2020年03月19日
馬三家からの手紙 (原題:Letter from Masanjia)
監督:レオン・リー
撮影:孫毅、マーカス・ファン
出演:孫毅、ジュリー・キース、江天勇ほか
米オレゴン州に住む女性ジュリー・キースがスーパーで購入した「中国製」のハロウィーンの飾りの箱に忍び込まれたSOSの手紙を見つけるところから「馬三家の手紙」は始まる。手紙は政治犯として捉えられた孫毅(スン・イ)が中国で恐怖の城と言われた馬三家(マサンジャ)労働教養所の中で書かれたものだった。8000キロ以上の旅を経てクシャクシャになった紙には、信念のために収監され、拷問・洗脳されている状況が詳細に書かれていた。このメッセージは次々と広まり、中国の労働教養所制度を閉鎖させるまでに至った。しかし、これでストーリーは終わらなかった・・・
孫毅は法輪功と呼ばれる中国の伝統的な健康法である気功を実践していたという理由だけで拘束され、馬三家収容所に収容された。そこで、鉄製の2段ベッドに24時間吊るされたまま、寝られなくなるという凄まじい拷問を受ける。それでも信念を変えない。その強さはいったいどこから来るのだろう。
釈放後も自宅軟禁や嫌がらせを受け、孫毅は中国共産党体制の非人道性を世の中の人に知ってもらおうと決意。それが実って映画となり、こうして日本でも公開される。「中国って怖い」と思うだけでなく、日本がそうならないよう、政治に無意識になってはいけない。(堀)
孫毅が拘束されたのは、法輪功を信奉する人数が増えてきて、政府にとって脅威だからという事情だった。孫毅は、かつて馬三家収容所で書いた手紙が世に出たことで、レオン・リー監督と共に、実態を世に知らせたいと映画にすることを決意したが、さらにそのことが彼の人生に大きな影響を与えた。それを思うと、はたして映画にしたことがよかったのかどうかと思ってしまう。
来る4月4日から公開(6月27日公開に延期されました)のワン・ビン監督の『死霊魂』では、1950年代後半、中国共産党によって突然「反動的な右派」として収容所に送られた人たちのことが綴られている。その中で、員数合わせで拘束されたと語る人もいた。
そして、今、中国ではウィグル族の人たちが思想改造のために収容されている。ただただ宗教や民族が違うだけのことで。
世界では中国のみならず、「政治犯」として拘束される人たちが後を絶たない。政権にとって邪魔な人を排除するという、独裁にとってありがちな行為。犠牲になった方々のことを思うと涙が出る。日本にも自由にモノを言えない時代があったことを思い出す。こんなことも書けなくなる時代に逆戻りしないようにと願う。 (咲)
2018年/カナダ/カラー/76分
配給:グループ現代
©2018 Flying Cloud Productions, Inc.
公式サイト:https://www.masanjia.com/
★2020年3月21日より新宿K's cinemaほか全国順次公開
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