2025年04月06日

バーラ先生の特別授業  原題:Vaathi

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©Fortune Four Cinemas ©Sithara Entertainments ©Srikara Studios

監督・脚本:ヴェンキー・アトゥルーリ
製作:スーリヤデーヴァラ・ナーガほか
撮影:J・ユヴァラージ
音楽:G・V・プラカーシュ・クマール
出演:ダヌシュ(『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』『グレイ・マン』『無職の大卒』)、サムユクタ、サムドラカニ(『RRR』)、タニケッラ・バラニ(『バーフバリ』シリーズ)、サーイ・クマール(『リシの旅路』)、ラージェーンドラン、ハリーシュ・ペーラディ(『囚人ディリ』)、スマント、(特別出演)バーラティラージャー

南インド、テルグ語とタミル語の両方を話す州境の村。
高校生のアビラームは、祖父が開いた村で最初で最後のビデオ店を父が学習塾代の為に売るというので、友人たちと片づけに行く。棚の奥に木箱に大事に収められたビデオを見つけ、もしかしたらポルノ?と観てみると、そこに映っていたのは、一人の青年が数学の授業をしている姿だった。一緒に収められていた貸出票の名前と住所を頼りに、40キロ離れた町にA.M.クマールを訪ねると、今は、県の行政長官だと聞かされる。県庁に訪ねていくと、A.M.クマールは部屋に掲げた写真を眺めながら、「ビデオの授業は私の恩師バーラ先生」と話し始める。
1993年、チョーラワラム村の公立校に赴任した数学のバーラ先生。美人のミーナクシ先生の存在に、一緒に赴任した二人の男性教師と共に心浮きたつが、生徒たちがいたのは初日だけ。皆、家計のため日銭を稼いでいるのがわかり、バーラ先生は学校に来られるように働きかける。生徒たちは戻ったものの、新任の男性教師二人が去り、バーラ先生は2クラス一緒に教えようとするが、カーストが違うから一緒に授業を受けられないという。必要であればカーストが違うことは問題にならないことを教えるが、さらに、大手私立教育機関の経営者ティルパティが妨害してくる。バーラ先生は受け持ちの生徒全員が共通試験で上位成績を上げることを目指す・・・

1990年代の経済自由化と1993年の教育制度の改革によって、インドに多くの私立教育機関や予備校が生まれ、高い授業料に応じた質の高い授業が提供されるようになったことが背景になっています。私学経営者ティルパティが、公立学校での授業を妨害し、さらに共通試験に向かう生徒たちも足止めさせてしまうという、これでもかという悪どさ。今は行政長官となったA.M.クマールが明かすバーラ先生の奮闘する姿に拍手喝采です。
バーラ先生の恩師も素晴らしくて、新任教師となったバーラ先生に「教師は仕事じゃない。使命」「自分の給料より、生徒の将来」とアドバイスしています。
さて、ビデオに映っていたバーラ先生の授業風景、どこで授業していたのかは、ぜひ劇場でご確認ください。(咲)


憎まれ役のティルパティが滔々と「教育は金になる」論をぶちあげます。庶民が食うや食わずで子供の幸せを願って工面したお金を吸い上げ、自分は高級車を乗り回しさらに儲けようとしています。そのわかりやすさったらないのですが、日本だとて似たようなものではありませんか。良い学校に入るため良い仕事につくため、子どものうちから塾通い、子どもらしく遊ぶ時間もないほど忙しい。授業料の安い国立大学に入れるのは、そうやって教育費をつぎ込んでこられた富裕層。奨学金という名前の借金を背負うのは、庶民です。
汚職にまみれた警察やパルパティの追従者に苦い思いを抱いて観ていました。救われるのは、バーラ先生の教えを素直に吸収して生徒たちが成長していく姿です。親のいうまま結婚するのではなく、学び続けて外国へ行くという女子、カーストに縛られずに生きる道を求める男子、そんな生徒たちが大人になって世界を変えていくはず。大人になってしまっても遅くはないですよ。目をつぶらないようにしましょう。(白)


2023年/インド/タミル語/134分
字幕:中島可愛・字幕監修:小尾淳
配給:SPACEBOX
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/balasensei/
★2025年4月11日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開.

posted by sakiko at 16:33| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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