2025年06月23日
フォーチュンクッキー 原題:FREMONT
監督:ババク・ジャラリ
脚本:カロリーナ・カヴァリ、ババク・ジャラリ
出演:アナイタ・ワリ・ザダ、グレッグ・ターキントン、ジェレミー・アレン・ホワイト(「一流シェフのファミリーレストラン」『アイアンクロー』『アフター・エブリシング』)
カリフォルニア州フリーモント。アフガニスタン出身のドニヤは、中国系アメリカ人の営むフォーチュンクッキー工場で働き、夜はアフガン料理屋でドラマを見ながら過ごす単調な日々をおくっている。カーブルの米軍基地で通訳として働いていた彼女は、タリバン復権で逃れてきて8か月。過酷な経験から、今も慢性的な不眠症に悩まされている。精神科の予約をしているが、なかなか順番が来ない。
ある日、クッキーに入れるメッセージを担当していたファンが急死。ドニヤが後任に指名される。タイプライターに向かって、メッセージを考えるドニヤ。新たな出会いを求めて、その中の一つに自分の電話番号を書いたものをこっそり紛れ込ませる。すると間もなく1人の男性から、会いたいとメッセージが届く。そこには指定の場所と、「鹿を呼び出してください」と書かれていた。ドニヤは車を借りて指定の場所へ向かう・・・
フォーチュンクッキーは、薄い生地のクッキーの中におみくじが入ったもの。広東人のオーナーから、「内容は良すぎても悪すぎてもいけない、短すぎても長すぎてもいけない、美徳は中庸」と教えられます。
フリーモントには、アジア系の移民が多く、アフガニスタン系アメリカ人も多く住む町だそうです。Donyaという名前、ドニヤと公式サイトに表記されていますが、ドンヤー(世界という意味)という表記が近いと思うのですが、様々な国の人が共に暮らす町にぴったりの名前。
同じアパートに暮らすアフガン男性が、精神科の番を譲ってくれて、ドニヤはようやく精神科医の診療を受けることができます。医師にフォーチュンクッキーをあげるのですが、医師はその簡潔なメッセージを真似て、自分も書いてみたら心が落ち着いたとドニヤに語ります。 この医師との会話も、なんとも可笑しいです。
ドニヤを演じたアナイタ・ワリ・ザダは、アフガニスタン生まれ。国営放送のテレビ局の司会者・ジャーナリストとして活躍していましたが、2021年8月のタリバン復権で、国外に脱出。ドニヤと同じような経験をしていて、ドニヤの思いを体現しています。初演技と思えない自然体。
ババク・ジャラリ監督は、1978年、イラン北東部のゴルガーン生まれ。主にロンドンで育ち、東欧研究の学位と政治学の修士号を取得した後、ロンドン・フィルム・スクールで映画制作を学んでいます。本作が、4作目の長編映画。
モノクロの映像が味わい深く、絶妙な会話の数々に人生の悲哀や喜びを感じさせられました。 それにしても、「鹿」の正体には大笑い! (咲)
2023年/アメリカ/英語、ダリー語、広東語/91分/モノクロ/1.37:1/5.1ch/G
字幕:大西公子
配給:ミモザフィルムズ
公式サイト:https://mimosafilms.com/fortunecookie/
★2025年6月27日(金)よりシネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、ホワイトシネクイントorシネクイント、アップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください