監督:フェリックス・チョン
出演:チョウ・ユンファ、アーロン・クォック、チャン・ジンチュー
タイの刑務所から香港警察に身柄を引き渡されたレイ・マン(アーロン・クォック)は世界を震撼させた国際的偽札製造集団のメンバーだった。4つの事件に関する容疑で取り調べを受けるが、そこにレイの友人を名乗る国宝級の女性画家ユン・マン(チャン・ジンチュー)が現れる。
レイの保釈を求める彼女に対し、捜査の指揮を執るホー警部補(キャサリン・チャウ)は今も行方不明となっているチームの首領“画家”(チョウ・ユンファ)について話すことを要求。レイは冷酷無比な“画家”の報復に怯えながら、自身の“過去”を語り始めた。
舞台は、1990年代のカナダへと転じる。貧しい画家だったレイは恋人と将来に希望を託すが、なかなか認められない。こっそり絵画の偽造に着手すると、“画家”と名乗る男に贋作の腕を認められ、彼が運営する偽札組織にスカウトされる。
数奇な物語がレイの口から語られたとき、“画家”がふたたび姿を現し、衝撃の真実が明らかになる。
贋札とは偽札のこと。前半はそのテクニックを余すところなく披露。フェリックス・チョン監督はこんなに危ない知識をどうやって調べたのか、作品の本筋ではないところまで気になってしまいました。
中盤からはガンアクションが炸裂。この辺りはシネジャの他の方々がお詳しいので、私からは迫力満点とのみお伝えします。
そして、クライマックスの謎解きでは「えぇぇぇ~!」を何度叫んだことでしょう。張り巡らされた伏線にここで初めて気がつき、それが一気に回収させた監督の脚本家としての手腕に脱帽です。実は1回、見ただけではすべてを理解できず、いろんな方々と作品について語り合いました。映画を見て楽しむだけでなく、誰かと共有する楽しみもある作品です。
香港と中国でメガヒットとなり、第38回香港電影金像奨(香港アカデミー賞)で最多となる計17部門にノミネートされ、最優秀作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞・編集賞・美術デザイン・衣装デザインの計7部門を受賞。すでに韓国でのリメイクが決定しています。
日本では2018年の東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門で上映されたが、チケットはすぐに完売。チョウ・ユンファ、そして“舞王(ダンス王)”の異名を持ち、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、レオン・ライとともに“香港四大天王”と呼ばれるアーロン・クォックの人気のほどがうかがえますね。(堀)
フェリックス・チョン監督
2018年のTIFFで観ました。久々にユンファが戻ってきた!と大喜びしました。それも監督がまだキャスティングに悩んでいるときに、アーロンがユンファの名前をあげて、すぐに連絡を取ってくれたと聞いて嬉しさ倍増でした(2018年10月26日のスタッフ日記)。『男たちの挽歌』(1986)のマークが、『狼 男たちの挽歌・最終章』(1990)のジェフリーが年月を経て現れたかのような姿に、懐かしさでいっぱいになったのは私だけではないでしょう。アクションシーンもほぼ自らこなし、替身(スタント)は1シーンのみだったとか。怪我が心配だからもっと替わってもらって良かったのに…無事でよかった。
映画はペンのアップで始まります。青いインクが描いていく図案が美しく、じっくり見入ってしまいました。目をこらしても下書きが見えません。偽札作りの工程が詳しくて、『ヒトラーの贋札』(2006)を思い出しました。ナチスがユダヤ人強制収容所でイギリスのポンド紙幣を贋造した史実「ベルンハルト作戦」を事細かに描いたものです。手間暇かけた割に儲からないのが常とは限らず、戦争で混乱していた上、その確かな技術で流通した5ポンド札の1割を占めていたとか。日本でも実際にあった事件を元にした木村祐一の初監督作品『ニセ札』(2009)があります。
タイトルのグーテンベルクは15世紀半ばに活版印刷技術を発明したドイツ人。金属の活字を作って自ら印刷や出版をしましたが、紙幣は作っていません(1661年ストックホルム銀行が発行したのが世界初だそうです)。印刷技術が優れているということで名付けたの?(白)
2018年/香港・中国/広東語、北京語/カラー/130分/PG-12
配給:東映ビデオ
©2018 Bona Entertainment Company Limited
公式サイト:http://www.gansatsuou.com/
★2020年2月7日(金)より新宿武蔵野館などを皮切りに全国順次公開