監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロバート・ハリス、ロマン・ポランスキー
原作:ロバート・ハリス「An Officer and a Spy」
出演:ジャン・デュジャルダン、ルイ・ガレル、エマニュエル・セニエ、グレゴリー・ガドゥボワ、メルヴィル・プポー、マチュー・アマルリック他
19世紀末のフランス。ユダヤ系の陸軍大尉ドレフュス(ジャン・デュジャルダン)が、ドイツに軍事機密を流したスパイ容疑で軍法会議にかけられ、終身刑を宣告される。ところが新たに防諜部門の責任者に就いたピカール中佐が、はからずもドレフュスの無実を示す衝撃的な証拠を発見してしまう。中佐は上官に対処を迫るが、国家的なスキャンダルを恐れ、隠蔽をもくろむ上層部に左遷を命じられてしまう。すべてを失ってもなお、ドレフュスの再審を願うピカールは己の信念に従い、作家のエミール・ゾラらに支援を求める。しかし、行く手には腐敗した権力や反ユダヤ勢力との過酷な闘いが待ち受けていた……。
<ドレフュス事件とは>
1894年にフランスで、ユダヤ系のドレフュス大尉がドイツのスパイとして終身刑に処せられた。1896年に真犯人が現れるが軍部が隠匿。これに対しゾラや知識人らが弾劾運動を展開し、1898年1月13日付オーロール紙に「J’accuse」(私は告発する)の見出しで、ゾラの大統領あての公開告発状が掲載された。ドレフュス事件の理不尽さを厳しく批判したこの有名な告発状は、国論を二分する政治的大事件となった。1899年にドレフュスは大統領の恩赦により釈放され、1906年に無罪が確定した。2021年10月には、その生涯に敬意を表するドレフュス博物館が開館。マクロン大統領も来訪し「記憶伝承の場」と世界に訴えた。
第76回ベネチア国際映画祭 銀獅子賞(審査員大賞)受賞
ドレフュスの冤罪を証明することになる主人公のピカール中佐も登場当初はユダヤ人であることだけでドレフュスが犯人と決めつけ、官位剥奪式を物見遊山的に見ていました。それが諜報部に栄転し、冤罪の可能性があることに気付き、調査を進めた結果、真犯人を突き止めるのです。しかし、軍上層部はそれを認めず、食い下がるピカールをむしろ左遷してしまう。理不尽で不条理な政治の世界はどこの国も同じようです。
無実の罪で島流しの憂き目にあうドレフュス。アメリカを追われたロマン・ポランスキー監督は「俺は無実だ」とドレフュスに自身を重ねているのかもしれません。(堀)
有名人が意見を表明すると影響は大きく、それまで無視を決め込んでいた権力側が譲歩する、という構図。力のあるなしが人生を決める、そうでない者にはやりきれません。ユダヤ人であることが迫害の理由とは、もとはと言えば宗教のせい?争いを生むのでなく、人の平安のためではなかったのでしょうか。力を持つものが人心を掌握するために便利に使われたくないものです。
実話を元にした作品ですが映画を観るまで接点もなく、観られて良かった…。作品になったことで多くの人に知られるでしょう。古今東西不条理は変らず。
(白)
2019年/フランス・イタリア/仏語/131分/4K1.85ビスタ/カラー/5.1ch
配給:ロングライド
©️2019-LÉGENDAIRE-R.P.PRODUCTIONS-GAUMONT-FRANCE2CINÉMA-FRANCE3CINÉMA-ELISEOCINÉMA-RAICINÉMA
公式サイト:https://longride.jp/officer-spy/
★2022年6月3日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国公開