2022年06月11日
PLAN 75
脚本・監督:早川千絵
出演:倍賞千恵子 磯村勇斗 たかお鷹 河合優実 ステファニー・アリアン 大方斐紗子 串田和美
夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチ(倍賞千恵子)は78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は<プラン75>の申請を検討し始める。一方、市役所の<プラン75>の申請窓口で働くヒロム、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子(河合優実)は、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。また、フィリピンから単身来日した介護職のマリア(ステファニー・アリアン)は幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の<プラン75>関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に勤しむ日々を送る。
果たして、<プラン75>に翻弄される人々が最後に見出した答えとは―――。
2018年に『十年 Ten Years Japan』の一編として発表した短編を監督自ら再構築、キャストを一新し、長編映画化しました。短編は問題提起に留まっていましたが、本作ではその先に感じられる希望も描かれています。第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、初長編作品に与えられるカメラドールのスペシャルメンション(次点)に選ばれました。
75歳以上が自ら生死を選択できる制度といえば聞こえはいいけれど、体のいい姥捨て山。そんなことをしていいのかと思う反面、将来、自分が1人で暮らしていけなくなったとき、選択肢としてあったらいいのにと思う気持ちもある。いや、まだその状況に陥っていないからそう思えるのか。でも私のように考える人はほかにもきっといるはず。頭の中をいろいろな思いが渦を巻く。絶対にこのような未来はないと断言できないほどのリアリティのある作品で、捉え方によってはホラーよりも怖いかもしれません。(堀)
冒頭で、この<プラン75>法案ができたきっかけは、高齢者施設の襲撃事件が続いたからという説明が入ります。反対意見も多かったけれども、「ようやく」成立したとニュースで言うんです。「ようやく」…っていうほど待たれていたのかと、映画の台詞ではありますが愕然。現実世界でも「生産性」ということばがひところ話題になりました。障害者や高齢者への予算を出し渋る政治家さん、邪魔だという人、あなたも予備軍なんです。
ミチが手を尽くしても仕事を得られず、決意した後サポート役の瑶子と話すのを心待ちにし、「先生」と呼ぶ声が明るくなるのに胸が痛みました。人生の幕引きは本人の希望を尊重してほしい。そして生きている間、切り捨てないでほしいと願うのは贅沢なんでしょうか。(白)
つい先日、私より若い長年の友人Yさんが亡くなられたとの葉書が届きました。差出人は、「死後事務受任者」の司法書士の方。Yさんは一人っ子で、まだ62歳でしたが、ご両親をすでに見送られていました。自分が亡くなった後のことをきちんと司法書士の方に託されていて、彼女らしいと感じ入りました。そんなときに観た本作・・・ 身寄りのないお年寄りが、PLAN75を選ばざるをえないような社会は、あまりにも悲しい。高齢化社会で、財政的に支えられなくなったとしても、命ある限り、心地よく暮らせる世の中であってほしいと願います。そう思いながら、さて、私のこの先はどうなるのだろう・・・と不安が募ります。(咲)
2022年/112分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee
公式サイト:https://happinet-phantom.com/plan75/
★6月17日(金)から新宿ピカデリーほか全国公開
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