2020年01月25日

愛国者に気をつけろ!鈴木邦男

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製作・監督・撮影・編集:中村真夕
出演:鈴木邦男、雨宮処凛、蓮池透、足立正生、木村三浩、松本麗華、上祐史浩他。

生長の家の信者の家に育ち、早稲田大学では左翼と闘った生粋の右翼活動家・鈴木邦男。17歳の時、愛国党党員だった山口二矢が、当時の社会党党首を刺殺する映像に衝撃を受け、「愛国」に身を捧げることに目覚めた。大学時代には、今の日本会議の前身となる全国学協の代表にまで登りつめるが、まもなく失墜する。
その後、自らが右翼運動に引き入れた早稲田大学の後輩、森田必勝が25歳の若さで三島由紀夫と自決したことに衝撃を受け、政治団体・一水会を立ち上げる。政治的・思想的な挫折と葛藤を繰り返す中で見えてきたのは、自らが訴えてきた「愛と正義」、「愛国心」でさえも疑い、そして異なる意見や価値観を持つ人たちの言葉に耳を傾けることだった。数奇な運命を生き抜いてきた鈴木邦男の素顔に密着したドキュメンタリー映画。

愛国を掲げる政治活動家が挫折と葛藤を経て、考え方を大きく変える。その思想の変遷から集団で正義を主張することの危うさに気付き、他者の声に耳を傾けるようになった。基盤になる考え方に共感するかどうかはすぐに答えは出せないが、この姿勢は共感できる。
作家の雨宮処凛、元「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」副代表の蓮池透、元日本赤軍メンバーで映画監督の足立正生、元オウム真理教教祖・麻原彰晃の三女である松本麗華、元オウムの上祐史浩といった人たちとも価値観の違いを超えて交流し、彼らが鈴木の印象を語る。懐の深さに慕う者も多いというが、分かる気がした。独身を貫いた理由に納得するものの、老いを迎えた、これからの鈴木の生活が心配になってしまう。‬(堀)


中村真夕監督は、ニューヨーク大学大学院で映画を学び、2006年、『ハリヨの夏』(主演:高良健吾、於保佐代子、柄本明、風吹ジュン)で監督デビュー。ドキュメンタリー映画『ナオトひとりっきり』(2015年)のトークゲストとして鈴木邦男さんに登壇してもらったことをきっかけに、彼に興味を持ち、2年間にわたって密着取材して作り上げたのが本作。長年右翼として活動してきた鈴木邦男さんが、右翼左翼問わず様々な人たちと親交のある稀有な人物であることを映し出している。
安保闘争で熱く闘った60年代70年代、右翼として活動していた鈴木邦男さん。よもや対決していた左翼の人たちと親しくすることになろうなどと想像してなかったのではないだろうか。
先日、大学の同窓会でお会いした70年代の学生運動を経験した方から、今でも当時考え方が違った人たちとはわだかまりがあって、同期全体の集まりは成立しないと聞いたばかり。世の中、政治的信条や宗教を越えて様々な人と交流する鈴木邦男さんのような人ばかりならと、ふと思う。(咲)


ドキュメンタリー映画が好きでよく観るけど、沖縄のこととか原発のこととか、社会派の作品で、時々鈴木邦男さんが映画プログラムに書いていたり、トークゲストだったりすることがあるのをみかけて、最初のころ「なぜ?」と不思議な感じがしたし違和感を感じていた。社会派で左翼系の作品に右翼の人がなぜ?協力しているんだろうと思った。でも考えてみれば、左翼も右翼も日本の今の政治を憂い、日本を少しでもよい方向に持って行きたいという思いは同じ。方法や考え方が違うだけともいえる。反発しあっていては、世の中変えていく力になっていかないという考え方から参加しているのかもしれない。今や鈴木邦男さんがそういう作品のトークとか参加するというのを見ても違和感を感じなくなった。そして、こういう人がいるというのにちょっと救いを感じる。しかし、このドキュメンタリーに出てきた若い女性たちのことは名前は知っているけど、どういう活動をしている人たちなのかよく知らず、鈴木邦男さんとの交流に興味を持った(暁)。

78分/HD/カラー/2019年
配給:オンファロスピクチャーズ
©オンファロスピクチャーズ
公式サイト:http://kuniosuzuki.com/
★2020年2月1日(土)ポレポレ東中野ほか全国順次公開

<ポレポレ東中野での上映後トーク予定>
2/1(土)  武田砂鉄 (ライター) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/2(日)  白井聡 (政治学者) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/3(月)  雨宮処凛(作家・活動家) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/5(水)  瀬々敬久(映画監督) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/6(木)  寺脇研 (元官僚・映画活動家)中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/7(金) 栗原康(政治学者) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/8(土)  香山リカ (精神科医) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/9(日) 金平茂紀 (TVジャーナリスト) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/10(月)  松本麗華 (カウンセラー) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/11(火)  内田樹(神戸女学院大学名誉教授・凱風館館長) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/12(水)  ジャン・ユンカーマン(映画監督) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/13(木)  足立正生(映画監督) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)
2/14(金)  上祐史浩(ひかりの輪代表) 中村真夕(監督)鈴木邦男(予定)

※鈴木邦男さんの登壇に関して
現在、鈴木さんは病気療養中の為、本映画のトークイベントへの登壇はすべて予定となっています。
参加の可否は病状の推移をみて判断し、公式HP、SNS等で告知されます。
また、鈴木さんが出席できなくとも、中村真夕監督とゲストでトークは行います。その点、予めご了承おきください。

posted by ほりきみき at 19:39| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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