監督・脚本:内田英治
音楽:渋谷慶一郎
出演:草彅剛、服部樹咲(新人)、田中俊介、吉村界人、真田怜臣、上野鈴華 、佐藤江梨子、 平山祐介、根岸季衣、水川あさみ、田口トモロヲ、真飛 聖
新宿のショーパブ<スイートピー>では、メイクしステージ衣装に身を包み働くトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)。洋子ママ(田口トモロヲ)が白鳥に扮した凪沙、瑞貴、キャンディ、アキナをステージに呼び込むと4人は舞台の上で白鳥の湖を踊り出す。
広島のアパートでは、泥酔した母・早織(水川あさみ)が住人に「何みとんじゃ!ぶちまわすど!」と因縁をつけていた。なだめようとする一果(服部樹咲)を「何生意気言うとるんなあ!あんたのために働いとるんで!」と早織は激しく殴る。
心身の葛藤を抱え生きてきたある日、凪沙の元に、故郷の広島から親戚の娘・一果が預けられる。常に片隅に追いやられてきた凪沙と、孤独の中で生きてきた一果。理解しあえるはずもない二人が出会った時、かつてなかった感情が芽生え始める。
体の性と心の性。そのギャップに苦しみ、悲しみを絞り出すように嗚咽する。そんな主人公・凪沙にとって、トレンチコートは柔な同情から身を守る鎧。襟元をきゅっと引き寄せ、心の内も見せません。その色がある時、真っ赤に変わります。凪沙の決意を感じさせました。草なぎ剛が渾身の演技で挑んでいます。
思い通りにいかない人生に苦しんでいるのは凪沙だけではありません。凪沙が世話をすることになる親戚の娘・一果、彼女を虐待したとされる母親、一果の親友、主人公の仕事仲間、みんなが思い悩んでいます。その葛藤をそれぞれが見事に表現していました。水川あさみが一果の母親を演じましたが、あまりの変貌ぶりに最初は誰が演じているのか、気がつがなかったくらい。
辛いシーンが多いのですが、凪沙が一果からバレエを教わって、2人で「白鳥の湖」を踊るシーンは切ないながらも心が和みます。必見シーンです。
草なぎ剛の代表作になることは間違いありません。擬似親子のような関係を演じた服部樹咲はオーディションでバレエの才能を認められ、ヒロインを射止めました。本作で女優デビューとのこと。演技は初めてながら、堂々と主人公に対峙していました。今後が楽しみです。(堀)
2020年/124分/G/日本
配給:キノフィルムズ
©2020 Midnight Swan Film Partner
公式サイト:https://midnightswan-movie.com/
★2020年9月25日(金)TOHOシネマズ日比谷他全国公開中
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