監督:小田香(『鉱 ARAGANE』『セノーテ』)
出演:吉開菜央、松永光雄、松尾英雅
鬼才タル・ベーラの愛弟子、小田香が描き出す、
ドキュメンタリーを遥かに超えた異形の空間
地下の暗闇から、蠢く怪物のように「シャドウ(影)」が姿を現す。シャドウ(影)はある女の姿を借りて、時代も場所も超えて旅を始める。地下鉄が走る音を聞き、戦争で多くの人々が命を失ったほら穴の中で死者達の声に耳を澄ませる。そんな道行きの中、シャドウ(影)は、かつてそこで起きたことをトレースしていくようになり、湖の底に沈んだ街に向かう・・・
『鉱 ARAGANE』では、ボスニア・ヘルツェゴビナの炭鉱を、『セノーテ』では、メキシコ、ユカタン半島北部の洞窟内の泉と、異形の地下世界をとぎすまされたような映像で静かに映し出した小田香監督。
本作、『Underground アンダーグラウンド』では、日本の地下世界を題材にしているのですが、これまでと違って、地上世界にもカメラを向け、雄弁に語る人物も登場させています。それは、土地に宿る歴史と記憶を辿る試み。
中でも、沖縄の語り部、松永光雄さんの語る言葉が胸に迫ります。沖縄戦で亡くなられた方たちの遺骨収集もされている松永さん。二つのガマに潜んでいた人たちの運命が大きく違ったこと。集団自決で多くの人が亡くなったガマでは、泣く子を黙らせろと日本兵が銃を向けました。一方、ハワイ移民から帰り英語ができた人がいたガマでは、米軍と話すことができたお陰で全員が助かりました。これは、これまでにも聞いたことのある話ですが、あらためて記憶に留めておきたいことだと思いました。(咲)
2024年/日本/83分/カラー/5.1ch
製作:トリクスタ
共同製作:シネ・ヌーヴォ、ユーロスペース、ナゴヤキネマ・ノイ、札幌文化芸術交流センターSCARTS、豊中市立文化芸術センター
配給:ユーロスペース+スリーピン
公式サイト:https://underground-film.com/
★2025年3月1日(土)ユーロスペースほか全国順次公開
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