脚本:加藤阿礼、椎名 勳、瀧澤正治
撮影:佐々木 秀夫、伊集 守忠
照明:磯野 雅宏
音楽:まついえつこ
音響効果:帆苅 幸雄
編集:白石 悟
出演:川北のん、吉本実憂、中島ひろ子、冨樫真、小林綾子、小林幸子(特別出演) 、本田博太郎、国広富之、田中健、寺田農、綿引勝彦、左時枝、渡辺美佐子
語り部:奈良岡朋子
生後3ヶ月で失明したハルは2歳のとき父と死別し、7歳で瞽女になる。するとそれまで優しかった母トメが子を思う深い愛情ゆえ、心を鬼にしてハルを厳しく躾けた。母親の本心に気がつかないまま、ハルは8歳でフジ親方と共に初めて巡業の旅に出る。その年、病が悪化してトメはこの世を去ったが、ハルは自分を虐めた鬼である母親に涙一つ流さなかった。苛酷な瞽女人生の中でハルは意地悪なフジ親方からは瞽女として生き抜く力を、サワ親方からは瞽女の心を授かる。
こうして様々な困難を経て親方になったハルは初めて幼い弟子ハナヨを向かい入れる、何も知らないハナヨを瞽女として生きていける様にとハルは厳しく躾をした時、自分が幼い頃、母から鬼のように厳しく躾けられる姿が走馬灯のように浮かび上がった。ハルはようやく自分を愛してくれた母親の慈愛の深さに気づき、感謝の涙を流すのだった。
瞽女(ごぜ)
親しく「瞽女さん」と呼ばれ、三味線を奏で、語り物などを唄いながら、各地を門付けして歩く「盲目の女旅芸人」のこと。幼い頃から親方と呼ばれる師匠に預けられ、瞽女として生きてゆくために厳しく芸を仕込まれます。視力の残った手引きを先頭に、3~4人が一組となって師匠から弟子の順に前の人の肩の荷に左手を触れて動きを知り、右手に持った杖で足元を確認して歩き、各地を回って瞽女唄を聞かせます。
江戸時代まで全国各地に瞽女が存在したといわれています。瞽女たちの手によって津軽三味線の素地が伝えられ、信濃追分の馬子唄が順次伝播されて江差や松前追分に転化するなど民謡の伝播者としても大きな役割を残しました。明治期に越後・新潟にだけ残り長岡地区と上越高田地区の二つの集団が生まれました。
瞽女のことをこの作品で知りました。タイトルの漢字を見ても、実は読めなくて、この記事を書くときにWordで「ごぜ」と打っても出てこなくて、四苦八苦しました。それだけ瞽女を知らない人が多くなってしまったということなのでしょう。
冬、雪の中を素足で草履をはいて歩く姿に、思わず自分の足を摩ってしまいます。しかし、彼女たちの巡業を楽しみにしていた人たちがたくさんいたことが作品から伝わってきました。娯楽の多い現代と違い、当時は他に楽しみがなかったのですね。
子ども時代のハルを演じた川北のんさんの目が見えない演技が素晴らしく、特に針に糸を通す練習している姿は涙を誘います。そして、子どもを愛するがゆえに、鬼になる葛藤を母を演じた中島ひろ子さんが見事に表現しました。
ハルは2人の親方と巡業の旅に出ました。最初の親方は意地悪で辛い思いをしますが、瞽女として生き抜く術を学びます。次の親方は優しい人で瞽女としての心を授かりました。ハルはそのことを「いい人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」と振り返ります。謙虚な心持ちは私たちにも通じることかもしれません。(堀)
2005年4月、105歳で亡くなった最後の瞽女・小林ハルさんの半生を映画化した作品です。目が見えないので一生人の世話になるから、と厳しく躾けられ、口答えをせずどんな理不尽なことにも耐えて生きてきたハルさん。それをいいことに酷い仕打ちをしてきた人がいました。辛苦を味わってきた半分までが映画に描かれています。その後も決して楽にならず、人の何倍も過酷な目に遭います。
人間ってもっといいもので、真面目に務めていれば報われると思いたかっただろうに、ハルさんが幸せと言える日はずっと先なのでした。映画をきっかけに、瞽女、を知ったなら本や音源、動画も遺されていますので、手にとってみてください。
吉本実憂さんは、『レディ in ホワイト』(18)など、めげない強気の役の印象があります。それとは全く反対の、何もかも受け入れるハルさんを三味線や瞽女唄の特訓をして演じました。初めて観て泣いた自分の出演作品だそうです。ラストでハルさんが口にする一言が胸をうちました。(白)
2019年/109分/G/日本
配給:エムエフピクチャーズ
©2020映画 瞽女GOZE製作委員会
公式サイト:https://goze-movie.com/
★2020年10月23日(金)公開
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