2020年07月09日

バルーン 奇蹟の脱出飛行(原題:BALLOON)

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監督:ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ 
脚本:キット・ホプキンス、ティロ・レーシャイゼン、ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ
出演::フリードリヒ・ミュッケ、カロリーヌ・シュッヘ、デヴィッド・クロス、アリシア・フォン・リットベルク、トーマス・クレッチマン

1979年、東ドイツ・テューリンゲン州。電気技師ペーター(フリードリヒ・ミュッケ)とその家族は、手作りの熱気球で西ドイツをめざすが、国境までわずか数百メートルの地点に不時着してしまう。東ドイツでの抑圧された日常を逃れ、自由な未来を夢見ていたペーターは、準備に2年を費やした計画の失敗に落胆の色を隠せない。しかし妻のドリス(カロリーヌ・シュッヘ)とふたりの息子に背中を押されたペーターは、親友ギュンター(デヴィッド・クロス)の家族も巻き込み、新たな気球による脱出作戦への挑戦を決意する。ギュンターが兵役を控えているため、作戦のリミットはわずか6週間。ふたつの家族は一丸となって不眠不休の気球作りに没頭するが、国家の威信を懸けて捜査する秘密警察の包囲網が間近に迫っていた……。

作品冒頭でフェンスを乗り越えて西側に逃げようとする亡命者を映し出します。フェンスを超えられるのか、逃げ切れるか。いきなりハラハラドキドキのシーンで緊張感が煽られます。そして、主人公一家たちの登場。秘密を抱えた感じが演出からびしびし伝わってきます。
作品では2度、気球に乗って脱出を図るのですが、誰が乗って、誰が乗らないのか。それぞれの辛い選択に見ているこちらまで心が痛みます。
そして、実行。しかし、脱出は容易なことではありませんでした。この失敗がシュタージ(秘密警察)に手がかりを与えてしまうことになります。2回目の実行は危険度がさらにアップ。しかもシュトレルツィク家の長男が向かいの家の娘といい感じになり、そこから秘密が漏れてしまいそうで心配は尽きません。歴史的事実を描いた作品なので、結果はわかっているものの、125分のほとんどが緊張感の連続。だからこそ、ラストの安堵感は大きいものでした。
ちなみに気球による脱出を阻止しようとするシュタージのサイデル大佐を演じたトーマス・クレッチマンは東ドイツ出身で1983年に東ドイツから逃亡し、ユーゴスラビアに逃げたそう。逃亡した経験者が追う立場を演じているので、さらにリアル感が増しているのかもしれません。
そうそう、バルーンが意外にカラフルで、スクリーンいっぱいに大きく膨らんだときは思わず声を上げてしまいそうになるほどです。お楽しみに。(堀)


あんなに大きなバルーンを作ってしまったことに、まず驚きます。見つかったら命はないでしょう。そこまでして国を逃げ出したかったとは! 東ドイツ時代のベルリンの空港にトランジットで降り立ったことがあって、確かに荒んでいて、暗くて、国情を推し量って大変な国だなと思ったことを思い出します。
このバルーンで西に逃れた2家族8人の実話は、1982年にウォルト・ディズニー・カンパニーが『気球の8人』のタイトルで映画化し、日本でも公開されているのですが、知りませんでした。
東ドイツから壁を乗り越えて西に逃げた話は数多く聞いてきました。バルーンで亡命した話は聞いたことがなかったので、ベルリンの壁が崩れる前の東ドイツを何度か訪ねたことのある友人に聞いてみました。
「私が知らないだけかもしれませんが、おそらく当時はそういう脱出成功情報はあまり公に流されていなかったと思います。インターネットもない時代でしたし、隠されていたと思います」とのこと。さもありなんです。
報道されたとしても、バルーンに関して、よほどの知識と忍耐力がなければ、おいそれと真似して脱出するのは難しいのではと思います。
それにしても、実話なので脱出に成功するとわかっていても、ハラハラドキドキ、手に汗握りました。(咲)


東西冷戦下の東ドイツ。東ベルリンから西ベルリンへの脱出というと、ベルリンの壁を乗り越えたり、地下トンネルを掘ってという話は数多く聞いたり映画でも観てきたけど、熱気球で境界線を乗り越えたという話は聞いたこともありませんでした。でも実話を元にした話ということで実現したことがあるのでしょう。知られざる真実です。1989年にベルリンの壁が崩壊されたので、このあとまだ10年は壁がありました。その間にも何人もの人たちがこの境界を乗り越えたことでしょう。どのくらいの人たちが乗り越えられず犠牲になったことかと思います。
熱気球を作るにはかなりの知識(作り方とか気象知識など)と熟練した腕(ミシンで縫ったり)が必要だと思うけど、ペーターは電気技師、ギュンターは同僚という情報しかなかったけど、二人は東ドイツ国内で、仕事で熱気球などを作るような仕事もしていたのかな。素人ではとてもこんな8人も乗れるような熱気球は作れないでしょうね。
どうなるかとドキドキしながら観た作品であり、とても興味深い作品ではあったのですが、なぜ東西ドイツに分かれていたのかとか、東ドイツでの生活はどんなだったのかという視点では描かれてなかったのが残念です。その事情を知らない若い人たちのためにも、そういう部分も入れて描いてほしかったなと思います。
最近、歴史の史実を元にしたという映画が随分作られ、歴史に埋もれた真実が明らかになってきていますが、そこに至った歴史とかが省かれていることが多く、それが残念だなと思うことがあります。そのくらい、今の若い人は歴史を知らないと感じます。私自身も教科書からより、映画でいろいろな歴史や文化を知ったので、ぜひいろいろな視点で映画を観ていけたらと思います(暁)。

2018年/ドイツ/ドイツ語/125分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
配給:キノフィルムズ/木下グループ
© 2018 HERBX FILM GMBH, STUDIOCANAL FILM GMBH AND SEVENPICTURES FILM GMBH
公式サイト:http://balloon-movie.jp/
★2020年7月10日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー


posted by ほりきみき at 14:08| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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