2020年06月19日
オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡(原題:Over the Limit)
監督:マルタ・プルス
出演:マルガリータ・マムーン、イリーナ・ヴィネル、アミーナ・ザリポア、ヤナ・クドリャフツェワ
「あなたは人じゃない。アスリートなの!」リタ(=マルガリータ・マムーン)は、新体操王国ロシアの代表選手。オリンピックに向けて、鬼コーチたちからの強烈な指導を受け、日々の練習に励む。アリーナ・カバエワなど、数多くのオリンピック金メダリストを育て上げたイリーナ・ヴィネルの指導は、特に精神面において厳しい。リタは優雅にリングをキャッチし、ボールを肩で転がすが、コーチたちは更なる高みを求め、何度も何度も繰り返させる。わずかな自由時間には、彼氏と電話で話したり、家族と穏やかに過ごすが、すぐにまた激烈なトレーニングが始まる…。
本作はリタがリオ・オリンピックで金メダルを獲得するまでの道のりを追ったドキュメンタリー。美しく華やかな表舞台で栄光を勝ち取るため、 アスリートはその裏で何をしているのか。想像を絶する世界に迫る。
マルガリータ・マムーンは、バングラデシュ人の父とロシア人の母との間に生まれました。幼少期にはバングラデシュの選手として活動、その後ロシアの選手として活動するようになったと資料にあって、俄然、興味を持ちました。
リオデジャネイロオリンピックに出場中、お父様は癌で病床にあって、金メダルを取って帰国して、2日後にお父様は亡くなられました。
お父様とお母様の馴れ初めを知りたいなと思いました。
指導をするイリーナ・ヴィネルの個性は、マルガリータ・マムーン以上に強烈です。国の威信をかけて、なんとしてでもメダルを取らせるという厳しい指導。
ポーランド人であるマルタ・プルス監督が、ロシアの新体操選手を追ったドキュメンタリーを作ろうと思ったのは、彼女自身が5歳から11歳まで新体操をしていた素地も影響しています。ですが、なにより、映画に政治的な要素を取り入れたいという思いから、ロシアで政治とプロパガンダのために体操が重要であることに注目したのです。アスリートとして活躍した後、コーチを務めるイリーナ・ヴィネルが、ロシア一の富豪と結婚していることからも、体操界から現代ロシアを映し出せるのではと考えたそうです。(咲)
総監督のイリーナ・ヴィネルがリタに対して罵詈雑言を浴びせかけ、まるで暴君のように映し出されます。きっと同じ経験を彼女自身も経験したのでしょう。日本の昔の運動部あるあるな状況です。いえ、もしかしたら相変わらず、日本でもひっそり繰り広げられているかもしれません。
『新体操の女王マムーンの軌跡』というタイトルを考えれば、結果は自ずから見えてくるのですが、タイトルを忘れてしまうくらい強烈です。そしてイリーナが辛辣な物言いをするのはリタだけではありません。リタを直接的に指導するアミーナ・ザリポアにも浴びせかけます。中間管理職の辛さを思い出す人もいるのではないでしょうか。このアミーナもイリーナに見出されて、ロシアの選手として活躍していたのです。きっと選手時代にはリタと同じように言われていたのでしょう。
リタは結果を残しました。今は引退し、作品にも出てきた彼を結婚しています。また別の若い才能の持ち主がイリーナの暴言に耐えているのもしれません。パワハラでその才能が潰れてしまうことがないよう祈るばかりです。(堀)
2018年/ロシア語/74分/ポーランド、ドイツ、フィンランド/
配給:トレノバ、ノーム
©Telemark, 2018
公式サイト:https://otl-movie.com/
★2020年6月26日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿ピカデリー他全国順次ロードショー
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