監督・脚本:加藤拓也
出演者: 木竜麻生、藤原季節、菅野莉央、清水くるみ、森田想、桜田通、山崎紘菜、片岡礼子、石田ひかり、佐戸井けん太
大学でデザインの勉強をしている優実(木竜麻生)には、演劇サークルに所属する直哉(藤原季節)という恋人がいるが、ある日、自分が妊娠していることに気付く。悩みながらも優実は直哉に妊娠と、ある事実を告白する。直哉は将来自分の劇団を持ちたいと願っていた。現実を受け入れようとすればするほどふたりの想いや考えはすれ違っていく…。
女性の気持ちの襞にするっと入り込んで自分の居場所を作ってしまうクズ男を演じさせたら、今、藤原季節の右に出る者はいない。この作品を見て、改めてそれを感じました。ただ前半のクズっぷりに腹が立ったものの、後半になると直哉は直哉なりに優実の妊娠と真剣に向かい合おうとします。直哉の男としての成長を感じ、それまでのクズっぷりも許したくなってしまう。その絶妙な加減も藤原季節だからこそ醸し出せたのではないでしょうか。
一方で、体調が悪くても直哉に食事を作ろうとする健気な優実に初めのうちはたっぷり共感。「酷い男だよねぇ」と気持ち的に寄り添っていましたが、切羽詰まった若い優実には見えないことがたくさんある。段々と「?」が生まれてきます。「いや、そこ、もう少し考えて発言(行動)した方がいいから」と何度言いたくなったことか。でも、それは若さゆえの未熟さなのかも。大人は自分のことを大人とはいいませんものね。ともあれ、優美や直哉を見ているとその場の空気に流されない、節度ある行動の大切さも学べます。ぜひ本作で相手を見極める目を養ってほしいものです。(堀)
この映画を加藤拓也監督は「のぞき見」の感じが出るように作ったとか。カメラとの間にモノがあり、それ越しに見える「日常あるある、恋人あるある感」がたっぷりでした。2人とも若くて、直哉の「ありがたいけど…それ頼んだことあったっけ?」とか、気遣いを「勝手に」と言ってしまう、相手のことを思いやってるようで、自分本位なところが私には「うわー!ダメだ」でした。それは演じている2人が上手いからにほかなりません。こんなにリアルな恋人たちを見せてくれる監督、初の長編なんですね。どんな風に演出されたのか、メイキングがあれば観たいものです。
なかなか自分を出せなかった優美が、直哉に思いのたけをぶつけるラストは長回し。緊張感あふれるこの場面は息をつめて(止めたら死にます、長いので)ご覧ください。(白)
2022年/108分/PG12/日本
配給:ラビットハウス
©2022「わたし達はおとな」製作委員会
公式サイト:https://notheroinemovies.com/otona/
★ 2022年6月10日より全国公開
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