2020年05月13日

ハウス・イン・ザ・フィールズ(原題: TIGM N IGREN)

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監督・撮影:タラ・ハディド
字幕翻訳:松岡葉子
出演:カディジャ・エルグナド、ファティマ・エルグナドほか

秋、収穫の季節には畑仕事をして、森でイチヂクを摘む。冬、厳しい寒さの中、火の周りで身を寄せ合う。春、アーモンドやりんごの花が咲き、世界がふたたび色づく。夏、緑と太陽の光あふれる美しい季節の中、ラマダンが明け、盛大な宴が始まる
弁護士を夢見る少女カディジャとその姉のファティマは、モロッコの山奥で暮らすアマジグ族の姉妹。自然の恩恵を受け、数百年もの間ほとんど変わらない生活を送っている。そんな日々の中、ファティマが学校を辞め、結婚することになる。カディジャは、大好きな姉と離ればなれになってしまう寂しさ、そして自分も姉のように学校を卒業できないかもしれないという不安を募らせていく。

本作は、アトラス山脈の四季折々の自然風景と、彼女たちの慎ましくも美しい日々の営みをありのままに記録したドキュメンタリー。第67回ベルリン国際映画祭フォーラム部門最優秀ドキュメンタリー賞にノミネート他、世界の映画祭に出品され話題を呼んだ。
監督は、世界的建築家ザハ・ハディドを叔母に持ち、写真家としても活躍するタラ・ハディド。本作の製作にあたり、5年にわたって現地に通いアマジグ族と寝食をともにしている。被写体に寄り添った親密な映像は、なくなりつつある生活様式や文化を記録しながら、人々の内なる想いをも紡いでいく。

作品冒頭でカディジャは「母親が家族の中でいちばん早く起きて家事をする」と紹介する。どこの国も朝の風景は変わらないらしい。自然が息づく環境で、昔ながらの生活。家事労働は大変だろう。一方の父親はかつてフランスやドイツに出稼ぎに行っていたようだが、いろいろ苦労した末に帰国し、もう30年以上、国外に出たことはないという。作品の中ではいつもどっしり座って何もしない。
しかし、確実に変化は生じている。姉は親の決めた相手と結婚するため学校をやめた。女に教育はいらないということか。「夏になったら女になる」とつぶやく姉から未知の世界への不安が伝わってくる。それでも結婚したら、彼の村には住まず、カサブランカへ行って働きたいと語る。妹は男女平等で、女も法律で仕事をすることが認められているといい、学校に通って弁護士を目指す。姉に古い価値観からの過渡期を感じ、妹はその先にある新しい文化の象徴に見えた。嫁いだ姉を想い、残された寂しさに震える妹が切ない。(堀)


アマジグ族というとピンとこないかもしれませんが、蔑称で、ベルベルと呼ばれてきた人たちのこと。フェニキアやローマやアラブが北アフリカに侵攻する前から、暮らしていた人たち。
映画では、冒頭からティフィナグ文字で書かれたアマジグ語を目にすることができます。
会話の中で、国王令で男女同権をうたっていることが語られます。姉は「結婚は義務だから」と、親の決めた結婚を受け入れます。(クルアーンに結婚はすべきものと書かれています) 一方で、結婚したら夫と共に都会で暮らして働きたいと妹に語ります。 「男が変化をいやがって反対デモをしたニュースを見た」という言葉もあって、国王が男女同権を進めようとしても、なかなかそうはいかない現実も垣間見られます。
なお、アマジグ語や、モロッコの現国王のことなどについて、スタッフ日記に書きました。
http://cinemajournal.seesaa.net/article/475143091.html
味わい深いドキュメンタリー、ぜひいち早くオンラインでどうぞ! (咲)



2017年/モロッコ、カタール/アマジグ語/1:1.85/86分
配給:アップリンク
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/fields/
配信期間:5月1日(金)〜5月28日(木)/価格:1900円(税込み)/視聴期間:2日間
★オンライン配信にて緊急公開中
2020年アップリンク渋谷、吉祥寺ほか全国劇場にて公開予定



posted by ほりきみき at 11:49| Comment(0) | モロッコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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