監督:ジャ・ジャンクー
脚本:ジャ・ジャンクー、ワン・ジアファン
撮影:ユー・リクウァイ、エリック・ゴーティエ
音楽:リン・チャン
出演:チャオ・タオ、リー・チュウビン
パン・ジアンリン、ラン・チョウ、チョウ・ヨウ、レン・クー、マオ・タオ
21世紀を迎えて希望に湧いた日々から、20年を追った物語。
2001年
中国北部の街、大同(ダートン)。チャオはキャンペーンガールやモデルをしている。恋人は彼女のマネージャーを務めるビン。
新たな世紀を迎え、中国のWTO加盟や北京オリンピック開催が決定するなど、漠然とした未来への期待で中国は盛り上がっているが、大同の炭鉱産業は傾き、失職者だらけだ。ある日、ビンは一旗揚げるために大同を去る。「落ち着いたら連絡する」SMSだけ残して消えるビン。
2006年
チャオはビンを探して、約1,500km、15時間をかけて、三峡ダム建設により水底に沈む運命にある、2000年の歴史を持つ古都、長江・奉節(フォンジエ)を訪れる。

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雄大な長江の景色の中、移住する人、建物を解体する人々でごった返す街。電話もメッセージも繋がらず、チャオは地方テレビの尋ね人コーナーでビンの行方を捜し、なんとかふたりは再会する。ビンはダム建設に関わり、別の女の影が見えていた。
「私たち……もう終わったの」
宙に浮いていた想いにチャオは別れを告げる。
2022年
コロナ禍、身体を壊したようで杖をつき、足を引きながら歩くビンはマカオに隣接する経済特区、珠海(チューハイ)を訪れ、奉節で不動産や建築業で知り合ったパンを訪ねるが、彼らはSNSインフルエンサーのマネージメント業をしていた。すっかり仕事も様変わりしていた。居場所を見つけられないビン。
潮の流れはふたりを大同に連れ戻す。チャオは大同のスーパーのレジ係をしていた。そこへ客として訪れたビンはチャオと偶然に再会する。
ジャ・ジャンクー監督の長年のミューズであり妻であるチャオ・タオ演じる一人の女性の人生の約20年間を、彼女の元を去った一人の男性との関係を軸に描いた作品。
新世紀を迎えた2001年。国際女性デーで女性たちが交代しながら楽しそうに歌う姿が印象的。
5年後、そして、16年後へと時代が移ろい、長江の三峡、南端の珠海、中国の東北部や南西部へとチャオ・タオたちを追って移動し、2022年、再び大同に。コロナによるロックダウン中の町は、まるで死んだよう。冒頭の朗らかな女性たちはどこに行ったのか・・・ ロボットと向き合うチャオ・タオ。近未来風に見えるけれど、果たしてどうなのか? 踊る人々の姿が、ちょっと空しい・・・ (咲)
2024年 /中国/中国語/1:1.85/111分/G
配給:ビターズ・エンド
公式サイト: https://www.bitters.co.jp/romantics/
★2025年5月9日(金)より、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国順次公開!
◆東京フィルメックス◆
2024年11月、第25回東京フィルメックスのオープニング作品として、開会式に引き続いて上映され、上映後には、ジャ・ジャンクー監督による質疑応答が行われました。
11月23日(土) 上映後Q&A
登壇:ジャ・ジャンクー監督
ジャ・ジャンクー: こんばんは。ジャ・ジャンクーです。(ここまで日本語で)
神谷:第1章、第2章、第3章という作りにしたのは?
ジャ・ジャンクー:タイトルは、最初、2001年に撮った時には、『デジタルカメラを持つ人』でした。新しい世紀を迎えたときに、人々が可能性を感じていて、皆が歌って踊って元気な時期でした。オリンピックの開催が決まったり、エネルギーを感じた時代です。色っぽい時代だなと思いました。当初は、2~3年撮ったら終わると思っていたら、終わらなくて、ほかの作品を撮って、思い出したら撮ってました。2015~16年頃には忘れてました。そこへコロナがやってきました。一つの時代が終わるような気がしました。フライトもなくなるし、国境も閉ざされる。北京にいて思ったのは、閉じこもっていた時にも、AIや生体に関する進化が早かった。コロナが終わったら、新しい時代が来ると思って、この映画を完成させなければいけないと思いました。20年が過ぎて、今の状態があるのだろうかと。2022年に脚本を書きました。コロナで撮影は出来なかったのですが。
神谷:音楽がふんだんに使われていました。
ジャ・ジャンクー:19曲使ってます。本来の中国の人はシャイなのに、あの時代は陽気に歌ってました。2000年を迎えた時代は狂乱状態でした。
全体的に考えて撮ったのではなく、その時、その時に歌っていたものを撮っていた中から選んでいます。その他は、監督として自分の意に合うもの、好きな曲を選びました。
セリフは、編集して繋いでみたら面白くないなと気づいて、男女の愛情を描くのに20年も必要かなと。はたと気づいたのは、前の作品は再現したもの。今回は、そこで起こったもの、偶然出会ったものを撮ってきたということでした。その時代の様子をヒロインと一緒に見ていく感じです。
編集しているときに、男女の話をいれたあとに抜いてみたら、ヒロインがあまりしゃべらない方が、敏感にその時代を感じることができると気が付きました。
結果として仕上がりがセリフを取ったことによって、世界が広がりました。彼女が沈黙したことで、いろいろなことに出会える。ひとことでは言えないものが感じられます。

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★会場から
― チャン・タオさんがロボットと向き合っている図を見て、2022年の中国は監督にとって近未来的に思われているのでしょうか?
ジャ・ジャンクー:今の中国は、AIやロボットなどが発展しているけれど、近未来というより「今」を撮っています。

時間が来てしまって、会場から拍手を贈ったのですが、最後に一言とジャ・ジャンクー。
話されている最中に大きな笑いが起こって、会場の半分くらいは中国語のわかる方だったようでした。通訳の方が、「サングラスをかけていますが、目を悪くしているためで、ウォン・カーウァイじゃないです」と訳され、やっと笑えました。(景山咲子)