2019年05月25日

誰もがそれを知っている(原題:Todos lo saben)

everybodyknowsposter.jpg

監督・脚本:アスガー・ファルハディ
撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ
音楽:ハビエル・リモン
出演:ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス、リカルド・ダリン 

アルゼンチンに暮らすラウラ(ペネロペ・クルス)が、妹の結婚式のため故郷スペインに帰省し、ワイン業を営む幼なじみのパコ(ハビエル・バルデム)や家族との再会を果たす。しかしその喜びもつかの間、結婚式の後に催されたパーティーのさなか、ラウラの娘イレーネが失踪。まもなく何者かから巨額の身代金を要求するメッセージが届き、ラウラは絶望のどん底に突き落とされる。パコは時間稼ぎに奔走し、ラウラの夫(リカルド・ダリン)もアルゼンチンから駆けつけるが、疑心暗鬼に陥った家族の内に長年隠されていた秘密が露わになっていく…。

スペインの小さな村で結婚祝いの最中、誘拐事件が起きた。主人公の悲痛な叫びに緊迫感が募る。身代金目当ての犯人の仕業か。それとも身内による狂言か。支えてくれる友人は元カレで以前は実家の小作人だった。土地を買い取り、今は対等なはずなのに、元地主の父の意識は変わらない。ありがちなことだろう。
悲劇も立場によって温度差がある。意識の違いが猜疑心を炙り出す。やがて明らかになる秘密。知らないのは本人だけというのは小さい村ならでは。ラストに理不尽さを感じるが、これが現実なのかもしれない。(堀)


公開を記念して、フリーライター高橋ユキと新潮社出版部長の中瀬ゆかりのトークイベントが行われた。詳細はこちらから。

昨年、カンヌ映画祭のオープニングでファルハディ監督のスペインで撮った映画が上映されると聞いて、世界に認められた巨匠になったと、ほんとに嬉しく思ったものです。日本でも公開されることと心待ちにしていました。そして、拝見してみたら、舞台はスペインの片田舎で、イラン人もイランのことも全く出てこないのに、まぎれもなくファルハディ監督の作品だと感じて、唸りました。

思えば、私がファルハディ監督にお会いしたのは、2009年9月。アジアフォーカス・福岡国際映画祭で、『彼女が消えた浜辺』が『アバウト・エリ』のタイトルで上映された時のことです。その折にインタビューさせていただいたのですが、読み返してみたら、「人間の本質はどこでも同じ」とありました。ファルハディ監督の映画作りの根底にあるのは、まさにそれだと思いました。

スペインを舞台にした物語の構想のきっかけは、15年前のスペインの旅のあちこちで見かけた行方不明の子どもたちの写真。最初に書いた短い物語をだんだん膨らませていったそうです。『ある過去の行方』を撮り終えた頃から本格的に本作の企画を始動。数年来懇意にしていたペネロペ・クルスとハビエル・バルデムのスター俳優夫妻を主人公にあて書きして脚本を執筆。二人にも相談したり、スペインを再訪したりして、何度も手を入れペルシア語で脚本を完成させ、その後スペイン語に翻訳。仕事仲間のイラン女性マスメ・ラヒジさんのお陰で、ペルシア語で感じたことをスペイン語で表現することができたと公式インタビューにありました。しっかりスペインの物語になっていながら、ファルハディ監督を感じることが出来たのも納得です。
『誰もがそれを知っている』も、これまでの作品同様、台詞の一言一言を聞き逃せません。それでも、もう一度観て、その言葉はそういう意味だったのだと確認したくなります。ファルハディ監督の仕掛けにしてやられました。(咲)


2018年/スペイン・フランス・イタリア/スペイン語/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/133分
配給:ロングライド  
© 2018 MEMENTO FILMS PRODUCTION - MORENA FILMS SL - LUCKY RED - FRANCE 3 CINÉMA - UNTITLED FILMS A.I.E
公式サイト:https://longride.jp/everybodyknows/
★2019年6月1日(土) Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 02:38| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください