監督・脚本:パヤル・カパーリヤー
出演:カニ・クスルティ、ディヴィヤ・プラバ、チャヤ・カダム(花嫁はどこへ?」)
インドの大都市ムンバイ。大きな病院で看護師をしているプラバと、年下の同僚のアヌ。二人はルームメイトとして一緒に暮らしているが、職場と自宅を往復するだけの真面目なプラバと、人生を楽しみたい陽気なアヌは対照的だ。プラバは親が決めた相手と結婚したが、夫は結婚後すぐにドイツに出稼ぎに行ってしまい、もう1年以上電話もかかってこない。一方、アヌにはシアーズという恋人がいるが、彼はイスラーム教徒で、親が許してくれないことはわかっていた。母親からは見合い結婚させようと次々に写真が送られてくる。そんな中、プラバは親しくしている病院の食堂に勤める中年女性パルヴァティが、高層ビル建築のために立ち退きを迫られていることを知る。夫に先立たれ、部屋の居住権を証明する書類もなく、パルヴァティは故郷の海辺の村へ帰ることになる。プラバとアヌは、パルヴァティを村まで見送る旅に出る。神秘的な森や洞窟のある別世界のような村で、二人はそれぞれの人生を変えようと決意させる、ある出来事に遭遇する──。
本作で第77回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞したパヤル・カパーリヤー監督。
前作『何も知らない夜』は、2023年の山形国際ドキュメンタリー映画祭でロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)を受賞していますが、本作は初の劇映画。
冒頭、ムンバイの市場がある通りを車が進みながら、地方から出てきてムンバイで暮らす人たちの言葉が綴られます。長年暮らしていても、いつまでもよそ者である思い・・・。ドキュメンタリーのような出だしですが、病院の場面になり、プラバ、アヌ、パルヴァティという3人の地方から出てきた女性たちの物語が始まります。
親が決めた相手と結婚したあげく、1年以上も夫と会ってないプラバに、アヌは「知らない人と結婚できるもの?」と尋ねます。
病院で詩を書くドクターから、思いを寄せられても「私は既婚者」としか言えないプラバ。
一方のアヌは、好きな相手がイスラーム教徒では、親が大反対するのはわかっていても、自分の気持ちに正直でありたいと思っています。インドの女性たちも、これからは少しずつ変わっていくことを感じさせてくれます。
前作『何も知らない夜』では、映画を学ぶ女学生が、恋愛をカースト制に阻まれたことを綴った手紙を中心に、2016年に起こった政府への抗議運動、極右政党とヒンドゥー至上主義者による学生運動の弾圧事件が映し出されていました。ちょっと難解だった印象があります。 本作では、声高に何かを語るというのではなく、今インドに生きる女性たちの思いが、静かに語られていて、ラストは未来に少し希望の光を感じるものでした。カーストや宗教の違いに縛られることなく、インドの人たちが自由に生きていける社会であってほしいと願わずにはいられませんでした。 (咲)
第37回 東京国際映画祭 交流ラウンジ パヤル・カパーリヤー×是枝裕和 対談
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/505448877.html
第77回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞
第82回ゴールデン・グローブ賞 最優秀監督賞・最優秀非英語映画賞ノミネート
第96回ナショナル・ボード・オブ・レビュー 外国語映画トップ5
第78回英国アカデミー賞 非英語映画賞ノミネート
第18回アジア・フィルム・アワード 最優秀作品賞受賞
第59回全米映画批評家協会賞 監督賞 外国語映画賞受賞
第90回ニューヨーク映画批評家協会賞 外国語映画賞受賞
第50回ロサンゼルス映画批評家協会賞 外国語映画賞 受賞
ほかノミネート、受賞多数
2024年/フランス、インド、オランダ、ルクセンブルク/マラヤーラム語、ヒンディー語/118分/1.66:1/PG12
字幕翻訳:藤井美佳
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト:https://watahika.com/
★2025年7月25日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかロードショー


