2019年04月08日
希望の灯り(原題:In den Gängen/英題:In the Aisles)
監督・脚本:トーマス・ステューバー
原作・脚本・出演:クレメンス・マイヤー(「通路にて」新潮クレスト・ブックス『夜と灯りと』所収<品切>)
撮影:ペーター・マティアスコ
音楽:ミレナ・フェスマン
出演:フランツ・ロゴフスキ、ザンドラ・ヒュラー、ペーター・クルト、アンドレアス・レオポルト、ミヒャエル・シュペヒト、ラモナ・クンツェ=リブノウ
内気で引きこもりがちなクリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)は27歳。ある騒動の後に建設現場での仕事をクビになり、在庫管理担当としてスーパーマーケットで働き始め、レジでの雑踏やフォークリフトなど、自分にとって全く未知の世界に放り込まれる。そこで飲料セクションのブルーノ(ペーター・クルト)、ルディ(アンドレアス・レオポルト)、職場で唯一ハンドパレットトラックの操縦を許可されているクラウス(ミヒャエル・シュペヒト)、ユルゲンと出会う。ブルーノは、クリスティアンに仕事のいろはやフォークリフトの操縦の仕方を教え、クリスティアンにとって父親のような存在になる。通路で、クリスティアンはスイーツセクションの年上の同僚のマリオン(ザンドラ・ヒュラー)と出会い、彼女の謎めいた魅力に一瞬で惹かれる。コーヒーマシーンのある休憩所が彼らのおきまりの場所となり、二人は親密になっていく。
郊外の大型スーパー。2階分くらいはあるような高い棚に商品が積まれている。担当するブロックの品物が手に届くところにあるよう、商品を管理するのが主な仕事。ずっとそこにいると、大きな空間に押し潰されそうだ。棚の向こうに仕事仲間の姿が見えるとホッとして、表情が和らぐ。人間関係も同じ。適度な距離感を保ち、深入りしない。東西の統合を経た人々だからこその配慮か。
タトゥーを入れ、ちょっとワケありそうな主人公クリスティアンにもとやかく言わない。ただ、指導係のブルーノはクリスティアンに仕事を教えることで親密さを増す。またクリスティアンは他セクションの同僚に恋心を抱くようになり、踏み込んだ行動を取ってしまう。静かな均衡に変化が見える。
しばらくして起こった悲しい出来事。距離感のある人間関係が原因かなのか。親密さを持ったことで孤独が浮かび上がってしまったからか。監督ははっきりとは描かず、見る者に委ねる。しかし、すべてを受け止めて、前に進もうとするクリスティアンに希望を感じた。(堀)
2018年/ドイツ/ドイツ語/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/125分
(C) 2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH
公式サイト:http://kibou-akari.ayapro.ne.jp/
★2019年4月5日(金)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
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