監督:パット・ホールデン
脚本:ケヴィン・サンプソン(原作「AWAYDAYS」ケヴィン・サンプソン著)
出演:ニッキー・ベル、リアム・ボイル、スティーブン・グレアム、イアン・プレストン・デイビーズ、ホリデイ・グレインジャー、サシャ・パーキンソン、オリヴァー・リー、ショーン・ワード、マイケル・ライアン、リー・バトル、レベッカ・アトキンソン、ダニエレ・マローン、デヴィッド・バーロウ、アンソニー・ボロウズ 他
母親を1年前に亡くした19歳のカーティ(ニッキー・ベル)は下級公務員として働きながら、郊外の中産階級の家庭で悲しみにくれる父、そして血気盛んな妹モリー(ホリデイ・グレインジャー)と暮らしていた。収入のすべてはクラブ遊び、レコード、サッカー、ライブに費やしている。
ある日、《Echo & The Bunnymen》のライブでカーティはエルヴィス(リアム・ボイル)に出会う。エルヴィスはカーティが魅了されていた悪名高いギャング集団“パック”の一員だった。彼らはピーターストームにフレッドペリー、ロイスのジーンズ、そしてアディダスのスニーカーを履いてスタジアムで常に問題を起こしていた。エルヴィスはカーティに“パック”と付き合うことが危険であることを警告した。それよりもエルヴィスはカーティの様に芸術、音楽、詩、そして死について語り合える友人をずっと待っていた。そして、いつしかエルヴィスはカーティに夢中になっていく。しかし、カーティの“パック”への憧れはエスカレートして行き、エルヴィスの警告にもかかわらず、危険な世界の扉を徐々に開いていくのだった。
ある日の遠征(=Awayday)でカーティは成果を得るが“パック”のボス、ゴッドン(スティーブン・グレアム)に認められることはなかった。自分よりも、謎に包まれた存在のエルヴィスが尊敬を集めていることに苛立つカーティ、自分の想いが届かないことに苦悩するエルヴィス。次第に綻びは大きな傷になっていく。
“Football Casual”とは
毎週末にサッカースタジアムに通う労働者階級のファッションのこと。
1970年代の終わりに、何千というリヴァプールのサポーターたちがチームに帯同してヨーロッパをまわりアディダスのスニーカーを手に入れ、それを履いてロンドンのチームとの試合に行く、それを見たロンドン子たちが衝撃を受け真似ていったという大きな流れがあります。1980年代に入ってから雑誌がカテゴライズして広まりました。
リヴァプールでは自分たちを“スカリーズ=Scallys”と呼び、カジュアルズはロンドンでの呼称です。まずフットボールありきで、スタジアムに入り易くするためにスポーツブランドに身を隠す様になったと言われています。
本作はケヴィン・サンプソンが1998年に上梓した同名小説を原作にして、自ら脚本を書きました。Joy Division、The Cure、Magazine、Echo & The Bunnymen、Ultravoxの音楽をバックに、若者たちが自らの拠りどころを探し、絶対的な者へ憧憬を抱き、そして形成された“族”の中で避ける事の出来ない運命にもがき苦しむ様をリアルに映像化しています。
これまで日本では英国フットボール発祥の文化“Football Casual”について、 ほとんど紹介されることがありませんでしたが、その黎明期を初めて切り取った映画でもあります。
イギリスでは公開当時、『さらば青春の光』(1979年)、『トレインスポッティング』(1996年)、『コントロール』(2007年)、さらには『スタンド・バイ・ミー』(1986年)等の映画を例えに、さらにこれら全ての要素を詰め込んだ、若者の生き辛さを描いた小説『ライ麦畑でつかまえて』(J・D・サリンジャー著/1951)のジャックナイフ版であると紹介されました。イギリス公開から11年の月日を経て、ようやく日本で公開されます。
ポスト・パンクの曲が数多く使われていますが、音楽が分からなくてもまったく問題はありません。カーティとエルヴィスという2人の若者が互いに自分とは違う世界に住む相手に惹かれて近づき、すれ違っていく物語です。どちらか片方が自分の世界に留まっていれば仲良くやっていけたのか。いや、それでは惹かれない。なるべくしてなった結果なのかもしれません。思い通りにならないもどかしさをニッキー・ベルとリアム・ボイルが若者らしく体現していました。(堀)
2009年/イギリス/カラー/ビスタ/5.1ch/DCP/R18+/105分
配給:SPACE SHOWER FILM S
© Copyright RED UNION FILMS 2008
公式サイト:https://awaydays-film.com/
★2020年10月16日(金)より新宿シネマカリテほかにてロードショー!以降、全国順次公開!