2019年11月23日

台湾、街かどの人形劇 (原題:紅盒子-Father) 

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監修:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
監督:楊力州(ヤン・リージョウ)
出演:陳錫煌(チェン・シーホァン)

台湾の人間国宝で布袋戯(ほていぎ)の人形遣い・陳錫煌は、80歳を超えたいまも世界各国で公演し、多くの人々を魅了している。墨を磨る指先、キセルを燻らす恍惚した人形の表情、ダイナミックで軽やかな大立ち回り、繊細で力強い生命力にあふれた人形たちが、陳錫煌の指先から生み出されていく。 70年代以降、現代風にアレンジされた布袋戯がテレビで人気を博す一方で、伝統的な布袋戯の観客は減少していった。台湾の伝統芸能を継承する為に奔走する陳錫煌の元には、フランス人のルーシーをはじめ多くの弟子が集まっているが、薄れゆく伝承への焦りは日々募る一方だ。 侯孝賢監督映画の常連俳優で、人間国宝であった偉大なる父・李天禄の背中を追いかけ続け、人生の最晩年に至った陳錫煌が、まるで生まれ変わったように、渾身の力を振り絞り、守り伝えようとしている。

台湾の伝統芸能・布袋戲とは布の袋でできた人形を直接手で持ったり、指を中に入れたりして操る劇。台湾の民間芸能のひとつ。この作品で初めて見たが、その細やかな動きに驚く。人形が手に持っている扇子を開いたりするのだ。まるで人形が自ら意志を持ってうごいているかのよう。そのためには日々の修練とともに日ごろから人形を大事に手入れする。自分の人形への深い愛情が伝わってきた。
親子二代で人間国宝である人形師陳錫煌(チェン・シーホァン)は長男が母の姓を継ぐ風習をきっかけに師である父・李天禄(リ・ティエンルー)との間に軋轢が生じた。大きすぎる父の名。いくつになっても超えられない葛藤。自らの老い。伝統が廃れる不安。芸を記録に残さなければという気迫に満ちたラストに布袋戲に掛けてきた人生の重みを感じる。(堀)


台湾の街かどの人形劇「布袋戲」(台湾語で「ほてひ」と呼ばないと味わいがない)のことを知ったのは、侯孝賢監督の『戯夢人生』(1993年製作)を通じてのことでした。
侯孝賢監督の前作『悲情城市』(1989年製作、日本公開1990年4月21日)は、日本統治が終わった日から、大陸からやってきた国民党が台北を臨時首都にするまでの混乱の時期を林家の4兄弟を通じて描いた物語。その林家の父親を演じて、独特の存在感を放っていた李天祿さん。
『恋恋風塵』(1987製作、日本公開1989年11月11日)や、『ナイルの娘』(1987年製作、日本公開 1990年8月18日)にも出演していた、ひょうひょうとしたお爺さんが、実は布袋戲の名手であることを知ったのが『戯夢人生』でした。台湾の日本統治時代1985年から1945年までの50年間の歴史を、李天祿さんの人生を通じて描いた作品。この映画のヒットで、布袋戲といえば李天祿という図式が出来上がってしまい、息子の陳錫煌さんも父に続いて人間国宝となったにもかかわらず、いつまでたっても影が薄いというのが実情なのでしょう。有名になり過ぎた父を超えられない苦悩を、『台湾、街かどの人形劇』は、ひしひしと伝えてくれました。
一方で、伝統芸能を絶やしてはいけないという陳錫煌さんの思いもずっしり。何より指使いの美しさに惚れ惚れしました。
ちなみに、布袋戲の舞台が早稲田大学の演劇博物館にありました。確か3階の廊下。今もあるのでしょうか?(咲)


2018年/台湾/カラー/ DCP/5.1ch/99分
配給:太秦
(C) Backstage Studio Co., Ltd.
公式サイト:http://machikado2019.com/
★2019年2019年11月30日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 15:20| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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