2025年03月13日
教皇選挙(原題:Conclave)
監督:エドワード・ベルガー
脚本:ピーター・ストローハン
原作:ロバート・ハリス
撮影:ステファーヌ・フォンテーヌ
音楽:フォルカー・バーテルマン
出演:レイフ・ファインズ(ローレンス枢機卿)、スタンリー・トゥッチ(ベリーニ枢機卿)、ジョン・リスゴー(トランブレ枢機卿)、カルロク・ディエス(ベニデス枢機卿)、イザベラ・ロッセリーニ(シスター・アグネス)
キリスト教最大の教派、カトリック教会の最高指導者であり、バチカン市国の元首であるローマ教皇が、死去した。すぐに世界中に知らされ、残された枢機卿たちは、新教皇を決める教皇選挙”コンクラーベ’を行わなければならない。ローレンス枢機卿が任に当たることになった。世界各国から100人を超える強力な候補者たちが集まり、外部と遮断された。投票はシスティーナ礼拝堂で教皇が決定するまで極秘で繰り返される。
聖書のお話は子どものころから読んでいました。クリスマスや讃美歌、観光地の教会は好きでも、中身のことはよく知りません。カトリック教会の世界中の信者は13億人もいるというカトリック。日本では43万人余りだそうです。大きな大きな組織で、そのトップがローマ教皇、その空席を埋める選挙がこういうものだったとは初めて知りました。
なりたい人があまたいる中で、ローレンスは身を引いて静かに暮らしたいと思っていました。が、対抗者を減らそうと陰で暗躍する人、ゴシップを流す人、浮動票を集めようとする人などが出て来て、静観しているわけにいきません。二転三転する選挙結果に観客もどんな結果が出るのか、目が離せなくなります。高位の聖職者の集まりなのに、このどろどろ加減は何??
ベテラン俳優が演じるお爺ちゃんばかりの枢機卿の中に、紛争地帯からやってきたやや若手の枢機卿と、「いないものと思われている」と蜂の針のような一言を放ったシスターの存在が光りました。俯瞰で撮影した黒い傘、赤い衣装、ラスト近くの白い傘、わずかに登場する青い空、色彩も目に残ります。(白)
教皇選挙(コンクラーベ)というタイトルから、まず思い出したのが、ナンニ・モレッティ監督の『ローマ法王の休日』(2011年)でした。法王(教皇)が亡くなり、バチカンに集まった各国の枢機卿が密室の中で選挙を行い、はからずも新法王に選ばれてしまったダークホースのメルヴィルが、緊張のあまりローマの街に逃げ出してしまうというお話。その映画でも、選挙に使用した紙を燃やして白い煙を出し、新しい教皇が決まったことを知らせる様子が描かれていました。
世界各地から集まった100人余りの枢機卿の投票で、72票を得る者が出るまで繰り返される選挙。その枢機卿の中で異彩を放ったのが、アフガニスタンのカーブル教区の枢機卿でメキシコ人のベニテスでした。「アフガニスタンにカトリック教徒がいるのか?」との声も飛ぶのですが、亡くなった教皇が秘密裏に赴任させたという経緯もありました。
折しも、ローマで自爆テロが頻発し、「宗教戦争だ!」と声を荒げる枢機卿たちがいる中、ベニテスが「戦争とは何かをご存じでしょうか? 私は戦争で多くの死を見てきました」と静かに語ります。コンゴやアフガニスタンなど紛争地域を歴任してきたのです。
ローマ教皇の影響力は、キリスト教世界だけでなく、全世界におよぶ大きなものです。
ジャンフランコ・ロージ監督の『旅するローマ教皇』(2022年)では、第266代ローマ教皇フランシスコが世界各地を旅して、他宗教との対話を積極的にはかる姿が描かれていました。
重要な役目を果たすローマ教皇を、100人余りの投票で決めるのですから、各国の枢機卿の人格が問われることにもなるでしょう。本作では、内輪もめも見せながら、ローマ教皇のあるべき姿も見せてくれました。(咲)
4月21日、フランシスコ教皇が天に召されました。
2013年3月、教皇選挙の結果、第266代ローマ教皇に就任したホルヘ・マリオ・ベルゴリオは、イタリア移民2世のアルゼンチン人。266代にして、史上初のアメリカ大陸出身のローマ教皇でした。
フランシスコが教皇になられるまでを描いた映画『ローマ法王になる日まで』
ダニエーレ・ルケッティ監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2017/roma/index.html
1970年~80年代のアルゼンチンの独裁政権の過酷な時代を経て、ローマ教皇になられたフランシスコ教皇。弱者への温かい眼差しは、そのご経験もあったからではと感じさせてくれる映画でした。(咲)
2025年/アメリカ、イギリス/カラー/120分
配給:キノフィルムズ
(C)2024 Conclave Distribution, LLC.
https://cclv-movie.jp/
https://x.com/CCLV_movie
★2025年3月20日(木)全国ロードショー
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