© 2023 French Quarter Film AB, Adomeit Film ApS, Easy Riders Films, RMV Film AB, Sveriges Television AB
監督・脚本:レヴァン・アキン
出演:ムジア・アラブリ、ルーカス・カンカヴァ、デニズ・ドゥマンリ
静かに交わる、それぞれの道
出会いと別れが交錯する街、イスタンブール。言葉も世代も文化も越えて、心が重なり合う。
ジョージアで暮らす元教師のリアは、亡き姉から託された、長年行方のわからない娘テクラを探してほしいという願いを叶える為、黒海沿いの町バトゥミに手掛かりを探しにやってきた。テクラはトランスジェンダーで、今はトルコのイスタンブールにいるらしいとわかる。テクラを知るという青年アチから、自分の母親がイスタンブールにいるし、トルコ語も少し出来るから一緒に行くと言われる。イスタンブールに着き、偶然、トランスジェンダーの権利のために闘う弁護士エヴリムと出会い、彼女の助けも借りるが、テクラを見つけ出すのは想像以上に困難だった。
なぜテクラはジョージアを離れたのか。東西の文化が溶け合い異国情緒あふれるイスタンブールを舞台に、テクラを探す旅を通して、リア、アチ、エヴリム、3人の心の距離が、少しずつ近づいていく——。
監督・脚本を手がけたのは、前作『ダンサー そして私たちは踊った』で、第92回アカデミー賞国際長編映画賞のスウェーデン代表に選出されるなど国際的に高い評価を受けた、レヴァン・アキン。言葉も世代も文化的背景も異なる人々が、ときにすれ違いながらも、互いを分かり合おうと寄り添う姿を静かにあたたかく描き出し、第74回ベルリン国際映画祭では、LGBTQ+をテーマにした作品に贈られるテディ賞の審査員特別賞を受賞。映画批評サイトRotten Tomatoesでは、批評家たちから97%という高い支持を得た。詩的な映像美と深い余韻が胸に残るロードムービー。
元教師のリアは、若い時にはそれなりに寄ってくる男もいたけれど独身を貫いたので、亡き姉の娘テクラは唯一の肉親。どうしても探し出したいという思いが胸に迫ります。
リアに通訳も兼ねて同行すると申し出た青年アチは、どうやら現状を変えたいという思いがあったようです。国境を越えトルコに入ったところで、アチがジョージアと変わらないとつぶやきます。同じ黒海沿い、国が変わったからといって、まだがらりと変わるわけではないのがわかります。黒海沿いに西に向かう道は、ジョージアにルーツを持つレヴァン・アキン監督にとって、馴染み深いところだそうです。
私にとっては、アジアとヨーロッパの両方に位置する大好きなイスタンブールの町をたっぷり味わえる映画でした。なにより、ボスポラス海峡を行き来する様々な船が郷愁をそそります。船に物売りがいたり、伝統楽器サズを弾く少年がいたり、歴史ある町の雄大な景色を楽しみながらの短い船旅。
冒頭、ジョージア語やトルコ語は、男女の区別のない、つまり性差のない言語だと掲げられます。なのに、どちらの国も、LGBTQの人たちにとっては暮らしにくいというのが皮肉。それでも、トルコではゼキ・ミュレンやビュレント・エルソイなど、男性でありながら女装の歌手が根強い人気を誇っていて、同性愛者がまったく拒否されているわけでもないのが興味深いです。特に、様々な文化が交差するイスタンブールは、いろいろな立場の人にとっての居場所でもあるのかもしれません。そんなことを思わせてくれた映画です。(咲)
2024年/スウェーデン・デンマーク・フランス・トルコ・ジョージア/ジョージア語・トルコ語・英語/106分/カラー/16:9/5.1ch
配給:ミモザフィルムズ
© 2023 French Quarter Film AB, Adomeit Film ApS, Easy Riders Films, RMV Film AB, Sveriges Television AB
公式サイト:https://mimosafilms.com/crossing/
★2026年1月9日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、アップリンク吉祥寺ほか全国公開


