監督:トマス・ヴィンターベア
出演:マティアス・スーナールツ、レア・セドゥ、マックス・フォン・シドー、コリン・ファース
乗艦員118名を乗せた原子力潜水艦クルスクは軍事演習のため出航するのだが、艦内の魚雷が突然暴発、凄まじい炎が艦内を駆け巡る。次々と命を落とす惨状に直面したミハイル(マティアス・スーナールツ)は、爆発が起きた区画の封鎖を指示し、部下と安全な艦尾へ退避を始めるが、艦体は北極海の海底まで沈没し、わずか23名だけが生き残った。
海中の異変を察知した英国の海軍准将デイビッド(コリン・ファース)は救援を表明するが、ロシア政府は沈没事故の原因は他国船との衝突にあると主張し、軍事機密であるクルスクには近寄らせようとしない。乗組員の命よりも国家の威信を優先する政府の態度に、ターニャ(レア・セドゥ)たち家族は怒りを露わに抗議する。酸素が徐々に尽きていく中、果たして愛する家族のもとへ帰る事はできるのだろうか──
2000年にロシアで実際に起きた未曾有の原子力潜水艦事故の映画化です。当時、ニュースをご覧になっていて事故のことを覚えていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、もしご存じなければ調べないまま、ご覧ください。登場人物たちの喜びや希望、悲しみ、絶望、怒りがストレートに伝わってきます。
作品では事故そのものだけでなく、乗組員たちのそれまでの状況にも触れ、海軍でありながら陸での生活が長く、海上での経験が圧倒的に少なかったことが描かれていました。それでも海軍としての絆は強く、海底に沈んだ艦内で生き残った者たちが支え合う様子に胸が締め付けられます。
一方で機密にこだわる政府の対応は本当に腹立たしい。「国を守る」といったときの「国」とはいったい何を意味するのでしょうか。主人公の息子が海軍の高官に対して取った、胸をすくような行動がそれを代弁しています。プーチン大統領があのとき、どこで何をしていたのかにも触れた製作側に勇気に頭が下がります。
ところで、主人公の司令官ミハイルの妻をレア・セドゥが演じていますが、自身も出産を経験した直後に初めての母親役に挑みました。『アデル、ブルーは熱い色』でカンヌ映画祭史上初となる出演女優としてのパルム・ドール受賞を果たしたころに比べて、すっかりたくましくなっています。(堀)
救助がもう少し早かったら父親は助かったかもしれないのに、国の威信がそれを阻んだと知った時の、妻や子どもたちの思いに涙でした。
冒頭、水に潜る少年ミーシャ。腕時計をした父の腕が映ります。防水の腕時計。
「57秒潜れたよ!」と頭をあげるミーシャ。実は家のバスタブ。
父ミハイルは、潜水艦の乗艦員。
出航前に、乗艦員仲間の結婚式が行われます。披露宴のために、お酒を調達しにいくミハイルたち。ウォッカだけでなくシャンパンも揃えるためには、用意したお金では足りなくて、腕時計を差し出します。この腕時計の辿ったドラマにも涙です・・・ (咲)
2018年/ルクセンブルク/英語/117分/カラー/シネスコ/5.1ch
配給:キノシネマ
© 2018 EUROPACORP
公式サイト:https://movie.kinocinema.jp/works/kursk
★4月8日より kino cinéma横浜みなとみらい他にて全国順次公開
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