2020年03月07日
ムルゲ 王朝の怪物 原題:물괴(ムルゲ 物怪)
監督:ホ・ジョンホ
出演:キム・ミョンミン、チェ・ウシク、イ・ヘリ(Girl’s Day)、イ・ギョンヨン
朝鮮・中宗22年(1527年)―
国に疫病が蔓延する中、宮廷の背後にそびえる仁王山(イナンサン)に“物怪”(ムルゲ)が現れるという噂が流れる。
ムルゲと遭遇した人間は逃げおおせても疫病にかかり悲惨な死を迎えるという。
民衆が恐怖と混乱に陥る中、それに乗じて11代中宗王の失権を目論む陰謀が密かに計画される。
陰謀の匂いを感じた王は、民衆の不安と朝廷の危機を一掃するため、かつて政争により朝廷から追放された朝鮮国最強の武人・ユン・ギョム(キム・ミョンミン)を呼び戻す。
ユン・ギョムは、長年の同僚であったソン・ハンとずば抜けた弓矢の腕前と医術の知識を持つ愛娘ミョン(イ・ヘリ)、そしてミョンに恋心を抱く優秀なホ宣伝官(チェ・ウシク)、彼らと共に力を失いつつある王と疫病に苦しむ民衆を救うため、物怪(ムルゲ)の棲む仁王山へと向かうのだが。。。
「朝鮮王朝実録」の「中宗の治世中に”物怪”ムルゲ(ムルは”物”、ゲは”奇怪な”という意味)と呼ばれる不可解な存在(あるいは事件)のせいで、宮殿中がパニックに陥り、王が居城からの退去を余儀なくされた」という一節をきっかけにホ・ジョンホ監督が想像を巡らせて作り上げた物語である。
怪物が出ているポスタービジュアルにファンタジー系かと思いきや、監督は宮殿を襲った何らかの惨事か、疫病や自然災害をムルゲに例えた可能性を考えた上で、ムルゲをリアルな生き物として存在させ、政治的な駆け引きに端を発したサスペンス作品に仕上げた。そこに父と娘の思いをも絡ませ、ヒューマンドラマの一面も見せる。
娘に恋心を抱く若者に『パラサイト 半地下の家族』で長男を演じたチェ・ウシク。こんなにイケメンだったとは!(堀)
ホ・ジョンホ監督が、「朝鮮王朝実録」の中からさらに注目したのが、本作の11代中宗王の先王である10代燕山君(ヨンサングン)が宮中に作った調隼坊(ジョジュンバン)という薄暗い一室のこと。燕山君は珍獣を好み、収集した珍獣の檻を調隼坊に置いていたらしい。
監督は、珍獣の交配種として調隼坊で生まれたのが物怪ではないかと想像した次第。映画では、調隼坊も再現。そこに潜んでいた物怪が景福宮を暴れまわる姿がリアルに描かれている。
物怪退治のために、10年ぶりに中宗から呼び戻された元王直属軍隊の長官ユン・ギョムは、まさに正義の人。冒頭、疫病が蔓延する中、庶民を苦しめる悪徳グループに立ち向かう姿も凛々しい。演じたキム・ミョンミンが、2018年度KBS演技大賞を受賞した時の出演ドラマ「私たちが出会った奇跡」をちょうど見終えたばかり。同姓同名のハンサムなエリート銀行マンと醜男だけど心優しい料理人が、交通事故を機に中身が入れ替わるという物語。横暴だった銀行マンが、温厚な男に変貌する様が実に上手い。本作でも物怪に果敢に立ち向かう一方で、娘や庶民に温かく接する男を体現していて素敵だ。(咲)
2018年/韓国映画/105分/カラー/5.1ch/ビスタ
配給:インターフィルム
©2018 CINEGURU KIDARIENT & TAEWON ENTERTAINMENT.All Rights Reserved.
公式サイト:https://muruge.com/
★2020年3月13日(金)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー
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