2019年06月29日

ゴールデン・リバー(原題:The Sisters Brothers)

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監督:ジャック・オーディアール
原作:「シスターズ・ブラザーズ」パトリック・デウィット (創元推理文庫刊)
出演:ジョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、ジェイク・ギレンホール、リズ・アーメッド

時はゴールド・ラッシュ、アメリカ・オレゴンのとある町に、最強と恐れられる殺し屋兄弟がいた。兄の名前はイーライ(ジョン・C・ライリー)、弟はチャーリー(ホアキン・フェニックス)。彼らに与えられた新たな仕事は、連絡係のモリス(ジェイク・ギレンホール)が捜し出すウォーム(リズ・アーメッド)という男を始末すること。ウォームは化学者で、金を見分ける“予言者の薬”を作る化学式を発見したのだ。黄金を元手に暴力や貧富の差のない理想の社会を作りたい化学者、そんな彼の夢に心酔する連絡係、普通の平穏な暮らしに憧れる兄、裏社会でのし上がりたい弟。それぞれが思惑を抱きながらも手を結ぶことに。そして、彼らは黄金を手に入れるが、過ぎた欲望が歯車を狂わせていく。

お人好しなところがある兄とスイッチが入ると止まらない弟。無敵を誇る殺し屋2人がゴールド・ラッシュに群がる男たちに翻弄される。西部劇の様相を呈しているが、描いているのは兄弟の絆。どんな時でも見捨てない。思いも寄らぬ方向に転がった先にあるラストは兄が求めた未来と重なった。
ところで、ポスタービジュアルを見ると男4人の物語のようだが、原題は『The Sisters Brothers』。「姉妹? 兄弟? 何?」と不可解に思う人がいるかもしれない。実はイーライとチャーリーの苗字がSistersで、シスターズ家の兄弟の話という意味。私はこれをわかっていなかったので、モリス(ジェイク・ギレンホール)とウォーム(リズ・アーメッド)の扱いが軽すぎると思っていたのだが、これは大きな勘違い。(堀)



今やフランスの名匠となったジャック・オーディアールは、筆者にとって”打率100%”の監督だ。2003年公開の『リード・マイ・リップス』で衝撃を受け、『天使が隣で眠る夜』(’95)も遡って観た。以降、『真夜中のピアニスト』『預言者』『君と歩く世界』などなど発表される度に期待が裏切られることはない。
暴力性と繊細な感情、愛僧、魂の彷徨といった娯楽要素と作家性を絶妙に併せ持っている。全ての監督作で脚本も手掛けており、構成力、執筆能力、演出面、キャスティングセンス…、映画人としての持つべき資質を高い次元で示す得難い監督なのだ。

そのオーディアールが初めて製作した英語劇なのだから、注目せざるを得ない。しかもハリウッドの伝統芸(?)の西部劇。ゴールドラッシュの利権を巡る剥き出しの欲望が渦を巻く。
身体の一部欠落というオディアール特有の人物造形は本作でも4人の登場人物たちに上手く配し、活かされている。脂ぎった男の物語と思いきや、探し求めていた理想郷を母親に暗喩的な意味を込める点は、上手い!と唸らされた。(幸)




2018年/アメリカ・フランス・ルーマニア・スペイン合作/カラー/120分
配給:ギャガ
(C) 2018 Annapurna Productions, LLC. and Why Not Productions. All Rights Reserved.
公式サイト:https://gaga.ne.jp/goldenriver/
★2019年7 月 5 日(金) TOHO シネマズ シャンテ他全国ロードショー
posted by ほりきみき at 09:46| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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