2025年11月13日

最初の年 民意が生んだ、社会主義アジェンデ政権  原題:El primer año 英題:The first year

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(C)1972 Patricio Guzmán/2K restoration and digitization with the support of the CNC (French National Centre of Cinema)

監督・脚本:パトリシオ・グスマン
プロデューサー:マリア・テレサ・グスマン

蘇ったグスマン監督の長編第一作
1970年 チリで誕生した社会主義アジェンデ政権1年の記録


『最初の年(El primer año)』は、チリのドキュメンタリー映画監督パトリシオ・グスマンが1972年に発表した長編デビュー作である。1970年、ラテンアメリカ史上初めて選挙で選ばれた社会主義大統領サルバドール・アジェンデが誕生し、国家規模の社会変革が始まった。本作は、その政権発足から1年間にわたる激動のプロセスを、国民の視点から丹念に描いている。

当時31歳だったグスマン監督は、映画学校卒業後すぐにチリ国内を縦断し、鉱山、農村、港、都市、学校と、あらゆる場所で人々の声を記録した。政府の政策が生活にもたらす影響、民衆の高揚感、変革への参加意識などが、鮮烈な映像と言葉によって伝えられている。社会の根底からの変化が進行する中で、既存の権力構造との軋轢や不穏な兆しも同時に記録されており、そのバランス感覚と歴史的洞察において、本作は単なる「記録」を超えた存在である。

だが、1973年にチリで起きた、サルバドール・アジェンデ政権を崩壊させた軍事クーデター後に多くのプリントが失われ、長きにわたって封印されていた。半世紀に及ぶグスマン監督監修下の修復作業の末、ついに再び息が吹き込まれた。映像作家のジョナス・メカスが設立者の一人であるニューヨークのアンソロジー・フィルム・アーカイヴズで、2Kレストア版が2023年9月に世界初上映された。
クーデターに燃やされた幻の一作が、日本でも遂に初公開となる。


19970年、チリで選挙によって世界初の社会主義のアジェンデ政権が誕生し、その政権がわずか3年後に、米国CIAの支援を受けた軍事クーデターで倒されたこと、そしてピノチェト軍事独裁政権下で多くの市民が虐殺されたことを、これまでグスマン監督の下記の作品を通じて知ることができました。
『チリの闘い』(1975〜1979)三部作
★『チリの闘い:武器なき民の抵抗』  11月21日(金)よりアップリンク吉祥寺他で上映
『サルバドール・アジェンデ』(2004)、
『光のノスタルジア』(2010) 
『真珠のボタン』(2015)
『夢のアンデス』(2019)
2019年、グスマン監督が故国を離れて50年が過ぎ、よもやの突然の民主化運動。そのことを描いた『私の想う国』(2022)lを嬉しく拝見したものです。
そんな流れの中で、クーデターで消えたと思われていた『最初の年』が蘇りました。
社会主義政権誕生で、炭鉱、鉄鋼、硝石、銅と、外国資本に支配されていたチリの資源が次々に国有化されていく様子が生き生きと描かれています。土地を入植者の白人に奪われて支配されてきた南部のマプチェの人々が立ち上がったのも、アジェンデ政権誕生の影響でした。
社会主義政権発足から1年近く経って、キューバからカストロがチリを訪れ、熱狂的に歓迎されます。1960年、炭鉱ストをした時にキューバは砂糖を送ってくれたと涙する労働者もいました。
映画の最後に、食料や物資不足に富裕層の女性たち5000人が抗議デモする姿が映し出されます。その後の軍事クーデターを知っている目で観ると、まさにそれを予感したかのようなエンディング。FIN(終わり)に、?がついているのは、監督自身も感じていたからでしょか・・・(咲)
 

1972年/チリ/96分/フランス語・スペイン語/5.1ch/1:1.85
日本語字幕:比嘉世津子
配給・宣伝:アップリンク
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/saishonotoshi/
★2025年11月14日(金)よりアップリンク吉祥寺、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開




posted by sakiko at 23:44| Comment(0) | チリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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