2025年10月07日

種まく旅人~醪のささやき~

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(C)2025「種まく旅人」北川オフィス

監督:篠原哲雄
出演:菊川怜、金子隼也、清水くるみ、朝井大智、山口いづみ、たかお鷹、白石加代子、升毅、永島敏行

兵庫県淡路島の「千年一酒造」。伝統的な手法を続ける老舗酒蔵に、農林水産省官僚の神崎理恵(菊川怜)がやってきた。日本酒産業のいまを知るべく、「日本酒オタク」の異名を取る理恵に視察の白羽の矢が立ったのだ。 千年一酒造では、伝統的な手法を貫こうとする蔵元の4代目、松元恒雄(升毅)と、新しい方法を取り入れていこうとする息子の孝之(金子隼也)がぶつかり合っていた。蔵人の中には、女性蔵人の夏美(清水くるみ)を含め若手の姿もあるが、後継者を育てることに杜氏の草野(たかお鷹)は焦り、ほかの蔵人たちとの間にちょっとした誤解が生じていた。理恵は、作業着姿で蔵人たちの中に飛び込んでいく。設備の老朽化や、息子が後を継いでくれないかもしれないと悩む4代目の姿に、理恵は愛する日本酒を守るため解決策を模索していくが、そんななか、M&A の仲介業者が今の従業員もそのまま引き受けるという事業主がいると、4代目の前に現れる・・・

5代目の孝之は、東京の大学の醸造科で学んだのですが、積極的に後を継ぐ様子ではありません。次第に事情が明らかになるのですが、親としては、息子に継いでもらえないかもしれないと、仲介業者のうまい話に乗ってしまうのです。
美味しい日本酒造りに挑む人たちの物語。 おやっさんと呼ばれる杜氏の草野を演じた、たかお鷹さん、本物の杜氏のようでした。 それに引き換え、冒頭の農水省の会議室の場面は、学芸会のようでした。(すみません・・・) 
かつては女人禁止だったらしい日本酒造りの場に女性がいることも新鮮でした。
明石大橋や、お花畑など、淡路島の風情も楽しめました。 (咲)


『種まく旅人』シリーズは、「映画を通して第一次産業の素晴らしさや豊かさを伝えていきたい」という故塩屋俊監督の想いのもとに製作が始まったもの。塩屋監督の第 1 作『種まく旅人〜みのりの 茶〜』(2012年公開)は、大分県臼杵市を舞台に、お茶の有機栽培を営む人々をテーマとした物語。篠原哲雄監督による、兵庫県淡路島を舞台に玉ねぎ作りにいそしむ農業従事者、海苔と共に生きる漁業者をテーマにした『種まく旅人~くにうみの郷~』(15 年公 開)、岡山県赤磐市を舞台に、新種の桃づくりを夢見る家族をテーマとした佐々部清監督の『種まく旅人~夢のつぎ木~』(16 年公開)、石川県金沢市を舞台に、伝統野菜・加賀れんこん農家を営む家族の後継問題をテーマとした井上昌典監督の『種まく旅人~華蓮(ハス)のかがやき~』 (20 年公開)に次ぐ、5作目が本作。

このシリーズの1本目から拝見して、全国を行脚して地方の民の声を吸い上げる水戸黄門みたい、と思ったものです。お役人が会議の場を離れて現場へ。知識のある人と経験のある人が出会って話し合い、試行錯誤してより良い結果を出すというストーリーが主です。事件が頻発するエンタメ作品ではないので、地味ですが丁寧に人の機微をすくって、ドラマになっていました。来る人、迎える人どちらにもベテランと新人がいて、そのギャップを埋めていくのが外の人だったりします。
私を含め、ただ消費する側にいると生産している方々の工夫やご苦労などに思いが至りません。この映画の始まりを作った塩屋俊監督のキラキラした目と、口調が思い出されます。今も志が受け継がれているのをきっと喜ばれているでしょう。(白)


2025年/ 日本/カラー/107分
製作:北川オフィス
協力:兵庫県淡路市 千年一酒造
配給:アークエンタテインメント
公式サイト:https://tanemaku-tabibito-moromi.com/
★2025年10月10日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開


posted by sakiko at 02:02| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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