2025年03月28日

うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生

3月29日(土)〜新宿K’s cinemaほか全国順次公開
上映情報
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(C)かわうそ商会

登場人物:織本順吉/中村矩子 
監督・撮影:中村結美 

日本映画に欠かせない名脇役の最晩年に娘のカメラが迫る
4年間にわたる執念のドキュメンタリー


脇役一筋70年の織本順吉。死の直前まで現役を貫き、2019年に92歳で亡くなったが、2000本以上ものTVドラマ・映画に出演。地味だが情感あふれる脇役を演じ続けた。
本作は、織本の娘で、 脚本家・放送作家、テレビ・ディレクターの中村結美が2015年夏からの4年間、織本順吉に公私にわたり密着し、ホームビデオで織本の「素」の姿を明らかにしようとした記録。織本は那須に住み、中村は東京。何度も那須に通っての撮影だった。情感あふれる役の一方、家族と共に生きられない一面があり、1970~80年代にも妻子は神戸、織本は東京という別居生活が25年に渡った。
最初は、その父へ復讐心からカメラを向けた娘。そして、カメラに映るのは父の老い。体が思うように動かなくなり、セリフ覚えが早かったのに覚えきらず、セリフ間違いで10回もNGを出す姿、糖尿病を患うも、食後、血糖値を測るのを忘れたことを指摘され激高する姿、「もう車の運転はやめて」と言われて激高する姿。感情を抑えることができなくなった晩年の父を、娘は赤裸々に撮り続けた。
長い役者人生で初めての降板。俳優人生初の「空白」。カメラは容赦なく、公私に渡り織本の“老い”を映し出す。織本は拒絶することなく、自分の老いていく姿をカメラにさらし続けた。織本の葛藤を映し続ける中村の姿も映し出され、カメラを挟むことでようやく向き合えた父と娘の記録でもある。
「老いること、家族の繋がり、生を全うするとは?」、誰もが抱える命題に、父の死を通して向き合った。晩年の織本順吉の姿を映し出すと同時に、家族の歴史も描き出した。

織本順吉さんの姿をTVや映画を通して見てきたが、生涯で2000本もの作品に出演というのに驚いた。それに90歳くらいまで、那須から新幹線に乗って、東京などの撮影所に向かう姿が何度も映され、その年まで一人で撮影に通っていたことにびっくり。セリフ覚えが早くて、役者として重宝され、たくさんの作品に関わることができたというが、「前の作品のセリフをすぐに忘れないと、次のセリフが覚えられない」という織本さんの言葉に納得。それにしてもたくさんの作品に出ていましたね。最後の作品は「やすらぎの郷」となっていたので、何の役だったけと思い返してみた。この「やすらぎの郷」を創設した人の役だった。TV界を引退した業界人が入る「老人ホーム」という設定だった。このドラマも良かったので、また、見てみたいな(暁)。

公式HPはこちら
制作:有限会社かわうそ商会 
2024年/日本/カラー+モノクロ/82分 
配給:パンドラ

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(C)かわうそ商会

公式HPより
織本順吉(おりもと・じゅんきち)
1927(昭和2)年2月9日、神奈川県生まれ、2019年3月18日没。本名・中村正昭。
高校卒業後、大手電機メーカーを経て45年に新協劇団に入団。「破戒」の丑松役で初舞台。その後、岡田英次、西村晃、木村功らと劇団青俳を結成。80年の同劇団解散後はフリーに。映画・テレビドラマほか幅広く活動し、総出演作は2000本を超える。主な出演作品は「真昼の暗黒」(監督・今井正)、「人間の條件」(監督・小林正樹)、「仁義なき戦い 【組長の首】【完結篇】」(監督・深作欣二)、「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」(監督・山田洋次)、大河ドラマ「新・平家物語」「秀吉」、連続テレビ小説「澪つくし」「わかば」、「長七郎江戸日記」、金曜ドラマ「週末婚」(脚本・内舘牧子)「夜のせんせい」「Nのために」、「3年B組金八先生・第5シリーズ」(脚本・小山内美江子)、など。遺作となったのは、2017年の「やすらぎの郷」(脚本・倉本聰)。
posted by akemi at 12:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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