2020年11月20日
ホモ・サピエンスの涙(英題:ABOUT ENDLESSNESS/原題:OM DET OÄNDLIGA)
監督・脚本:ロイ・アンダーソン
撮影:ゲルゲイ・パロス
出演:マッティン・サーネル、タティアーナ・デローナイ、アンデシュ・ヘルストルム
銀行が信じられず貯めたお金をベッドに隠している男性。この世に絶望し、信じるものを失った牧師。戦禍に見舞われた街を上空から眺めるカップル。映像の魔術師ロイ・アンダーソン監督が構図・色彩・美術と細部まで徹底的にこだわり、全33シーンすべてをワンシーンワンカットで撮影。悲しみと喜びを繰り返す人類の姿を、愛と希望を込めた優しい視点で映し出す。
第76回ヴェネチア国際映画祭 銀獅子賞(最優秀監督賞)
学生時代の友人に無視された男性、神を見失った牧師、診療を放棄した歯科医は複数シーンに登場しますが、基本的には繋がりのない人たちの人生のワンシーンを切り取って繋げた76分。どのシーンの登場人物も何か問題を抱えており、カメラはそれを一歩引いた視点で淡々と映し出します。
軍隊の行進シーン以外はすべて監督が所有する巨大な制作スタジオ〈Studio24〉で、一からセットを組み、撮影されました。ミニチュアの建物やマットペイント(背景画)を多用し、アナログにこだわった手法がとられています。雨の中で父親が子供の靴紐を結ぶシーンも屋外ではなく、スタジオ内で撮られたそう! 180 メートルのプラスチックパイプに1万5千個の穴を開けて雨を降らせ、雨の降る土の地面にも、雨が不規則に降り落ちで出来た雨跡をペイントで表現したというから驚きです。
(メイキング映像はこちらでご覧になれます)
https://www.youtube.com/watch?v=q12oZ9mQ-BM
また、いくつかの絵画に影響を受けており、マルク・シャガールの「街の上で」、ククルイニクスイの「The end」、イリヤ・レーピンの「1581年11月16日のイワン雷帝とその息子イワン」は構図がそっくりのシーンがあるので、比較してみるとおもしろいでしょう。(堀)
ロイ・アンダーソン監督の綴る不思議世界。でも、一つ一つのエピソードが、世界のどこかで今もありそうだったり、誰かが夢で見ていそうだったり、自分にも思い当たるものだったりします。中には突拍子のない話もあるのですが、それも人間?!
原題にある“oändliga(無限)”は、人間の存在についての“果てしなさ”を示しているのだそうです。生きていれば、喜怒哀楽さまざまなことが降りかかってきます。絶望から立ち上がることが出来そうになくても、長い道の先には光が見えると信じたいのが人間でしょうか・・・ (咲)
2019年/スウェーデン=ドイツ=ノルウェー/カラー/76分/ビスタ
配給:ビターズ・エンド
©Studio 24
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/homosapi
★2020年11月20日(金)ロードショー
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