2019年12月08日

エッシャー 視覚の魔術師 (原題:M.C. Escher - Het oneindige zoeken)

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監督・撮影・製作:ロビン・ルッツ
脚本:ロビン・ルッツ、マラインケ・デ・ヨンケ
ナレーション:スティーヴン・フライ
登場人物:グラハム・ナッシュ(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)、ジョージ・エッシャー、ヤン・エッシャー、リーベス・エッシャー

「トリックアート(だまし絵)」で知られるオランダ人版画家・画家のマウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898年~1972年)の人生を日記、1000を超える書簡、家族へのインタビュー、収集家の証言などを手掛かりに、創作の足跡を丹念に辿り、その創造力の源泉を探る。さらに、3Dアニメーションを用いて、エッシャーがどのようにして漠然としたアイデアを視覚化し、作品を生み出していったのか、その思考のプロセスを明らかにした。

エッシャーは日本でも人気がある。昨年、「生誕120年イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展」が開催され、上野の森美術館だけでも20万人の動員があったという。
本作では、まずは初期に描いた風景作品を実物と照らし合わせて紹介。版画でここまで表現できるとは。トリックアートしか知らなかったので、ちょっと驚いた。
同じモチーフをぎっしり組み合わせる作風のきっかけは旅先で見たムーア人のタイル壁とのこと。有名になった故の弊害を訴える。
エンドロールに3Dで見せるだまし絵の可視化が面白い。(堀)


エッシャーというとトリックアートというおぼろげな知識しかなかったのですが、資料に「1935年ごろスペイン、グラナダのアルハンブラ宮殿のタイルに魅了される」とあり、オランダ人のエッシャーがどういう経緯でイスラームの無限に広がる幾何学模様に出会ったのか興味津々。
スペインに行った動機がなんとも面白い。イタリアで結婚し息子をもうけたのですが、思春期を迎えた息子がムッソリーニに傾倒しそうになり、スペインに逃れようと決意。それも観光船の会社に掛けあって、乗船中、絵を描くことで、一家の船賃を無料にしてもらったのです。スペインに渡ったエッシャーが出会ったのが、アルハンブラ宮殿のタイルという次第。
試写を拝見した直後に、東京ジャーミィ(モスク)での「ジャーミイの模様の幾何学 ~美しいものには理由がある~」と題した講演会で、エッシャーの絵が引き合いに出されました。講師は数学の専門家。幾何学の世界でエッシャーが有名なのを知りました。
この講演会については、エッシャーの絵の写真入りでスタッフ日記に書いていますので、下記をご覧ください。 (咲)

イスラームの幾何学模様とエッシャー
 

追記: 「ジャーミイの模様の幾何学 ~美しいものには理由がある~」の講師である谷克彦様から、映画をご覧になった感想をいただきました。一部抜粋してお届けします。(咲)

uplinkでエッシャーを見ました。数学者エッシャーは良く知られていますが、どんな生活をした人物かはあまり気にしたことがありませんでした。人物像のわかる良い映画でした。
私はエッシャーのファンで多くの方がこの映画を見ると良いと思います。
最後の方でエッシャーが国際結晶学会の講演に呼ばれていくところがありましたが、私の専門も結晶学で、結晶学会では昔からエッシャーのperiodic patternを教材に使い馴染んでいます。
アルハンブラのモザイクには平面群の17種のすべてがあるという説と1種類かけているという説があります。
さらにペンローズもアルハンブラのタイルからペンローズ・タイルのヒントを得たとも聞きます。
映画では,エッシャーの息子たちへの取材が面白かったです.
作品がまとまるときのエピソード(1955年の表皮から1956年の婚姻のきづなへ)などよくわかりました.
エンドロールに流れるスナップの一つに大道絵師が写りましたが、たまたま昨夏,ニューカッスルの通りで見かけた道にエッシャー作品を描いていた大道絵師の光景のようです。良い映画をお教えくださり有難うございました。



2018年/オランダ/カラー/80分
配給:パンドラ
(C) All M.C. Escher works (C) the M.C. Escher Company B.V.- Baarn – the Netherlands
公式サイト:http://pan-dora.co.jp/escher/
★2019年12月14日よりアップリンク渋谷・アップリンク吉祥寺にてロードショー

posted by ほりきみき at 00:48| Comment(0) | オランダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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