監督:寺崎みずほ
出演:佐藤忠男、秦早穗子、イム・グォンテク、シャージ・N・カルン ほか
映画評論家・佐藤忠男の“たからもの”を探し求めるたびに出かけよう!
日本を代表する映画評論家、佐藤忠男。独学で映画評論の道を拓き、60年にわたる批評人生で日本映画史を体系化した功績、そして後年、ライフワークとしてアジア映画を発掘し、日本に先駆的に紹介した功績から、日本におけるアジア映画研究の第一人者として知られる。アジアとの映画交流や後進の育成にも尽力し、韓国、フランス、モンゴル、ベトナムなどから勲章を授与した唯一無二の存在である。庶民の目線から多岐に論じ、150冊を超す著作を有する映画評論の巨人をアジアへと突き動かすものは果たして何だったのか?
佐藤忠男が学長を務めた日本映画学校(現日本映画大学)で教え子であった寺崎みずほが、カメラを手に2019年より密着。少年期の戦争経験、映画を通して受けたカルチャーショック、映画への憧れ、映画人生の長い道のりをともに歩いた最愛の妻・久子との出会い。そして1万本を優に超す映画を鑑賞した彼が「『東京物語』と比肩するくらい世界で一番好きな映画」と言い残した1本のインド映画『魔法使いのおじいさん』への想い……
韓国映画界の巨匠イム・グォンテク監督や韓国ニューウェーブを代表するイ・ジャンホ監督をはじめ、親交のあったアジアの映画関係者の証言から人物像を紐解くとともに、佐藤の“たからもの”を探しに、韓国、そして南インドのケーララ州へと旅に出た。生涯、一途に映画を愛し続けた映画の伝道師が私たちに残したメッセージとは?
2022年に91歳でご逝去された佐藤忠男先生。私は教え子ではないけれど、やっぱり先生とお呼びするのがしっくりきます。 1988年~2002年の間、NHK教育テレビで放映された「アジア映画劇場」での解説は、毎回、ほんとに楽しみでした。 1995年のアジアフォーカス・福岡映画祭でイラン映画特集が組まれた折に、ディレクターを務めておられた佐藤忠男先生に初めてお目にかかることができました。その後、毎年のように通っていたアジアフォーカスで、佐藤忠男先生にはご挨拶するのが精一杯でしたが、奥さまの久子さんとは、時折お話しする機会がありました。「うちのは不愛想でごめんなさい」と言われたことも。 (今回、初めて奥さまとの馴れ初めを知ることができました!) 佐藤忠男先生ご夫妻がアジアフォーカスの上映作品を選択されていた頃の映画は、ほんとうに私好みでした。福岡市がお金を出していることもあって、子どもにも見てもらえるよう、どぎつい映画は選べないともお聞きしたことがありますが・・・
アジアフォーカスでは、招聘したアジア各国の監督や俳優たちが交流を図れるよう、佐藤先生ご夫妻が自費で交流の宴を開かれていたことも思い出します。
教え子であった寺崎みずほさんが、佐藤忠男先生に注目し、カメラを回し始めたのは、2019年。結局、看取られることになってしまいましたが、よくぞ撮ってくださったと感謝です。佐藤忠男先生が大好きだった『魔法使いのおじいさん』 の舞台である南インドを訪ねてくださって、その後の子どもたちのことも知ることができて、ほんとに感慨深い1作です。(咲)
2022年4月発行の本誌シネマジャーナル105号に、「アジア映画へ導いてくれた佐藤忠男さん」というタイトルで追悼文を書かせてもらいましたが、まさか、佐藤さんのドキュメンタリー映画が作られていたとは知りませんでした。
年に10本も映画を観ていなかった私は、1988年『芙蓉鎮』という映画を観て以来、中国映画にハマって、それから2年の間に200本近い中国映画を観ることに。そして、中国映画に関する情報をあちこち探すようになった。その頃はまだインターネットはなかったので、神保町に行き中国書を扱う東方書店や内山書店などに通っていた。その時に佐藤さんの著書を見て、何冊か買った。その頃、韓国映画にも興味を持ち始めていたし、神保町にはアジア映画というビデオ屋もあった。それでますますアジア映画にハマって行った。
佐藤さんはその頃、TVのアジア映画番組の解説もしていたし、中国映画祭や韓国映画特集などに行くと映画の解説、映画の周辺のことも話していた。そのうち、インドや東南アジア、中東圏の作品も日本で紹介されるようになり、佐藤さんのアジア映画の守備範囲は広がり、私はそれを吸収させてもらった。
いろいろな映画祭で、アジアの映画の上映会場に行くと姿を見かけたし、そのうち私がシネマジャーナルの編集に関わるようになって、試写に行くようになると、試写会場でもお会いするようになった。紹介もしてもらったこともあり、お会いする時には会釈はしていた。亡くなる2年くらい前から、佐藤さんと試写室で会うことがなくなり、体調がすぐれないのかなと思っていたけど、それでも80代後半まで試写に来ていた。
その後の佐藤さんの姿が、この映画で描かれていた。そして、思いもかけなかったインド映画『魔法使いのおじいさん』への想い。その想いを辿る旅も描かれ、新しい発見もある作品になった(暁)。
第38回東京国際映画祭<アジアの未来>部門・特別オープニング作品
10/28(火)21時よりワールドプレミア上映
https://2025.tiff-jp.net/ja/lineup/film/38003ASF00
2025年/日本/ 98分/カラー/DCP/ステレオ
製作・配給:グループ現代 宣伝:スリーピン
公式サイト:https://satotadao-journey.com/
★2025年11月1日(土) より新宿K's cinemaほか全国順次公開
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