2022年10月30日

鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽

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原作:太宰治
監督:近藤明男
脚本:白坂依志夫、増村保造、近藤明男
出演:宮本茉由、安藤政信、水野真紀、奥野壮、田中健、細川直美、白須慶子、三上寛、柏原収史、萬田久子、柄本明、尾崎右宗、菅田俊、岡部尚、中谷太郎、緒方美穂、三木秀甫、岡元あつこ、栗原沙也加、今泉朋子、白石恭子、薗田正美、光藤えり、山村友乃、野崎小三郎、ジョナゴールド、春風亭昇太
主題歌:小椋佳「ラピスラズリの涙」(作詞・作曲・歌)
撮影支援協力:青森県、山梨県、五所川原市、つがる市、弘前市、甲府市、山梨市、都留市、三鷹市

敗戦後の昭和 20 年、没落貴族となった上、父を失ったかず子とその母、都貴子は生活のために本郷西片町の実家を売って西伊豆で暮らすことになった。そんな折、戦地で行方不明となっていた弟の直治が帰還するとの知らせが入ると、母は「歳の離れた資産家に嫁いだらどうか」とかず子に話す。激怒したかず子は「鳩のごとく素直に、蛇のごとく慧かれ」というイエスの言葉とともに 6 年前の出来事を想いだす。まだ学生だった直治が師匠と仰ぐ中年作家、上原二郎との出会いである。それは一夜の恋心の目覚めであった。

元々は40数年前に白坂依志夫が脚本を書き、増村保造監督がメガホンを取ることになっていたようですが、企画が立ち行かなくなり、そのままお蔵入りしていた企画を助監督で入る予定だった近藤明男監督が受け継ぎ、映画化されました。
何といっても目を引くのが主人公のかず子を演じた宮本茉由の美しさ。「第1回ミス美しい20代コンテスト」で審査員特別賞を受賞し、本作で映画デビューにして初主演。美しさの中に芯の強さを内包しているかず子にぴったりです。近藤監督は最初、もう少し経験のある人を探していたようですが、なかなか見つからず。そのうちに安藤政信、水野真紀と周りが先に固まり、そんなとき『ローマの休日』でオードリー・ヘプバーンが起用されたように、新人女優がいいのではないかと思いついたそうです。
太宰治を思い出させる中年作家役は安藤政信。このところこういった自堕落だけれど、危険な色香を放つ役どころを一手に引き受けている気がします。今後も豊川悦司、加藤雅也の路線をしっかり受け継いでいくのではないでしょうか。
その2人が愛を交わすシーンは肌を見せずに映し出されますが、激しく求めあっているのがしっかり伝わってきます。モンタージュとして合間に視点の異なる複数のカットが組み合わされますが、このカットバックは監督の狙い。そこに全裸が入るとカットバックが乱れてしまうそう。増村監督の『曽根崎心中』(1978)の梶芽衣子と宇崎竜童のラブシーンと同じ手法で、そこにベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」が流れるのが近藤監督らしさ。じっくりと味わってご覧になってください。(堀)


2022年/日本/日本語/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/109分/G
配給:彩プロ
©2022 『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』製作委員会
公式サイト:https://syayo.ayapro.ne.jp/
★2022年10月28日よりTOHOシネマズ甲府、シアターセントラルBe館にて先行公開、11月4日よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国公開
posted by ほりきみき at 11:22| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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