2025年03月15日

ノーバディーズ・ヒーロー  原題:Viens je t'emmene

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© 2021 CG CINÉMA / ARTE FRANCE CINÉMA / AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINÉMA / UMÉDIA

監督・脚本:アラン・ギロディ 
出演:ジャン=シャルル・クリシェ、ノエミ・ルヴォウスキー、イリエス・カドリ、ミシェル・マジエロ、ドリア・ティリエ 他

フランスの中央にある街クレルモン=フェラン。季節はクリスマス。
ランニング中の独身中年男メデリックは、路上の娼婦に目を奪われ、声をかける。
「君と寝たい。タダでね」と誘う彼。
「なぜタダなの?」と呆れる彼女。
「売春には反対だから」
「約束があるの。夫もいるし」。
彼女の夫が車で迎えに来る。「電話して」とメモを渡すメデリック。

娼婦のイザドラからすぐに電話がかかってくる。
「8時15分に、フランスホテルのフロントで“イザドラを”と」。

夜、ホテルのフロントには老人のルナールと、どう見ても未成年に見える若い黒人女性のシャルレーヌ。
205号室と言われ、部屋にいく。
服を脱ぎ、事を始めるが、テレビから街でテロが起きたとのニュース。
「帰らなきゃ」と言うイザドラ。
「大変だぞ!」といきなり彼女の夫ジェラールが部屋に入ってくる。

メデリックが帰宅すると、アラブ系の青年にお金を無心される。2ユーロを渡すと、「これじゃケバブも買えない」と言われる。
翌日、テロ現場に行ってみるメデリック。犯人の一人は20歳のモロッコ系だという。
帰宅すると、昨日のアラブ系の青年セリムがまたいて、家に入れてほしいという。テロ犯のように思えて、警察に通報し、彼は連行される。
翌日、セリムが釈放されたけれど行き場がないというので、家に入れる・・・

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ以降、イスラーム=テロという図式が出来上がってしまいましたが、さらに、2015年のパリ同時多発テロで、フランスでもテロが身近になり、アラブ系の人たちがテロ犯という疑いの目で見られたり、そうでなくても怖れられ、排除される傾向があることを本作は見せてくれました。
メデリックは、セリムがテロ犯ではないかと疑いつつも、家に入れてあげるという寛容な気持ちを持っていて救われます。売春反対だから、娼婦にお金を払えないという論理には笑ってしまいますが・・・
それにしても、50代半ばの娼婦イザドラが、夫公認で、しかも郊外のなかなか瀟洒な家に住んでいることに驚きます。なぜイザドラは娼婦を続けるのか・・・ 
童貞のアラブ系青年を、自爆テロの前に天国に行けるようにと手ほどきしようとするのも、思えば健気です。
アラブ系青年セリムをメデリックが家に入れたことについて、アパートの住人たちが語る言葉からは、フランスらしさも教えられました。「何もしない」「様子をみる」がフランス的だそうです。
ブラックユーモアも交えながら、今の世相を語った物語。これもアラン・ギロディ風? (咲)

2022年ベルリン国際映画祭パノラマ部門 オープニング作品

2022年/フランス/100分/カラー/1.85/5.1
日本語字幕:本多茜
配給 サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/alain-guiraudie
★2025年3月22日(土) シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
posted by sakiko at 16:51| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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