2021年06月05日

ベル・エポックでもう一度 (原題:La Belle Epoque)

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監督・脚本・音楽:ニコラ・ブドス
出演:ダニエル・オートゥイユ、ギヨーム・カネ、ドリア・ティリエ、ファニー・アルダン

かつては売れっ子イラストレーターだったヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)は何もかもがデジタル化された社会についていけず、今では仕事を解雇され、妻のマリアンヌ(ファニー・アルダン)にも見放されてしまった。冴えない毎日を送る父を元気づけようと考えた息子は友人のアントワーヌ(ギヨーム・カネ)が始めた〈タイムトラベルサービス〉をプレゼントする。映画製作を応用して客の戻りたい過去を広大なセットに再現する、体験型のエンターテイメントサービスだった。
ヴィクトルが「運命の女性と出会った1974年のリヨンに戻りたい」とリクエストすると、セットにはあの日のすべてが蘇っていた。用意された70年代ファッションに着替え、想い出のカフェで、アントワーヌの恋人で女優のマルゴ(ドリア・ティリエ)が演じる〈運命の女性〉と出会う。ヴィクトルは幸せだった日々を再体験し、見違えるほどイキイキし、唯一にして全財産である別荘まで妻に内緒で売り払い、タイムトラベルサービスのさらなる延長に注ぎ込む。
だが、ある時突然マルゴが降板し、別の女優が現れる。ヴィクトルの楽しい〈再体験〉は、マルゴとアントワーヌの関係にも“ある変化”を与えたのだ。果たして、〈タイムトラベルサービス〉に用意された驚きのエンディングとは?

風刺画を描いてきたヴィクトルの旺盛な批判精神も歳を取った今は世の中の進歩から取り残された愚痴にしか聞こえない。一方、妻のマリアンヌはカウンセラーで、ネットでのカウンセリングを取り入れるなどヴィクトルとは対照的な仕事ぶりが冒頭の会食シーンで話題になる。2人のすれ違いがはっきりと伝わってきた。そして、とうとうマリアンヌの不満が爆発して、ヴィクトルは追い出されてしまう。
しかし、息子からプレゼントされた〈タイムトラベルサービス〉にハマったヴィクトルはその費用を稼ぐため別荘を売るだけでなく、息子の会社の仕事を受けるように。俄然、活き活きとしてくる。人間にとって働く目的は生きる糧になるのだ。ヴィクトルとマリアンヌの関係にも変化が見えてくる。
熟年夫婦の離婚騒動は最近よく取り上げられる。木下グループの作品で先週公開になった『幸せの答え合わせ』も描かれるのは夫婦の離婚で、家族構成も熟年夫婦と1人息子で一緒。しかし、夫婦が辿りつく先が大分違う。どちらがいいかは人それぞれだが、悔いのない人生を送りたいものだ。(堀)


かけがえのない過去の1日、あるいは一時期を再体験できるという「タイムトラベルサービス」。さて、私ならいつを?と、映画を観ながら、誰しもが思い巡らすことと思います。ヴィクトルは、今は険悪な関係になってしまった妻マリアンヌと出会った日を選びます。あの輝かしい日から再スタートしたいという思いも、もちろんチラリ。人生、やり直しが出来ないからこそ、過去の様々な経験があって、今があることを再認識させられた映画でした。

冒頭、ネット配信用に〈タイムトラベルサービス〉が演出したドラマが映し出されます。このサービスを始めたアントワーヌが、いかに時代考証の正確さにこだわって いるかを示すために入れられた場面。
19世紀のシャトーでのディナー風景なのですが、アラブ人と黒人をさげすんだ時代ながら、ムスリムもユダヤも一緒にテーブルを囲んでいるという風刺のこもったもの。
また、ヴィクトルが選んだ1974年という年代について、「昔(1970年代)はシンプルだった。金持ちと貧乏人、右派と左派・・・といった具合に。経済を気にせず、移民を守り、宗教の対立も少なく、テーブルに携帯もなかった・・・」という言葉が出てきます。
今や、目の前に座っている人よりも携帯の向こうにいる人を気にして食事をするような時代。社会も複雑になって、融和という言葉が遠のいていることも感じさせてくれた映画です。(咲)


SFのタイムトラベルでなく、こういう「時を越える」方法もありか!と目を開かされました。しかし、なんとも贅沢で、庶民には手が届かないのが残念なところ。ヴィクトルのように作りものだと知りながらハマれば、ギャンブルなみに財産もなげうつことになってしまいます。なんと罪作りなこと。目がさめたならば高い授業料を払ったと思えばいいのかも。
いくら希望の舞台に上がらせてもらっても、自分が変わらなければ夢を見ているのと同じです。私は映画を観ているほうがいいなぁ。まずはこの映画で、追体験をば。(白)


2019年/115分/R15+/フランス・ベルギー合作
配給:キノフィルムズ
©2019 - LES FILMS DU KIOSQUE - PATHÉ FILMS - ORANGE STUDIO - FRANCE 2 CINÉMA - HUGAR PROD – FILS - UMEDIA
公式サイト:https://www.lbe-movie.jp/
★2021年6月12日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国公開

posted by ほりきみき at 21:31| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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