2022年11月12日
ザリガニの鳴くところ(原題:Where the Crawdads Sing)
監督:オリヴィア・ニューマン
脚本:ルーシー・アリバー
原作:ディーリア・オーエンズ、友廣純 訳『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)
製作:リース・ウィザースプーン、ローレン・ノイスタッター
出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ、テイラー・ジョン・スミス、ハリス・ディキンソン、マイケル・ハイアット、スターリング・メイサー・Jr.、デヴィッド・ストラザーン
音楽:マイケル・ダナ
オリジナル・ソング:テイラー・スウィフト「キャロライナ」
1969年、ノースカロライナ州の湿地帯で、裕福な家庭で育ち将来を期待されていた青年の変死体が発見された。容疑をかけられたのは、‟ザリガニが鳴く”と言われる湿地帯でたったひとり育った、無垢な少女カイア。彼女は6歳の時に両親に見捨てられ、学校にも通わず、花、草木、魚、鳥など、湿地の自然から生きる術を学び、ひとりで生き抜いてきた。そんな彼女の世界に迷い込んだ、心優しきひとりの青年。彼との出会いをきっかけに、すべての歯車が狂い始める…。
原作は動物学者ディーリア・オーエンズによる同名ミステリー小説。2019年、2020年の2年連続、アメリカで最も売れた本とのこと。日本でも2021年に本屋大賞翻訳小説部門第1位に輝きました。
鳴くはずのないザリガニが鳴くってどういうこと?と思われるかもしれません。これは比喩のような表現で、ザリガニの鳴き声が聞こえるような気がするくらい茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きている場所という意味です。
両親に見捨てられながらもノースカロライナの湿地帯でたった一人、自然に抱かれて逞しく生きる少女がある殺人事件の容疑者として捕まってしまうのですが、その裁判の過程と並行して、彼女の生い立ちが描かれて、やがて2つの時系列が1つになった先に驚きの結末が待っています。
「読み始めたら止まらなかった」と原作に惚れ込んだ女優リース・ウィザースプーンが、自身の製作会社ハロー・サンシャインを通して映像化権を得て自らプロデューサーを担当しました。主人公のカイアを演じるのはデイジー・エドガー=ジョーンズ。イギリス人の彼女がカロライナ訛りや舞台となる湿地帯を移動するためのボートの操縦、絵を描く技術を身につけて役に挑んでいます。さらにシンガーソングライターのテイラー・スウィフトが、原作を愛するあまり、「この魅力的な物語に合うような、心に残る美しい曲を作りたかった」と自ら懇願してオリジナルソング「キャロライナ」を書き下ろして提供しました。(堀)
ミステリーではありますが、舞台となる広大な湿地の美しさが際立ちます。ロケ地としてここが見付かり、原作ファンも満足ではないでしょうか。
冒頭では揃っていた家族が減っていき、最後に一人残された少女カイアは自然によって生かされました。ひとりぼっちのカイアですが、豊かな自然に包まれて孤独ではありません。湿地に生きるたくさんの鳥や魚、植物たち。湿地は生きる術を身につけさせ、店の夫婦と唯一の友人が学校に行かないカイアを何くれとなく気遣ってくれます。
そんな生い立ちが法廷の場で少しずつ明らかになります。この極上の小説はディーリア・オーエンズによって書かれました。動物学者なので、研究書やノンフィクションは発表しても、69才にして初の小説なのだそうです。それも最後まで読者を惹き付けるミステリーとは!
原作者自身が魅せられているにちがいない湿地の美しい四季を愛でるとともに、生きることや命をそれぞれに考えられる作品でした。
カイアの好きなものや、細部まで丁寧に描かれた絵が飾られた家をじっくり見せてもらいたいなあ。(白)
2022年/125分/G/アメリカ
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
公式サイト:https://www.zarigani-movie.jp/
★2022年11月18日(金)ロードショー
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