2025年7月4日(金)より新宿武蔵野館ほかにて公開 劇場情報
監督:高橋伴明
脚本:梶原阿貴、高橋伴明 音楽:内田勘太郎 撮影監督:根岸憲一
出演:毎熊克哉 奥野瑛太 北香那 高橋惠子
偽名で生きてきた。けれど心までは偽らなかった
1970年代、高度経済成長の時代、その裏で日本の企業はアジアを踏み台にしてのし上がっていった。それに疑問を持つ人たちが運動を起こしたが、その中で過激な行動をする人たちが出現。東アジア反日武装戦線「狼」の活動に共鳴し活動していた大学生の桐島聡は東アジア反日武装戦線「さそり」に加わっていたが、「狼」が起こした1974年の三菱重工爆破事件で多数の犠牲者が出たことで葛藤に苛まれる。組織も壊滅状態になり、指名手配された。桐島聡は偽名を使い逃亡生活を続け、約半世紀におよぶ逃亡生活を続けた。
2024年1月26日、衝撃的なニュースが日本を駆け巡った。1970年代の連続企業爆破事件で指名手配されていた東アジア反日武装戦線「さそり」のメンバー、桐島聡容疑者(70)らしき人物が、末期の胃がんのため、神奈川県内の病院に入院していることが判明。男は「ウチダヒロシ」と名乗り、数十年前から神奈川県藤沢市内の土木関係の会社で住み込みで働いていた。入院時にも「ウチダヒロシ」という名前を使用していたが、健康保険証などの身分証はもたず、男は「最期は本名で迎えたい」と語り、報道の3日後の29日に亡くなった。約半世紀にわたる逃亡生活だった。
桐島聡は、1975年4月19日に東京銀座の「韓国産業経済研究所」ビルに爆弾を仕掛け、爆発させた事件に関与したとして、爆発物取締罰則違反の疑いで全国に指名手配されていた。最終的に被疑者死亡のため、不起訴処分となった。桐島は何を思い、どんな事件を起こし、その後、半世紀にわたって、どんな逃亡生活を送っていたのか。数奇な道のりを歩んだ桐島聡の軌跡を映画化。報道、史実を元にフィクションを織り込み描いた。
HPより
主演の桐島聡役は毎熊克哉。主演映画『ケンとカズ』(16)で注目されて以来、映画・ドラマで活躍し続け、今年は主演作『初級演技レッスン』も公開される。本作では20代から70歳で亡くなるまでを演じ切っている。また、さそり部隊のメンバー宇賀神寿一役には『SR サイタマノラッパー』(09)、『心平、』(24)主演の奥野瑛太が起用された。奥野も20代から70代までの幅広い年代を見事に演じた。
さらに、ミュージシャンのキーナ役にはドラマ『バイプレイヤーズ』(17〜)のジャスミン役で脚光を浴び、『春画先生』(23)で新境地を見せた北香那。劇中では河島英五の名曲「時代おくれ」(86)のカバーを披露し、新たな演技の幅を見せている。謎の女役は高橋監督のパートナーで昭和を代表する女優、高橋惠子が演じる。本作の脚本に触れた高橋惠子本人が、夫である伴明監督作品に初めて自ら出演を希望したという。また、『さすらいのボンボンキャンディ』(22/サトウトシキ監督)で好演した原田喧太と影山祐子のコンビがバーの店主役と工務店の事務員役をそれぞれ務めた。さらに甲本雅裕、山中聡、白川和子、下元史朗、趙珉和といった高橋監督に縁の深いキャスト陣が脇を固め、映画を一層深みのあるものにしている。
監督 高橋伴明(たかはし・ばんめい)
1949年5月10日生まれ。奈良県出身。1972年『婦女暴行脱走犯』で監督デビュー。以後、若松プロダクションに参加。60本以上のピンク映画を監督。『TATTOO〈刺青〉あり』(82/主演:宇崎竜童)でヨコハマ映画祭監督賞を受賞。以来、脚本・演出・プロデュースと幅広く活躍。『愛の新世界』(94/主演:鈴木砂羽)でおおさか映画祭監督賞受賞し、ロッテルダム映画祭で上映された。主な監督作品は『光の雨』(01/主演:萩原聖人)、『火火』(04/主演:田中裕子)、『丘を越えて』(08/主演:西田敏行)、『禅 ZEN』(08/主演:中村勘太郎)、『BOX 袴田事件 命とは』(10/主演:萩原聖人)、『赤い玉、』(15/主演:奥田瑛二)、『痛くない死に方』(20/主演:柄本佑)など。前作『夜明けまでバス停で』(22)は第96回キネマ旬報ベスト・テンで日本映画監督賞を始め多数の賞に輝く。
半世紀近く目につく所に貼られていた指名手配ポスターの中のメガネの男、桐島の死は、昭和という時代の幕がまた一つ下りたような、センチメンタルな思いにさせた。
さて映画『桐島です』は桐島の逃亡生活を史実とフィクション織り交ぜながら描かれている。毎熊克哉演じる桐島は、歯を磨き顔を洗いコーヒーを淹れる毎朝のルーティンを黙々とこなし真面目に仕事をして職場の人と笑い合い、気になる女性もいて、好きな歌を歌う普通の人だった。社会から虐げられている人に気持ちを寄せ、時に彼らのために激昂する優しい人だった。若い頃の青い正義感をずっと持ち続けているけれど激しい思想や信条があるように見えないから、逃げ通すことができた人物のように感じた。死と向き合ってやっと自分自身を取り戻したというのはあまりにも悲しい。
もしかすると別の役者が演じたらまた違う桐島だったかもしれない。ただ今はもう毎熊克哉以外は考えられない。本当にピッタリだった。(弘)
公式HP https://kirishimadesu.com/
配給:渋谷プロダクション
(C)北の丸プロダクション
2025年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/日本語/105分
2025年06月29日
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