2020年09月18日
リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ(原題:LIAM GALLAGHER: AS IT WAS)
監督:ギャビン・フィッツジェラルド、チャーリー・ライトニング
出演:リアム・ギャラガー、ボーンヘッド、ノエル・ギャラガー、ポール・ギャラガー、クリス・マーティンほか
1990年代から2000年代にかけて英国で絶大なる人気を誇ったロックバンド「オアシス」のボーカリスト、リアム・ギャラガーの栄光と挫折、そして復活への道程を追ったドキュメンタリー映画。数々のヒット曲を連発し、90年代を代表するアーティストとして世界に名を馳せるリアムは、破天荒かつスキャンダラスな行動でメディアからたびたびバッシングを受けていた。オアシスのギタリストである兄ノエルとは諍いが絶えず、ノエルの脱退でバンドはついに解散。さらに離婚訴訟が勃発し、ノエル抜きで新たに結成したバンドも軌道に乗らず自然消滅してしまう。失意の中で出会った新たなパートナーに励まされたリアムは自身の音楽人生を賭け、ソロデビューアルバムを発表する。
印象的なシーンがある。サンフランシスコの金門橋を早朝にジョギングするリアムがインタビューに応える場面だ。朝日に染まる水平線を指さして、「この歳になると最高だ」と嬉しそうに語るリアム。「若いころは調子こいてイケイケでいくもんだが、今は朝方の金門橋を見るために酒の誘いも断る」と打ち明ける。荒んだ暮らしで身を持ち崩したリアムならではの発言ではある。英国の音楽ファンなら先刻ご承知ということなのか、本作でリアムの暗黒時代については控えめに言及し、どん底から這い上がる過程が本人と関係者のインタビューで丹念に描かれる。復活の物語に厚みを持たせているのは、やはりリアム個人のキャラクターの魅力であろう。リアムと言えばジョン・レノンを彷彿とさせる独特の声が想起されるが、長年にわたり声質を維持するためのエピソードが興味深い。どん底のリアムを救ったパートナー兼マネージャーの女性は「若いころから少しも変わらないから愛される」とリアムを形容する。傲慢さと繊細さが同居し、率直な物言いは時に誤解もされるが、歳を重ねることで家族や自らの健康など大切にすべきものを明確に意識し、行動できるようになった。リアムのファンにティーンエージャーが多いというのも、頷けるところだ。今年で48歳になる稀代のロックンローラーの吹っ切れた清々しささえ感じる音楽ドキュメンタリーである。(堀)
2019年/イギリス/カラー/スコープサイズ/英語/89分
配給:ポニーキャニオン
© 2019 WARNER MUSIC UK LIMITED
公式サイト:https://asitwas.jp/
★2020年9月25日(金)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください