2022年07月24日

1640日の家族(原題:La vraie famille 英題: The Family)

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監督・脚本:ファビアン・ゴルジュアール
出演:メラニー・ティエリー、リエ・サレム、フェリックス・モアティ、ガブリエル・パヴィ

生後18ヶ月のシモンを受け入れた里親のアンナと夫のドリス。2人の息子とは兄弟のように育ち、幸せな4年半が過ぎようとしていた。ところが、実父のエディからシモンを手元で育てたいと申し出が…。突然訪れた“家族”でいられるタイムリミットに、彼らが選んだ未来とはー。

複数の家族が一緒に休暇を楽しむ冒頭シーンから、3人の子どもに恵まれた幸せな家族の話と思いきや、里子を受け入れた女性の葛藤を描いた作品だった。本作はファビアン・ゴルジュアール監督の少年時代の体験がベースにある。映画と同じように、生後18ヶ月の里子を両親が迎え入れ、6歳まで一緒に暮らしたという。
フランスでは里親は職業の1つ。300時間の研修受講を受けると国家資格が与えられ、子どもの養育に必要な費用とは別に18万5000円の給与が支給され、有給休暇もある。子どもへの支援がとてもシステマティックに行われており、実子同様に育てていても、実親の養育が可能になれば返さなくてはならない。
本作でもアンナとシモンは実の親子同様の絆を結んでいたが、実父の申し出から別れのときが見えてくる。“プロの里親として、どう振る舞うべきか”はわかっているが、感情はそれに伴わない。「アンナをママと呼ばないように」という実父の気持ちは理解できる。彼にとってシモンのママは亡くなった妻なのだから。しかし、これまで実母同様の愛情を注ぎ、ママと呼ばれてきたアンナにとっては受け入れがたいことだろう。アンナは自分らしさを失っていく。子どもを育てたことがある身にはアンナの辛さが手に取るようにわかるに違いない。監督の母が初めて里親となったとき、ソーシャルワーカーから受けた「この子を愛しなさい、でも愛し過ぎないように」というアドバイスが胸に悲しく響く。
アンナとシモンの関係はどうなるのか。アンナの夫や実子たちはそれをどう見つめ、支えるのか。感涙必至のラストだが、家族の絆に希望が感じられる。(堀)


シモンがとても可愛くて、こんな子と別れなきゃならないなんて、アンナならずとも泣きの涙だわと、もらい泣きしつつ観ました。初めての映画出演だというガブリエル・パヴィ君、少しも演技臭いところがありません。演技体験などなく、遊んでいた公園で声をかけられて出演することになったそうです。監督は脇を固めて自然な表情待ちの演出?
里親が職業だというのに、ほ~。実父のエディが里親に対してなんだかよそよそしい感じがしたのは、報酬をもらっているプロだろうという意識があるせいなんでしょうか? アンナは我が子同様に愛してきたので、別れは身を切られるように辛いというのに。
日本にも里親制度はありますが、フランスとは大きく違います。子ども中心に多くの大人が関わるフランス、ソーシャルワーカーたちの声が上へと届くボトムアップ方式です。日本では親の権利が強くて、ソーシャルワーカーが圧倒的に少なく、現場からでなく上からのトップダウン。社会福祉制度があっても知らない人も多く、その周知も遅れています。何でも申請が先、実行まで時間もかかります。少子化を嘆くだけでなく、公的支援を厚くして、子どもを育てやすい環境をつくることが先です。里親についても経済的サポートも研修もあることを知れば、もっと里親になる人が増えて乳幼児が家庭で成長できるんじゃないかなあ。フランス映画を観ながら、日本の足りないところを考えさせられました。(白)


2021年/フランス/仏語/102分/1.85ビスタ/5.1ch
配給:ロングライド
©︎ 2021 Deuxième Ligne Films - Petit Film All rights reserved.
公式サイト:https://longride.jp/family/
★2022年7月29日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
posted by ほりきみき at 02:08| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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