2025年03月15日
その花は夜に咲く 原題:Skin of Youth
監督・脚本:アッシュ・メイフェア(『第三夫人と髪飾り』)
出演:チャン・クアン、ヴォー・ディエン・ザー・フイ、ファン・ティ・キム・ガン(『第三夫人と髪飾り』)、井上肇(『侍タイムスリッパー』)
1998年、サイゴン。
古びた部屋で下着姿で口紅を手に戯れる二人。望まぬ性に生まれたサンはナイトクラブで歌い、ナムはボクサーとして懸命に暮らしていた。サンは性適合手術をしたいと下調べに余念がない。ある日、クラブのVIP席にいた街のフィクサー、ミスター・ヴーンが、妖しく歌うサンに目をとめ、声をかけてくる。手術費用を出してくれそうだとナムに報告するサン。お金のため、ヴーンと逢瀬を重ねるサン。
ナムが激闘の末、ボクシングのチャンピオンになった日、ナムはサンにプロぽーすする。市場で働くナムの祖母や友達が立ち会い、サンとナムはつつましい結婚式を挙げる。
それでも手術代を稼ぐため、夜の街に働きにいこうとするサン。次第に二人の気持ちがすれ違い始める。サンをナイトクラブに送り届けたあと、ナムは船の中で体を売る若い女性ミミのもとに通うようになっていた。
やがて、ナムもお金を稼ごうと闇の地下格闘技に手を染めてゆく。
そんな折、ミミがナムの子を身籠ったと訪ねてくる。ひ孫の顔が見れると喜ぶ祖母。
一方、ミミの暮らす船を訪ねたサンは、環境の悪さに驚き、家に連れ帰る。ミミを交えた3人の不思議な生活が始まる。食事を作り、ミミの世話をし、生まれてくるこの名前まで考えるサン・・
なんとも切ない物語。サンは自分が子を産めないからとはいえ、ナムが浮気して出来た子のために甲斐甲斐しくミミの世話をする姿に涙が出ます。
サンを演じたのは、自身もトランスジェンダーであるチャン・クアン。映画初出演とは思えない自然な演技。まさにサンそのものです。ナム役は、数々の映画やドラマに出演し、ベトナム映画界で今最も期待される俳優の一人であるヴォー・ディエン・ザー・フイ。
そして、ミスター・ヴーンを演じたのは、『侍タイムスリッパー』に出演している名バイプレイヤー井上肇。全編ベトナム語で凄みのあるフィクサーを体現しています。
本作は、アッシュ・メイフェア監督自身の中学時代の経験や記憶、トランスジェンダーの友人をモデルに作り上げた鮮烈なラブストーリー。
「ベトナムでは今もなお、トランスジェンダーコミュニティは政府や社会から厳しい批判を受けています」と監督。タブーに挑んだ物語、心に沁みました。(咲)
2025年/ベトナム・シンガポール・日本/ベトナム語/121分/シネスコ/カラー/5.1ch
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:https://www.bitters.co.jp/yorunisaku/
★2025年3月21日(金)シネマート新宿ほか全国順次公開
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