2020年06月12日
なぜ君は総理大臣になれないのか
監督:大島新
衆議院議員・小川淳也(当選 5 期)、49 歳。
衆議院が解散した2003 年10月10日、「国民のためという思いなら誰にも負けない自信がある」と語り、小川淳也は民主党から初出馬することを明らかにした。当時 32 歳。残念ながらこの選挙では当選できなかったが、2005 年に初当選する。2009 年に政権交代を果たすと「日本の政治を自分たちが変えます」と小川は目を輝かせる。保守・リベラル双方の論客から“見所のある若手政治家”と期待されていた。
しかし、2012 年に安倍政権が誕生すると表情は苦悩に満ちていく。党利党益に貢献しないと出世できず、敗者復活の比例当選では立場も弱い。権力への欲望が薄く、家族も「政治家に向いていないのでは」と本音を漏らす。
2017 年の総選挙では、希望の党への合流を決断した前原誠司の最側近として翻弄されていく。小池百合子代表への不信感、前原や地元の盟友・玉木雄一郎への仁義というジレンマの中、苦悩は益々深まる。背水の陣の選挙戦に小川はどのように挑んでいったのか̶。
小川 淳也(おがわ・じゅんや)
1971年香川県高松市生まれ。高松高校・東京大学を経て、1994年自治省(現総務省)に入省。2005年初当選。 民主党→民進党→希望の党を経て無所属。2020年5月現在、立・国・社・無所属フォーラムに属し、国会質疑で注目を集めている。著書に『日本改革原案』など。
32歳の小川淳也さんが決意表明をする直前に監督と話す姿が娘婿に似ていました。(嫁にいった娘の夫を娘婿と表現していいのか、ちょっと躊躇いがありますが、それはさておき)だからよけいに、「自分の息子でなければ普通の家に生まれた若者が政治家を目指すのは応援したいが、自分の息子だと複雑」と語るご両親の言葉にとても共感しました。もしも娘婿が選挙に出るといいだしたら、きっと素直に喜べない。しかし、小川さんのご両親は息子のために電話を掛け、頭を下げる。親ってそういうものなのよね。
そして、もっと大変なのは奥さんです。初めての選挙では就学前の娘2人を抱えながら夫を支えていました。当選を果たせなかったものの、諦めない夫を支え続けた妻の苦労はいかばかりだったでしょう。
また15年近く小川さんを追い続けた作品の中で娘2人はどんどん成長し、やがて「娘です」と襷をかけて、父と一緒に選挙区を自転車で回ります。戦う相手はいつも平井卓也。地元大手メディアのオーナー一族出身で、祖父は参議院副議長、郵政大臣を務め、父は元労働大臣という三世議員。どう見ても戦況は不利。それでも必死に、家族一丸となってがんばり続ける姿に胸が熱くなりました。
(堀)
「なぜ君は総理大臣になれないのか」のタイトルに「足りないものがあるから?」と考えました。当選に必須の「ジバン(地盤)=後援組織」、「カンバン(看板)=知名度」、「カバン(鞄)=資金」の3つのバンは、私でも知っています。小川淳也氏は能力、資質において不足はないように見えます。理想が高く、国民のことを考える、責任感のある人に当選してほしいもの。それが難しい現実に歯噛みしたくなる人は多いでしょう。政治の中枢に近づくほどに人事に絡み取られ、理想と遠くなるって変ですよね?活力バリバリの好青年だった小川氏がやつれていました。ご家族の心情を吐露した言葉に、こちらも思わず「そうそう」とうなずいてしまいました。
選挙にうって出るほどの3バンも気概もない私は、投票だけは棄権したことがありません。そして関心の低さがそのまま表れた投票率に毎回がっくりしています。先人が苦労して獲得した選挙権をきちんと行使して、と切に願っています。いろいろややこしい仕組みや背景がかなりわかりやすいこのドキュメンタリー、これも一面と参考になさってください。(白)
2020年/日本/119分
製作・配給:ネツゲン
©ネツゲン
公式サイト:http://www.nazekimi.com
★6月13日(土)よりポレポレ東中野・ヒューマントラスト有楽町で公開ほか全国順次ロードショー
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