2019年05月17日
僕たちは希望という名の列車に乗った(原題:Das schweigende Klassenzimmer)
監督:ラース・クラウメ
原作:ディートリッヒ・ガルスカ「沈黙する教室」(アルファベータブックスより4月発刊予定)
出演:レオナルド・シャイヒャー、トム・グラメンツ、ヨナス・ダスラ―、ロナルト・ツェアフェルト、ブルクハルト・クラウスナー
1956年、東ドイツの高校に通うテオ(レオナルド・シャイヒャー)とクルト(トム・グラメンツ)は、列車に乗って訪れた西ベルリンの映画館でハンガリーの民衆蜂起を伝えるニュース映像を目の当たりにする。クラスの中心的な存在であるふたりは、級友たちに呼びかけて授業中に2分間の黙祷を実行した。それは自由を求めるハンガリー市民に共感した彼らの純粋な哀悼だったが、ソ連の影響下に置かれた東ドイツでは“社会主義国家への反逆”と見なされる行為だった。やがて調査に乗り出した当局から、一週間以内に首謀者を告げるよう宣告された生徒たちは、人生そのものに関わる重大な選択を迫られる。大切な仲間を密告してエリートへの階段を上がるのか、それとも信念を貫いて大学進学を諦め、労働者として生きる道を選ぶのか……。
今年はベルリンの壁崩壊(1989年11月9日)から30年。しかし、本作が描いている1956年はまだそのベルリンの壁さえ建設されていなかった。完全フリーというわけではないが、東ベルリンから西ベルリンへ行くことは可能で、テオとクルトは祖父の墓参りを口実に西ベルリンに出掛けている。しかし、人間関係は複雑だ。第二次世界大戦時、本人や家族がどこに属していたか。このことが大きく関わっていることが作品を通じて伝わってきた。それでもテオたちは祖父や父の立場でなく、自分はどうするかを考えた上で行動する。最後の彼らの決断と行動は清々しい。
本作は実話がベースにあり、原作はディートリッヒ・ガルスカが自身の実体験を綴ったノンフィクション『沈黙する教室 1956年東ドイツ―自由のために国境を越えた高校生たちの真実の物語』である。ラース・クラウメ監督が脚本も担当。原作者をクルトに反映し、緻密なリサーチでサスペンスタッチな青春映画に仕上げた。(堀)
2018年/ドイツ/ドイツ語/シネスコ/111分/PG-12
配給:アルバトロス・フィルム/クロックワークス
© Studiocanal GmbH Julia Terjung
公式サイト:http://bokutachi-kibou-movie.com/
★2019年5月17日(金)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
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