2020年11月13日
詩人の恋(原題:시인의 사랑)
監督・脚本:キム・ヤンヒ
出演:ヤン・イクチュン、チョン・ヘジン、チョン・ガラム
自然豊かな済州島で生まれ育った詩人のテッキ(ヤン・イクチュン)は、ここ数年スランプだ。稼げない彼を支える妻ガンスン(チョン・ヘジン)が妊活を始めたことから、テッキの人生に波が立ちはじめる。乏精子症と診断され、詩も浮かばず思い悩む彼を救ったのは、港に開店したドーナツ屋で働く美青年セユン(チョン・ガラム)だった。彼のつぶやきが詩の種となり、新しい詩の世界への扉を開いてくれたのだ。もっと彼を知りたい―。30代後半にして初めて芽生えた“守ってあげたい”という感情を隠しながら、テッキは孤独を抱えるセユンと心を通わせていく……。
恥じらいをなくしたガンスンに性的魅力を感じなくなってしまったテッキ。子どもが欲しくてナーバスになってしまうガンスン。未来に希望が持てないセユン。3人の人物造形が深い。そのため、誰か一人に感情移入するのではなく、場面ごとで、「わかる~」と共感する人が違ってきます。「お前はいったい誰の味方なのだ」と怒られてしまいそうですね。
芸術の世界でミューズ(女神)という言葉をよく聞きます。セユンは男性ですが、テッキにとってはミューズだったのでしょうか。ガンスンがテッキにドーナツを買って帰ったのがきっかけでテッキはドーナツの虜になり、お店に出掛けました。もし、ガンスンがドーナツを買って帰っていなければ…。運命とは分からないものです。(堀)
『息もできない』『あゝ、荒野』のヤン・イクチュンが、え? ほんとに彼?という位、ドーナツ屋の美青年に心ときめかせ、ドーナツを買いに走る姿が可愛いのです。あまり稼ぎのない夫を支えてきた妻ガンスンのやるせない思いに同情してしまいます。
本作が長編デビュー作のキム・ヤンヒ監督が紡ぎだした不思議な三角関係。妻のほうが現実的なのは、女性だからこそ描けたことかなと。
映画に出てきた詩人の住む町の風景が、去年の夏、済州島に行った時に訪れた西帰浦の町の高台にあるイ・ジュンソブ美術館の3階から眺めた小さな島が二つ浮かぶ風景にそっくりで、確認してみたら、やはり西帰浦でした。海沿いにまで行かなかったのが、今となっては残念! (咲)
ヤン・イクチョンが出ているということで観た。『あゝ、荒野』は観ていないけど、『息もできない』を東京フィルメックスで観た時、凶暴なヤクザの役を演じたその直後に監督でもあるヤン・イクチョン本人がQ&Aで出てきて、そのあまりに繊細で優しそうな人柄と、役柄との落差にびっくりした。そして、役者、ヤン・イクチョンに興味をもった。
その後ヤン・ヨンヒ監督の『かぞくのくに』では北朝鮮の諜報員役?を演じていたし、『あゝ、荒野』ではボクサーの役を演じていたというので、きっとそれぞれ独特の強調された役柄だったのだろうと思うけど、フィルメックスの時、目の前で本人が話している姿を見た印象では、この『詩人の恋』の詩人の役は本人の姿に近い印象だった。物静かで恥ずかしがりやという感じ。この映画を観ながら、東京フィルメックッス2009の『息もできない』Q&Aで、初めて本人を目の前で見た時のことを思い出していた(暁)。
2017年/韓国/韓国語/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/110分
配給:エスパース・サロウ
©2017 CJ CGV Co., Ltd., JIN PICTURES, MIIN PICTURES All Rights Reserved
公式サイト:https://shijin.espace-sarou.com/
★11月13日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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