2019年08月31日
タロウのバカ
監督・脚本編集:大森立嗣
出演:YOSHI、菅田将暉、仲野太賀、奥野瑛太、植田紗々、豊田エリー、國村隼
思春期のまっただ中を生きる主人公の少年タロウ(YOSHI)には名前がない。彼は「名前がない奴はタロウだ」という理由でそう呼ばれているだけで、戸籍すらなく、一度も学校に通ったことがない。そんな“何者でもない”存在であるタロウには、エージ(菅田将暉)、スギオ(仲野太賀)という高校生の仲間がいる。大きな川が流れ、頭上を高速道路が走り、空虚なほどだだっ広い空き地や河川敷がある町を、3人はあてどなく走り回り、その奔放な日々に自由を感じている。しかし、偶然にも一丁の拳銃を手に入れたことをきっかけに、それまで目を背けていた過酷な現実に向き合うことを余儀なくされた彼らは、得体の知れない死の影に取り憑かれていく。やがてエージとスギオが身も心もボロボロに疲弊していくなか、誰にも愛されたことがなく、“好き”という言葉の意味さえ知らなかったタロウの内に未知なる感情が芽生え始める……。
圧倒的な暴力による支配と連鎖。救いのカケラもない。押し寄せる不快感に打ちのめされた。次第に感覚が麻痺して、それさえ薄れていく。恐ろしい。何が彼らをこうさせるのか。愛情不足?では愛とは何か?子供が何をしても愛せるのか?監督さえその答えを見つけられていない気がした。(堀)
大森監督のはみ出て(出されて)しまった人たちの映画は、いつも胸にぐさぐさと刺さって痛い。監督・脚本の『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』 (2009)、『ぼっちゃん』 (2012)に連なるこの作品もそう。
エージは一度期待された高みから落ちてしまって、居場所がない。スギオは好きな女の子にどうしてやることもできない自分が悔しい。親に名前さえつけてもらえなかったタロウは、自分が他と違うことを不幸せと思わない。比べる幸せを知らないから。そんなタロウだから、エージとスギオは、イヤなことを忘れて一緒に笑っていられた。3人に半グレのグループが絡んでくる。銃の圧倒的な力に引き寄せられていく3人、先が見えて不安になった。スギオの父が息子を心配していたことにちょっと救われる。
菅田将暉、仲野太賀とも演技に定評がありますが、振り切るほどのエネルギーを放出している二人を相手に、自由に飛び回っているYOSHIって何者?初めて見たのですが、実はファッション界で有名な男の子でした!中学生から海外ブランドのモデルで、5月には歌手デビューもしたというのに驚愕。自撮りのコーディネイトをinstaにあげて知られるようになり、あるファッションブランドの有名人に出会って人生が大きく変わったようです。少しも物怖じするところがないのは、そういう経歴があってのことでした。まだ16歳です。(白)
2019年製作/119分/R15+/日本
配給:東京テアトル
©2019 映画「タロウのバカ」製作委員会
公式サイト:http://www.taro-baka.jp/
★2019年9月6日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー
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