2020年05月29日
罪と女王(原題:Dronningen、英題:Queen Of Hearts)
監督・脚本:メイ・エル・トーキー
共同脚本:マレン・ルイーズ・ケーヌ
撮影:ヤスパー・J・スパンニング
音楽:ヨン・エクストランド
出演:トリーヌ・ディルホム、グスタフ・リン、マグヌス・クレッペル、スティーヌ・ジルデンケルニ、プレーベン・クレステン セン
児童保護を専門とする優秀な弁護士のアンネは、優しい医者の夫と幼い双子の娘たちと美しい邸宅で完璧な家庭を築いていたが、夫と前妻との息子である17歳の少年グスタフが問題を起こし退学になったため、スウェーデンからデンマークに引き取ることに。グスタフは衝動的な暴力性があり家族に馴染もうとしなかったが、そんな子供達と仕事で常に接しているアンネは根気よく彼を家族として迎え正しい方向へ導こうと努める。しかし、グスタフと少しずつ距離を縮めていくうちに、親密さが行き過ぎてしまい、アンネはグスタフと性的関係を持ってしまう。そして、そのことが大切な家庭とキャリアを脅かし始めた時、アンネは残酷な選択をする。
知的で美しい女性が義理の息子とただならぬ関係になってしまう。たびたび描かれてきたテーマですが、本作がこれまでの作品と大きく違うのは、展開が倫理観の範疇に収まり切れないところです。「一応、映画だし、そこはやっぱり、最後はねぇ」というラストを予想していたら、「え~、それでいいの?!」と驚くことでしょう。しかし、もし自分が主人公なら、心の奥底ではこの結末を願ってしまっていたに違いありません。決して口にはできないけれど。
人間の醜い欲望の本質をえぐり出したような脚本を北欧作品ならではのサスペンスタッチで仕上げてあります。どんなラストなのか、気になったら、ご覧になるのはぜひ1人で。もし、主人公に共感してしまったら、その思いは心に秘めておく方がいいかも。
本作は2月に開催された「トーキョーノーザンライツフェスティバル2020」で『クイーン・オブ・ハーツ』のタイトルで上映されました。
サンダンス映画祭で観客賞受賞し、圧倒的国内評価でアカデミー賞デンマーク代表作品に決定。そしてデンマークが誇る偉大な女性監督スサンネ・ビア、ロネ・シェルフィグですら成し得なかった女性初のデンマーク・アカデミー賞(ロバート賞)作品賞を含む主要9部門で受賞。さらに北欧最大の映画賞であるヨーテボリ国際映画祭で最優秀ノルディック賞・観客賞・最優秀俳 優賞の3冠受賞。北欧5カ国から選出されるノルディック映画賞ではグランプリに輝きました。(堀)
2019年/デンマーク=スウェーデン/デンマーク語・スウェーデン語/127分/シネスコR15
配給:アット エンタテインメント
©2019 Nordisk Film Production A/S. All rights reserved
公式サイト:http://www.at-e.co.jp/film/queen/
★2020年6月5日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺、シネ・リーブル梅田、他にて公開
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