を削ぎ取る作業のことを指す。高知県の山あいの町で楮を丁寧にへぐっていく90代の女性たち。楮の外皮を何度も削り落とし、繊維だけを残していく。そのようにすると、楮は1000年以上の耐久性を持つといわれる和紙へと生まれ変わっていく。その手わざや佇まいから、世代を越えて受け継がれてきた山里の暮らしが見えてくる。手間もかかり大量生産もできず、継承者もいないことからやがて失われてしまうのではないかと言われている「へぐりの作業」をはじめ、楮を栽培し、紙を漉いてきた人たちの暮らし。そして和紙の文化を通して、効率性や利便性を求め余裕が失われてしまった現代社会の日常を見つめ直す。
今井友樹監督は 2014 年公開の『鳥の道を超えて』を始め、数多くのドキュメンタリー作品に携わっている。

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和紙を作る体験工房で紙漉きの体験をしたことがある。「綿のような白い繊維」が水に浮いていて、それを巻きすを大きくしたような簀桁(すけた)というものを何度もくぐらせ、その白いものが積み重なり厚みが出たところで乾燥し、それが和紙になった。その「綿のような白い繊維」が楮(こうぞ)だったのだろう。和紙になる原料には楮、みつまた、雁皮(ガンピ)などがあるそうだけど、この吾北地区周辺では楮を植え、それを収穫してきた。その収穫した楮を蒸し、皮を剥ぐ作業を、この地区の人たちは共同でしている。綿のような繊維になるまでの工程がこんなに大変ということを、この作品で知った。楮は90年も100年も樹齢があるのだということも。そして毎年枝を切って、木そのものは丸坊主になってしまい、また春になると枝が出て来て、冬になると枝を切る。
この作品では、村の衆が出てくるけど、楮の枝を刈ったり、蒸したり、へぐったり、川で洗ったり、干したり、それぞれの作業に来る人達は15,6人くらい。ほとんどが60代以上? 中には90歳を超えた方もいて、元気に作業をしている姿が心強かったけど、将来のことを考えると、もっと若い世代が参加しなくては将来にわたって継続していくのは厳しいかも。もっともこの山村の地区に住んでいる人たちの中に若い人はほとんどいないのかもしれない。
和紙は障子や表具用などに使われてきたが、これらの需要は減ってきているので、最近は版画用、公文書修復用などに使われることが多い。ここの楮で作られた和紙は高品質で、版画用などに使われていて好評らしい。
そして、これまでずっと謎だったことが解けた。山里や山村に行くと、低木でゴツゴツした木が並んで生えていて、春から夏にかけて2mくらいに枝が伸びる木があって、これは何だろうなと思っていたのだけど、それが楮だった。日本全国、あちこち行ったけど、この「木」はあちこちにあった。ということは、楮の生産地というのは、かなりあったということなのでしょう。今井友樹監督は 『鳥の道を超えて』でも、地方に伝わるカスミ網を使った猟を描いていましたが、貴重な地方文化の記録を続けているということに敬意を表さずにいられない(暁)。
(暁)。


『明日をへぐる』公式HP
2021年製作/73分/日本
配給:Palabra、シグロ
posted by akemi at 08:55| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月09日

君は永遠にそいつらより若い

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監督・脚本:吉野竜平
原作:津村記久子「君は永遠にそいつらより若い」
撮影:平井英二郎
音楽:加藤久貴
出演:佐久間由衣(ホリガイ/堀貝 佐世)、奈緒(イノギ/猪乃木 楠子)、小日向星一(ヨシザキ)、笠松将(ホミネ)、葵揚(ヤスダ)、森田想(オカノ)、宇野祥平(エトウ)、馬渕英里何(スギタ)、坂田聡(ヤギ)

ホリガイこと堀貝 佐世22歳。長身で処女、いや女の童貞といいたいホリガイ。変わった女の子と思われているが、それほど自覚はない。卒業が近づき就職先も決まって、バイトと学校に行くほかすることもなくぐだぐだ過ごしている。同じ大学なのにそれまで関わることのなかったイノギとひょんなことで話すようになった。一つ年下で一人住まいのイノギの家をときどき訪ねている。ある晩ゼミの友達と飲んだ後、ヨシザキ、ホミネと一緒に帰った。しばらくしてホミネが亡くなったことをヨシザキから知らされる。

器用に世の中を渡ったり、折り合いをつけたりするのが難しい…とほとんどの人がそう思っているかもしれません。時間は待ってくれないので、いやおうなく年だけ増えていってしまうんです。はあ。
福祉の仕事を選んだホリガイの動機にうっと胸をつかれました。世の中には大小の悪意が潜んでいます。そんなものに当たらずに人生歩き通せたら、よかったねと思います。残念なことに当たってしまうこともあります。自分は選んでいないのに。ホリガイは見なかったことにせず、自分がやれることをやります。なんだかあぶなっかしいし、自分も傷つきそうなのに。
原作の旧題は「マンイーター」でしたが、単行本化するときに変えたのだそうです。人を喰らおうと大口を開けている何かを連想するより「君は永遠にそいつらより若い」と言ってもらえるほうがいいよね。佐久間由衣さん、奈緒さん綺麗です。すれ違ったら絶対二度見しそう。(白)


2020年/日本/カラー/118分
配給:atemo
(C)「君は永遠にそいつらより若い」製作委員会
https://www.kimiwaka.com/
★2021年9月17日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 14:53| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

由宇子の天秤

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脚本・監督・編集:春本雄二郎
プロデューサー:春本雄二郎、松島哲也、片渕須直
撮影:野口健司 照明:根本伸一
出演:瀧内公美(木下由宇子)、河合優実(小畑萌)、梅田誠弘(小畑哲也)、松浦祐也(長谷部仁)、和田光沙(矢野志帆)、池田良(小林医師)、木村知貴(池田)、前原滉、永瀬未留、河野宏紀、根矢涼香、川瀬陽太(富山宏紀)、丘みつ子(矢野登志子)、光石研(木下政志)

ドキュメンタリーディレクターの由宇子は、3年前の女子高生いじめ自殺事件を追っていた。テレビ局と衝突を繰り返しながらも、真相に迫っている手ごたえを感じていた。その傍ら、父の経営している学習塾を手伝い、生徒の相談役としても信頼されている。
ある日父の隠された事実を知り、大きな衝撃を受ける。真実を追い続けてきた由宇子がその仕事と、一人の人間としての自分との間で揺れ、迷い苦しむことになった。

2018年『かぞくへ』の春本雄二郎監督、3年ぶりの新作です。前作の何倍ものキャストが登場、由宇子を中心にメディアと個人、先生と生徒、父と娘、母と息子など、何家族ものエピソードが展開していきます。複雑な人間関係が次々と影響を及ぼしていき、物語は思わぬ方向へ進んでいきます。緻密な構成の脚本を作りあげるのは、さぞ大変だったことでしょう。登場人物の謎も物語の余白、観た人が想像で膨らませることができます。
由宇子に限らず人生は選択の連続で、あれかこれか迷い、選び抜いたところで後々まで結果が出ないこともあります。正しかったのかどうかも、時と場合で違ってしまいます。それでも生きていかねばならず、せめて身軽でいたいと思うこのごろ。
コロナ禍で一般公開が遅れましたが、第71回ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品ほか、国内外の映画祭ですでに上映&受賞多数。(白)


☆春本雄二郎監督にお話を伺いました。こちらです。

ドキュメンタリーディレクターとして女子高生いじめ自殺事件の真相を追う由宇子は、マスコミの役割など、世に問う問題に光を当てることに信念を持ち、テレビ局の方針と衝突することもいとわずに仕事をしている。一体何が真実なのか。正しさとは何なのか。情報化社会が抱える問題や矛盾を真正面からあぶり出そうとすればするほど、制作サイドとぶつかってしまう。
社会においての矛盾を解き明かすことが正義と思いつつ、自分の大切なものを守りぬくことで、自分の在り方の矛盾を生み、選択をせまられる。ラストの思わぬ展開に、観客は驚くだろう。正義感溢れる女性ディレクターが思わぬ窮地に追い込まれていく様子を見事に演じきったのは瀧内公美。圧倒的存在感を感じた(暁)。


第21回東京フィルメックス2020
学生審査員賞:『由宇子の天秤』春本雄二郎

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春本雄二郎監督 第21回東京フィルメックス授賞式にて 撮影:宮崎暁美


*シネマジャーナルHP 映画祭報告
第21回東京フィルメックス2020 授賞式
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/478502965.html

2020/日本/カラー/5.1ch/1:2.35/DCP/152分
配給:ビターズ・エンド
(c)2020 映画工房春組 合同会社
https://bitters.co.jp/tenbin/
★2021年9月17日(金)渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー!
posted by shiraishi at 01:42| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする