2019年08月22日
ガーンジー島の読書会の秘密(原題:The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society)
監督:マイク・ニューウェル
原作:メアリー・アン・シェイファー、アニー・バロウズ
脚本:ドン・ルース、ケヴィン・フッド、トーマス・ベズーチャ
出演:リリー・ジェームズ、ミキール・ハースマン、グレン・パウエル、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、キャサリン・パーキンソン、マシュー・グード、トム・コートネイ、ペネロープ・ウィルトン
1946年、終戦の歓びに沸くロンドンで暮らす作家のジュリエット(リリー・ジェームズ)は、一冊の本をきっかけに、”ガーンジー島の読書会”のメンバーと手紙を交わすようになる。ナチに脅えていた大戦中は、読書会と創設者であるエリザベスという女性の存在が彼らを支えていた。本が人と人の心をつないだことに魅了されたジュリエットは、読書会について記事を書こうと島を訪ねるが、そこにエリザベスの姿はなかった。メンバーと交流するうちに、ジュリエットは彼らが重大な秘密を隠していることに気付く。やがて彼女は、エリザベスが不在の理由にたどり着く。
戦争は様々なものを人から奪ってしまう。主人公にはやりがいのある仕事、支えてくれる編集者、愛してくれる裕福な男性がいるのだが、戦争で両親と家を失ったのか、居場所が見つけられない。
お金も仕事も大事だが、精神的な安心や満足があってこそ。悲しい事実、面倒な現実に向き合い、乗り越えた先に幸せはあると作品は伝えてくれる。
ところで、ジュリエットに手紙を送るドーシー役を演じているミキール・ハースマンがカッコイイ。少々埃っぽいが、左斜め45度の笑顔に心が射抜かれた。米映画サイト・TC Candler が毎年選出する「世界で最もハンサムな顔100人」の2016年版で第1位だったのも納得!(堀)
浅薄にも、第2次世界大戦中にガーンジー島が英国でドイツの占領下にあった事実を知らなかったことを恥じた。ナチスは島の主産業である酪農を禁止し、家畜や農産物も没収してしまう。通信機器やラジオ、ガスの供給さえも止められるという厳しい管理下。もちろん集会の自由すらない。が、唯一、奨励されていたのが文化活動。「読書会」と「家畜(謎)」が、島民たちの機転により育まれ、本作に結実した点が愛おしい。
こうした背景が、戦中戦後のガーンジー島とロンドンに齎した傷痕を映画は鮮明に映しだす。ガーンジー島は深刻な飢餓状態にあったにもかかわらず、そこは英国庶民の逞しさ。苦しい日常でもユーモアを忘れない。名優トム・コートネイ、人気ドラマ「ダウントン・アビー」組のリリー・ジェームズ、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、マシュー・グード、ペネロープ・ウィルトンら、一人一人の人物造形が鮮やかだ。
一途な島の男に、新鮮なオランダ俳優を配したことも奏功している。有りがちなロマンス逸話に留まらない人間賛歌に昇華させたのは、今も熱狂的ファンを持つ『フォー・ウェディング』などのマイク・ニューウェル監督。
観る人誰もが楽しく幸せになる映画。一冊の本が紡ぐ庶民の物語は戦争にも打ち勝つのだ、という勇気と希望を与えてくれる秀作だ。(幸)
2018年/フランス・イギリス/英語/カラー/ビスタ/5.1ch/124分
配給:キノフィルムズ
© 2018 STUDIOCANAL SAS
公式サイト:http://dokushokai-movie.com/
★2019年8月30日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
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