6月28日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
劇場情報
原題の『寧化飛灰(Rather be Ashes than Dust)』は「塵として朽ちるよりも、灰となっても燃え尽きる方がいい」という意味を持つ。これは、人生を無為に過ごすよりも、短くとも激しく生きるという覚悟を表している。HPより
監督・撮影・編集:アラン・ラウ
香港の自由のために集い、全力で闘った
2014年に香港で始まった雨傘運動に続き、2019年、民主化を求める抗議運動が香港中をゆるがし、道路封鎖や理工大籠城などにもつながった。犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案に反対し、デモ行動に参加した人々は、「逃亡犯条例改正案の完全撤回」、「普通選挙の導入」など五大要求を掲げ、6月16日には香港の人口の3割を占める約200万人(主催側発表)に膨れ上がった。香港の司法の独立性が失われ、一国二制度が崩壊すると危機感が高まり、立ち上がった市民と警察との衝突は日を追うごとに激しさを増していった。催涙弾が発射され煙が立ち込める路上、飛び交うゴム弾、火炎瓶の炎。抗議運動の最前線でアラン・ラウ監督はフリーのジャーナリストとしてカメラを回し撮影し続けた。香港の若い世代の恐れを知らない行動と香港警察当局の冷酷さと残虐性がエスカレートし、それに対峙する若者たちも過激になっていく様子が映される。
HPより
アラン監督は、日本で公開されたドキュメンタリー映画『時代革命』では撮影監督も務め、多くの香港民主化運動を伝えるドキュメンタリー映画にも関わった。混乱と暴力が渦巻く現場を撮影する中で、「ジャーナリストは客観的であり続けるべきなのか?どのような行動をするべきなのか?」というジレンマに直面した。本作『灰となっても』には、香港の人々が否応もなく分断され、罪悪感に苛まれる姿、怒号が渦巻く路上、あの時のありのままの香港が映し出されている。私たちは時間を遡り、壮絶な現場でカメラを回しているジャーナリストたちが何を見て、何を感じていたのかを体験することになるだろう。変わりゆく香港を世界に伝えることができるのか、その確信と疑念に引き裂かれながら、アラン監督は2021年まで撮影を続けた。1000時間以上の映像から制作された本作は、ニュース報道だけでは伝えるのが難しい、現場の生々しい衝撃を突き付けてくる。
香港で反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法」が施行されてから2025年6月30日で5年。これまでに法律を補完する新たな条例も施行され、香港社会では言論に対する締めつけがさらに強まっている。逮捕者は300人以上にのぼり、香港を離れる人々も増え、アランも故郷である香港を離れた。「香港で何が起こったのか、そして香港の今後はどうなるのか知ってもらいたい」とアランは語る。痛ましいほど若い香港の抗議活動家たちの物語が灰となっても、消えることのないように。本作は今では自由に発言することができない香港の人々の闘いの記録でもある。香港市民の烈火のような自由と民主に対する熱望が込められている。この事実は決して消えることはない。
監督メッセージ
本作は、デモを撮影するジャーナリストたちの内なる葛藤を映し出しています。これまで議論されなかった現地のジャーナリストにとって非常に重要な問題に着目したいと思いました。政府が明らかに真実を隠し、国家による市民への暴力が常軌を逸しているとき、ジャーナリストの役割とは何でしょうか?
そしてこの映画は、現在香港に住み、自由に表現できない人々のためのものであり、彼らの証言でもあります。全体主義的な政府が私たちの家や表現の自由を奪っても、私たちの誇りや歴史を奪うことはできません。そして何よりも、私たちの存在、戦う意味を消すことはできないのです。
今は、市民運動関係の映画は、香港で上映が難しくなってしまったけど、日本ではいくつものドキュメンタリーが公開されてきた。それらの作品をおさらいするような感じで、市民運動の流れを総合的に表した作品だった。決して香港の人たちの思いを忘れてはならない。香港の人たちの思いに触れ、私たちに何ができるだろうと思う。これらの映画を日本の人たちが公開し、観続けることによって、香港の人たちに少しでも希望が生まれてくれたらと思う(暁)。
私が初めて香港を訪れたのが、1979年のことで、返還まで18年と聞いて、まだまだ先の話と思ったものでした。
返還の時を見届けようと、1997年7月1日の前後2週間、香港に滞在しました。28年前の6月30日も7月1日も、土砂降りの雨で、英国の涙ともいわれましたが、思えば、香港人のこれからの運命を暗示する雨だったのだと感じます。
返還後も足しげく香港に通い、20数年の間に70回ほど訪れていますが、2003年以降は足が遠のきました。レスリー・チャンが逝ってしまったということもありますが、私が大好きだった香港が変わってしまった姿を見たくないという思いもあります。
旅人の私と違って、香港で暮らしている人たちは、自由のなくなった故郷をあとにするか、我慢して住み続けるかの苦渋の選択をしなければいけないことを思うと、ほんとに胸が痛みます。
本作のアラン・ラウ監督も、この映画で香港人の思いを発信した代償に愛する香港をあとにしました。勇気をもって世に出されたこの映画を、多くの日本人に自由にモノの言える幸せを噛みしめながら観てほしいと願います。(咲)
公式HPはこちら
2023年製作/118分/G/香港・イギリス・カナダ合作
配給:太秦
●シネマジャーナル紹介 関連記事
*作品紹介(公開年は日本公開の年)
『乱世備忘 僕らの雨傘運動』
(原題:乱世備忘)2018年公開
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/460532836.html
『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』2021年公開
(原題:Denise Ho: Becoming the Song)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/481745772.html
『時代革命』2022年公開
(原題:時代革命 /英語題:Revolution of Our Times)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/490705719.html
『Blue Island 憂鬱之島』2022年公開
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/489656264.html
『少年たちの時代革命』2022年公開
(原題:少年/英語題:May You Stay Forever Young)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/494357506.html
『理大囲城』2022年公開
(原題:理大圍城/英語題:Inside the Red Brick Wall)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/494714604.html
『香港、裏切られた約束』(原題:因為愛所以革命/英語題:Love in the Time of Revolution)2024年公開
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/504571956.html?seesaa_related=category
*監督インタビュー
▼『革命まで』2015年
郭達俊(クォック・タッチュン)監督&江瓊珠(コン・キンチュー)監督インタビュー
山形国際ドキュメンタリー映画祭2015にて
http://www.cinemajournal.net/special/2016/kakumeimade/index.html
▼『乱世備忘 僕らの雨傘運動』 2017年10月11日
陳梓桓(チャン・ジーウン)監督インタビュー
山形国際ドキュメンタリー映画祭2017にて
http://www.cinemajournal.net/special/2017/yellowing/index.html
▼陳梓桓(チャン・ジーウン)監督インタビュー(公開時) 2018年07月22日
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/460641864.html
▼『時代革命』 キウィ・チョウ監督インタビュー2022年7月22日
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/490683730.html
2025年06月23日
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