2019年11月04日
スペインは呼んでいる (原題:The Trip To Spain)
監督:マイケル・ウィンターボトム
撮影:ジェームズ・クラーク
出演:スティーヴ・クーガン、ロブ・ブラインドン
イギリスの人気コメディアンで俳優のスティーヴ・クーガンは、ニューヨーク・タイムズからスペイン中を旅して書くグルメ記事の連載依頼を受ける。スティーヴは前回のイタリアへの旅にも同行してくれた旧友のロブ・ブライドンを誘う。スペインの北部から地中海に面するマラガまで約1,000マイルを南下する。
スティーヴ・クーガンとロブ・ブライドンが本人役でグルメ取材するシリーズ第3弾でスペインに。実生活でも親しいふたりが美味しい料理とワインを楽しみながら、映画ネタ満載の軽妙な会話をモノマネ付きで繰り広げる。その裏で思い悩むのはキャリアや家族のこと。まだまだなのか、もうなのか。50代の位置付けは難しい。他人事ではない。
ラストの先が気になったが、第4弾があるらしいと聞き、胸をなでおろした。(堀)
旅をしながらスペインの歴史や文化についてのウンチクが炸裂する二人の会話。
私が特に注目したのは下記の部分だ。
ムーア人が711年以降スペインを支配していた時代について話がおよんだ時に、ロジャー・ムーアの物真似をするロブ。そんな脇で、スティーヴが「ムーア人が来たころヨーロッパは暗黒時代だった」「数の体系も、天文学も医学も進んでいた」「ギリシアの学問もムスリムがアラビア語に翻訳して伝えてくれた」と語り続ける。「ムーア人はカトリックより寛容だった」という言葉も。イスラーム王朝のスペイン支配時代、高めの税金を払えば改宗しなくてよかったのに、キリスト教徒がスペインを奪還した後、ユダヤ教徒もイスラーム教徒と一緒に追い出されたという歴史がある。(そのユダヤ教徒を受け入れたのがイスラーム世界だったということも忘れないでほしいところ!)
「(ロジャー)ムーアはムスリムじゃない」というロブの落ちで笑わせてくれるが、それを現代のISIS(イスラム国)の台頭にもつなげているところが、さすが、『イン・ディス・ワールド』を作ったマイケル・ウィンターボトム監督だ。
スペインを旅していると、ここは元々ムーア人が城を作ったという町が実に多い。本作に登場する崖の上に作られた町クエンカもそんな一つ。私も訪れたことがあって、泊まったパラドール(国営宿舎)が出て来て懐かしかった。修道院を利用した趣のある宿。お城や屋敷など伝統的建造物を宿舎にしたパラドールは、食事も郷土食豊かで、スペインを旅するなら是非泊まりたい宿。映画を観て、パラドールを巡る旅をしたくなること請け合い! (咲)
2017 年/イギリス/108 分/カラー/ビスタ/
配給:ハーク
©SKY UK LIMITED 2017.
公式サイト:http://hark3.com/trip-to-spain/
★2019年11 月 8 日(金)より Bunkamura ル・シネマにて公開
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