2019年05月18日

兄消える(英題:Portrait of Brothers)

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監督:西川信廣
脚本:戌井昭人
音楽:池辺晋一郎
撮影監督・編集:小美野昌史
照明:淡路俊之
美術:橋本千春
出演:柳澤愼一、高橋長英、土屋貴子、金内喜久夫、たかお鷹、原康義、坂口芳貞、新橋耐子、雪村いづみ(特別出演)、江守徹(特別出演)

信州上田で、いまなお昭和の匂いを残す袋町。鈴木鉄男(高橋長英)は、親から受け継いだ町工場を細々と続けながら、最近は父親の介護に追われ76 歳になるまで結婚もせずに暮らしてきた。その父が100 歳で亡くなる。商店会長の加賀(金内喜久夫)や工場を営む渡辺(坂口芳貞)、弁当屋の坪内(原康義)といった幼馴染たちは「嫁をもらえ」と鉄男を焚きつけるが、いまさら誰かと暮らす人生に現実味を感じられずにいた。
そんなとき40年前に家を飛び出した80歳の兄・金之助(柳澤愼一)がワケあり風の若い女、樹里(土屋貴子)を連れて突然舞い戻ってきた。

40年ぶりに帰ってきた兄と父親の跡を継いで細々と町工場を続けてきた弟を中心に、高齢化が進む町の人々の悲喜こもごもを描く。兄は困った人を見ると放っておけない。善意のつもりがひと悶着起こす。弟の対応から、これまでも兄の行動のとばっちりを受けて、苦労してきたのがうかがわれた。しかし、悪意のある人は登場せず、兄弟も互いに思い合っていることが伝わってくる。見終わったとき、歳を重ねることも悪くないと思えてきた。(堀)

柳澤愼一さん86歳、高橋長英さん76歳にしてW主演。風来坊のような兄、まじめで親の面倒をみてきた弟。なんだか寅さんとさくらの兄妹みたいです。先に好き勝手したもん勝ちってな具合に、面倒なことからは遠ざかる。何かあると台風のように戻ってきて周りをかき回すのに、意外に憎まれない。こんな人身内に一人くらいいそうです。ご近所の同年配のおじさまたちもあちこち痛がりながらも、日々暮らしている。店や工場の閉鎖の話題も切ない。とてもリアルな小さなお話の積み重ねに、樹里のドラマがちょっとだけ違う色を添えます。弟の鉄男に遅い遅い春がやっと巡ってきそうなラストにホッ。
30年以上も前に当時住んでいた地方の町で柳澤愼一さんの講演会がありました。たまたま楽屋にお茶出しに行きましたら「お茶は飲まないんです」とお水を所望されました。物腰の柔らかな品のいい男性という印象でした。軽妙洒脱なトークと、歌も1曲歌ってくださったような記憶があります。遺作と言わず、お元気で再登場をお待ちしています。(白)



2019年/日本/カラー/5.1ch /シネスコ/104 分
配給:エレファントハウス、ミューズ・プランニング
©「兄消える」製作委員会
公式サイト:https://ani-kieru.net/
★2019年5月25日よりユーロスペースほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 14:04| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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