2022年05月15日
シング・ア・ソング!~笑顔を咲かす歌声~(原題:Military Wives)
監督:ピーター・カッタネオ
出演:クリスティン・スコット・トーマス、シャロン・ホーガン
愛する人を戦地に送り出し、最悪の知らせが届くことを恐れながらイギリス軍基地に暮らす軍人の妻たち。大佐の妻ケイト(クリスティン・スコット・トーマス)は、そんな女性たちを元気づけ、共に苦難を乗り越えるための努力を惜しまないが、その熱意は空回りするばかり。そんな中、何気なく始めた“合唱”に、多くの女性達が笑顔を見せ始める。女性達のまとめ役リサ(シャロン・ホーガン)も、かつて慣れ親しんだキーボード・ピアノをガレージから引っ張り出し、積極的に関わり始める。
しかし、ケイトとリサは方針の違いで衝突を繰り返し、集ったメンバーたちも、美しい声を持っているのに人前で歌えなかったり、合唱を楽しむあまり音程を無視して歌ったりと、心も歌声もてんでバラバラ。担当将校も耳を覆う有り様だったが、心情を吐露するように共に歌い続けるうちに、同じ気持ちを持つ仲間として互いを認めていく。心が一つになっていくにつれ、次第に美しい歌声を響かせるようになった合唱団のもとに、ある日、毎年大規模に行われる戦没者追悼イベントのステージへの招待状が届く。思いがけない大舞台に浮足立つ妻たちだったが、そんな彼女たちの元に舞い込んだのは、恐れていた最悪の知らせだった。
イギリス軍基地で愛する人の帰りを待つ女性たちが合唱団を結成した実話をベースにして生まれたフィクションです。監督や脚本家たちが合唱団の女性たちに丁寧な取材をして物語を紡いでいきました。脚本家は女性ですが、それは監督が “主人公たちが女性なので制作にあたっては女性の視点が入った方がいい”と考えたから。脚本家の2人が合唱団の女性たちと仲良くなって様々なエピソードを聞き出し、作品に反映しているそうです。女性の軍人が同性婚パートナーと一緒に基地に住んでいることに驚きました。イギリスでも多くはないけれど、起こりうる話とのこと。多様なキャラクターが描かれています。
劇中で合唱団がシンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム」、ティアーズ・フォー・フィアーズの「シャウト」など、80年代のヒット曲を歌います。懐かしくなって思わず一緒に歌ってしまいそうになること必至!
合唱団の女性たちのパートナーはアフガニスタンに派兵された設定ですが、ウクライナで現実に起きていることを思うと複雑な気持ちになります。しかし本作が伝えようとするテーマは大切な人を想う仲間たちと互いに支え合って苦難を乗り越える絆。自分を表現する場所があると人はこんなにも強くなれるのだと教えられました。(堀)
原題は、Military Wives(軍人の妻たち)。
任地に送り出したら、もしかしたら、二度と会えないかもしれない・・・ 夫が任地から無事帰ってくることを祈りながら、同じ立場の妻たちが寄り添って歌う姿に、世界各地にいる軍人の妻たちの気持ちに思いを馳せました。夫とやりとりした手紙の中から選んだ言葉を紡いで作った曲が、切なかったです。
同じ立場だった妻たちですが、その後、悲報を受け取る妻もいれば、重傷を負ってでも帰還した夫を迎える妻もいます。それが、軍人の妻の運命とはいえ、お互い、どう接したらいいのか複雑な思いでしょう。
それにしても、戦争のない世界はいつになったら実現するのでしょう・・・(咲)
イギリス軍の基地からアフガニスタンの戦地への従軍と最初に出てきて、アメリカに追随し、アフガニスタンを土足で踏み荒らし、結局はタリバンが支配するようになってしまったアフガニスタンのことを思うと、イギリス軍の銃後を描いた映画なんて「これはイギリスのプロパガンダ映画か」と、最初はムッとしたものの、敵味方関係なく、パートナーを戦地に送り出すということは、「愛する人を失うかもしれない」という意味では、どちらも同じ感情をいだくということだと思いながら観た。
基地という小さなコミュニティの中で暮らし、大切な人を想う気持ちを仲間たちと分かち合い、支え合って乗り越えていく女性たちの絆。「合唱」という表現方法をみつけ、歌う喜びを知っていく彼女たちの表情の変化。最初はなかなかかみ合わず聴くに堪えない歌だったけど、だんだんにうまくなる合唱に引き込まれる。そして彼女たちは自信をもってゆく。最後には、実際に戦地から届いた手紙から歌が作られ、彼女たちの心情が伝わり、悲しみや喜びを織り込んだ作品に仕上がった(暁)。
2019年/イギリス/英語/上映時間:112分/スコープ/5.1ch/
配給:キノフィルムズ
© MILITARY WIVES CHOIR FILM LTD 2019
公式サイト:https://singasong-movie.jp/
★2022年5月20日(金)より全国順次公開
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